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優しい魔王の疲れる日々  作者: n
優しい魔王の疲れる日々6
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第46話:魔王と脱走

結さんと明乃さんの話を聞いていた鋳鶴君

自分が非力なのを悔やみながら左胸に手を当てた



そういえば今、ふと思い出した

去年の夏、もの凄く外は熱帯夜でエアコン無しでは寝れないぐらい暑かった夜

僕は妹二人と話をした

まぁまぁ長い話を


「なぁなぁ兄ちゃん

正義ってなんなんだ?」


自分のベットから起きあがって僕の妹のゆりがそう言った

ジャージはやめろと言っているのだがまだジャージを着ている

年中家ではこの姿だ


「いきなりどうしたの?

正義って言われても分からないんだけど・・・」


「あれじゃないの?

悪い人をドカーンってやっちゃう人」


僕の二人の妹の下の方の妹の神奈が言う

彼女はいつも清潔感溢れる服装にしっかりと整った髪型をしている

いわゆる出来る子である


「その表現は間違っていないと思うけれど

でも正義なんてめちゃくちゃな物だよ」


「兄ちゃん

何言ってるかさっぱり分かんない」


ゆりは頭の上に疑問符を浮かべながら考えた


「例えば・・・・・・

警察官は正義の味方だろう?」


「うん」


「そうだね」


「泥棒は一般から見たら悪人かもしれないけど

その泥棒が家族の為とか理由を付けて泥棒していたら?」


「でも悪い事には変わりないよ?」


「そうそう!

泥棒はいけないよ兄ちゃん!」


「僕が泥棒をするんじゃない

でもさ家族の為に泥棒をしているんだ

確かに普通に見ればただの泥棒に過ぎない

けれどその事実を知ったらどう思う?

彼には彼なりの正義的な何かがあったとは思わない?」


「けど悪い事は悪い事だろっ・・・」


「うん

私もそう思う」


二人は俯くと話すのをやめる


「でも悪い事と分かってもやっちゃうんだよ

それに正義の味方だって正義の味方とは限らない

正義の味方はなんで怪獣を殺したりするんだろうか」


「それは仕方ないよ

だって正義の味方は弱い人の味方だよ」


「そうだよお兄ちゃん

正義の人は正義の人なりの何かがあるんだよ?」


「だったらこの世に正義なんて無いんじゃないのか?

怪獣を殺すヒーロー

泥棒を捕まえる警察

一般人を殺す殺人犯

どれも見方や見物によっては悪にもなるし正義にもなる

じゃあどれが悪かどれが正義かは人が決めている

神様が決めた訳じゃない

大臣が決めるんじゃない

民衆、多い数が集まる方にみんな行くんだ

これでもわからないなら逆に説明してみよう

ヒーロを殺す怪獣

警察を捕まえる泥棒

殺人犯を殺す一般人

こうすればどう正義か悪かは分からなくなる

まぁ正義だ正義じゃないは世間が決める事だし

それは変えようのない事だ

でも僕は思う

世の中で言われる悪人に理由も無く悪事をはたらく人はいない

逆に正義の味方とかはあまり好きじゃないのかもしれない

だってその理由有る悪人を捕まえて晒して酷い場合には殺すんだから」


と僕が熱く語っていると

二人は寝息をたてて寝ていた

僕も二人のあまりにも聞く耳の無さに布団に入って気づいたら次の朝になっていた


という事を考えている鋳鶴君

いつにもなく真剣な顔をしています

今は囚われの身ですからね一応は


「はぁ・・・なんてこと思い出してるんだろう

そんな暇があったら脱出する方法でも考えないと・・・」


そう思いつくと鋳鶴君は部屋の中を調べた

抜け道的なものとか脱出に適した物を探しますが何処にもありません


「結姉を使うしかないか・・・

これだけは痛いし出来ればやりたくないんだけど・・・」


そういうと鋳鶴君は自分の服を取り出しそれを羽織りました

それにしても良い筋肉してます

まぁ日々、色んな意味で鍛えられていますしねぇ~・・・


「正義か~・・・

変な事思い出したな~・・・

まだ口の中の傷が治ってないのに~!」


鏡の前で自分の内頬を右手でこじ開けて見る鋳鶴君

そこにはまだ痛々しく残っているホッチキスの痕がありました

はいこれは魔法科会長、虹野瀬さんとの愛の証です


「まぁいいや!

