番外編:虹野瀬縒佳の愛すもの4
僕は虹野瀬の不可解的病を解決というか治療を
僕の母に施してもらうように頼んだ
しかし僕の力が必要、と母は僕と虹野瀬に腹パンをし気絶させた
目を開けるとそこには一面真っ白な虚空間が広がっていた
何もないただあるのは白い床のみ
強いてあれをあるのだと言うのなら間違っているのだと思うのだけれど
白い複雑な形をした瓦礫の様なオブジェの様な建築物が何本か地面から突き抜けている
一度その物体に近寄りそっと右手で触れると物体は崩れ落ちた
虹野瀬がいないのでふと探してみる
何処をあるけど何処をあるけどあの黒いレースのワンピースを着た虹野瀬はいない
歩いている途中で変な物、物体を見つけた
「刀・・・?」
刀が一本だけ物体に刺さっている
それを僕は引き抜くそうすると物体は音をたてずゆっくりと地面の中に入っていった
刀を抜いたあと一寸先を見る
そこにまた物体に鋏が刺さっていた彼女の持っていた鋏
そしてその先に鋸、鉄球、鎌
どんどん武器がえげつなくなっていく
そして武器を着々と引き抜きふと先を見る
自分のこれまで歩いた虚空間を振り返りそして再び前を向く
一寸先にはどんな鋭利な武器でも無く
どんなに危ない兵器でもなかった
物体の上にアルバム
誰のアルバムかそれは開いてみないと分からない
僕はそのアルバムを手に取りページを開く前に
酷く埃を被っていた表紙の埃を手で落とす
「虹野瀬縒佳」
と表紙には書かれていた
油性ペンで多分、彼女の母親が作っていたアルバムだろう
意外とアルバムは分厚く広辞苑の4倍の表面積
「虹野瀬のアルバムか」
興味はある
しかし僕は見るべき物かという事に困った
此処は多分彼女の心の中か何かかもしれない
もしもそうだとしたら僕は彼女の心の中を自分で言うのも何だが
汚い足に汚い靴を履き彼女の心の中を歩いて荒らしているのではと思った
嫌悪は無いがただ罪悪感や背徳感が頭の中をかき乱す
自分がもし他人に自分の心の中を覗かれたとしよう
恐らく僕は恥ずかしくなって学園の最上階から飛び降り自殺をするだろう
人は誰にだって知られたくない事はある
過去の事とか家の事とか
僕にだってそれはある
人間だからね
ページをめくるとそこには幼い頃からの虹野瀬の写真があった
0歳 3000kg 7月7日 7時7分7秒 誕生
4歳 魔術の基礎を覚える 身長90cm 15、6kg
7歳 上浦小学校に入学 身長110cm 36kg
12歳 卒業 陽明学園魔法科中等部入学 163cm 46kg
なぜだろう今、ふと気づいた
確かにアルバムの中にはこれまでの虹野瀬が映っている
僕が知らない虹野瀬
カメラに向かって微笑む虹野瀬が
しかし、両親と映っている写真が一枚もない
どこかにあると思い僕はアルバムを捲った
何処にも無いどのページを開いても
どの時期の虹野瀬の写真にも
母と父らしき人が映っている写真が一枚も無い
だが所々、写真があってそこから写真を剥ぎ取ったのかもしれないであろう
ページを発見した
ページはビリビリに無造作に破かれ何も無い
その後のページも捲っていけばいくほど破かれ具合が酷くなっていく
どこかで何かが落ちた音がした
ドスッとかなりの重量の物が落ちた音
音がした所を見る
そこには眠っているまたは気絶しているであろう虹野瀬が姿を顕わにした
しかしそれが虹野瀬ではない事を僕は知っていた
というより知らされてしまった
自分の本能が
人間としての危機察知能力が
働いたこの何も無さそうで何かが有る虚空空間で
僕は黒い騎士に遭遇した
私は健全無垢な少女だった
15歳になるまでは運動も出来て勉強も出来てお金持ちで周りの人間全員に笑顔を振りまいていた