これはどのみち治るとして・・・

さっさとここから出なきゃね!」


鋳鶴君はそう言うと

部屋にあった大きな椅子を持ち上げ唯一部屋にある一枚の外に繋がるガラスを割りました

それとともに大きな警報がなりはじめました

赤いランプが灯り脱走者が現れたことを報告します

鋳鶴君は大きな音に少し驚きましたが

部屋にあった大きなカーテンを使って魔王科の校舎を降りていきます


「やっぱり脱走したわね~♪

流石貴方の弟だわ♪」


「明乃、何をテンションを上げている

大会に優勝というか鋳鶴を此処に引き込むには

此処であいつを気絶させるか四肢をもぐしか無かろう?」


「それを実の弟にする気なの~♪

やっぱり魔王科会長は違うわね~♪」


そう言うと明乃さんは豊満な二つのデカメロンを揺らして

やる気がある事を示す

鋳鶴君が降りる所にはすでに魔王科の生徒さんでいっぱいになっています

ちなみに鋳鶴君は降りるのが怖くて下を向いている暇はありません


「こっ怖い!

怖すぎるでしょ!

高い!高い!高いぃぃぃぃっ!」


「何しているんだあの馬鹿は

将軍、発砲許可を」


「まぁ待て

あれはあれで面白いだろう」


そう言って結さんは腕を組んだ

鋳鶴君が降りてくるのを待っている

ライアさんは地毛の銀髪を若干乱している

明乃さんはその隣で背伸びをしている


「はぁ~・・・怖かっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


沈黙するしかありません

なんせ自分が脱出しようとカーテンを使いゆっくり降りてきた所に

魔王科の生徒がこんなにいるとは思っていません


「やっぱり・・・か

やっぱり分かってたんだ

僕が此処から脱走する事がね

あの警報はわざとらしくついたものだったんだね

正直、ここまで厳重だと

15年間一緒に暮らしてきた家族とは思えない信用の無さだね」


鋳鶴君は呆れ顔で言う


「それはそうだろう

今のお前は私たちよりも自分の友達が優先だからな

もう辞めたらどうだ?

普通科にいたところでお前は進化できない

そのまま私たちに押しつぶされる気か?

それとも鋳鶴、お前を腐らせ駄目な人間させた奴等と

まだ一緒にいたいと言うのかっ!」


怒声と罵倒が混じった大声が周囲に鳴り響く

その大声を聞いて

鋳鶴君は左胸に蒼い炎を灯らせた


「結姉、

そこまで言われる事は覚悟していたけど

僕は進化してるよ

みんなは僕を腐らせたりなんかしてないよ

それに腐ってたら結姉の前になんて立てない」


「私に刃向かう・・・

それがお前の選択か

鋳鶴、悪いことは言わないお姉ちゃんの所に来い

お前にあそこは小さすぎる

さぁこの手を取れお前は変われる此処で私と」


結さんが鋳鶴君に近付き手を差し伸べる

懐かしい右手、いつも自分が迷った時に救ってくれた右手

何かに嵌った時すくい上げてくれた右手

その右手を鋳鶴君は振り払った


「その手は取らない

僕はもう結姉に頼らず生きていきたいから

それに普通科が大好きだから」


「貴様っ・・・!

黙って話を聞いていればっ!」


ライアさんが持っていた拳銃のトリガーを引き

銃弾を発射した

鋳鶴君に一直線に向かっていく弾丸

その弾丸を鋳鶴君は左手の人差し指と中指で止めた


「今の僕にそんな鉛球は効かない」


「私の銃弾が・・・いとも容易く止められるとは・・・」


鳩に豆鉄砲

ライアさんは自分が打ち出した銃弾を鋳鶴君に止められて動揺しています

無理もありません、一応鋳鶴君は一般市民ですから


「君達を傷付けるつもりはさらさらない」


そう言うと鋳鶴君はライアさんの射撃した球を右手に持ち掌に乗せ

左手で掌に乗せた銃弾にデコピンをした

数秒後にライアさんの後ろにあった魔王科教室の窓ガラスにその銃弾が命中し

窓ガラスは崩れ去った


「本当だったら君らを皆殺しにも出来る

なぜか今の僕になら出来そうな気がする

魔法も無い武器も無い武術も心得ていない僕が

君らを殺せるかもしれない」


「随分と・・・

人が変わっているわね・・・」


明乃さんもあまりの鋳鶴君の変貌ぶりに唾を飲んだ


「それがお前の答えか

ならその答えに私も答えよう」


そう言うと結さんは木刀を召喚した

ほどよく撓り美しい茶色い刀身が鋳鶴君に向けられる


「木刀か・・・

大丈夫、手加減はいらないよ?

結姉が優しいのは知っているから」


「充分だ」


「・・・?」


「今のお前には木刀程度で充分だ

お前が私に勝てる見込みは1厘もない

大人しくあそこにいればいいものを」


「あそこは僕には狭いし

友達に会えないなんてつらい

僕はここから出る

意地でも」


鋳鶴君は左胸の炎を強くさせる

結さんは木刀を構え臨戦態勢に入った

そしてその数秒後

激しい音とともに姉弟喧嘩が開戦した


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