それも15歳までの話、私はその年の春休みを堺に変わってしまった
私は病にかかっていた
人間が耐えられるべき容量を超えている。と医師の先生に言われた
実際は治る病気でしょう?と医者は首を縦には振らなかった
だって9分の1も助かる確率のない患者を救う気があるのかって
母は懇願した
私の前で、医者に縋り付いてお願いしますと
格下の人間に頭を下げ大量の資金、いわゆる治療費を渡した
医者は私を最低限の治療をして
夜逃げを慣行した
その後もたくさんの病院を当たり母は頭を下げ大金を支払った
だけれど面白いぐらいに全員に夜逃げされた
まるで仕組まれているかの様に
そして私を治せる医者が居なくなった事に母は絶望した
世界のDr雅に頼もうにも彼女は居ない
最愛の夫は?すでに死んでいる
そんな母の元に1人の男が現れた
黒衣を被り禍々しい杖を持った明らかに危険人物な人間に
彼は娘さんの病気を治しますと言った
1兆という大金を条件に
母は勿論懇願した
どれほど必死だったのだろう母は次第に狂っていった
かつてお金持ちと言われた頃に得た物は全て捨てた
私の為に
そんな母に黒衣の男が再び現れた
こんどは神に願えば全てを救うことが出来ると
娘も家も自分もこれからの未来も
と男は言った
母は謎の宗教団体に入った
毎週、何かに祈りを捧げて願った私の目の前で
私はそんな母が嫌いになった
借金まみれの家
働かず宗教にのめり込む母
母には私が見えていないとわたしは努力した
見てもらおうとそして母に変な宗教団体から抜け出させるように
数々の賞状、スポーツでの貢献、魔法での貢献
私はこうすれば母が戻ってきてくれると思った
しかし効果は逆方向に傾いた
私が活躍すればする程、母はその宗教にのめり込んだ
まるで麻薬に手を染めた極悪犯罪者の様に
そしてある日私は母に売られた
借金の形として
母は私を売った
最愛の娘をあれほどまでお金を掛けた人間を
無情に不浄に捨てた
私は何かと分からなくなった
そして黒衣の男が私に寄った
今度は母では無く私に
「お前にはもう何も無いと
変わりに私の全てをくれてやる
此処にある全て黒魔法も杖も魔術書も
全てお前に足りない物を
ただの魔法じゃなく全てを黒に染める黒魔法を」
と男は言った
私は初めは首を縦に振らなかった
何が起こるか分からない
その先に何があるか分からない
でも私は最後には首を縦に振った
そして男と契約をし私は黒魔法使いになった
ただの人間では無く黒魔法使いに
規格外の体重の女に
身体まで心まで黒く重くなっていった
全てを失って私は重たくなった
お金も地位も名誉も希望も
「黒騎士か・・・
良くあるRPGの典型的なあれじゃないか
嫌いじゃない僕だって魔王なんだから」
黒騎士が槍を構える
僕を見て突進をする
僕がそれを受け止める
それの繰り返し
しかし黒騎士は強かった
まるで虹野瀬に拒まれているように感じた
黒騎士はなぜか大きくなっていく
この空間と世界と共に
白が着々と黒に変わりかける
「僕は急いでいるんだ
君の後ろ白い巨塔のてっぺんで寝ている
超高飛車、傲慢な魔法使いを助けなきゃいけないんだ」
だが黒騎士は退かなかった
まるで姫を守る騎士の様に
それは逆に虹野瀬が僕に近寄ってほしくないという事に繋がる
だが僕は戦いの最中ある事に気づく
「なぁ虹野瀬
人間って面白いよな
たくさんの人間がいる
みんな違ってみんな良いって誰かが言ってた
人間ってのはさ
1人では絶対に生きていけないんだよ
俺はお前の過去に何があってかは知らない
重みを背負っていた事ぐらいしか知らない
だったらそろそろ背負うのをやめてみたらどうだ?
僕はその方が良いと思う
ただ一例にしかすぎないけれど」
正直言って僕には限界が近付いている
黒騎士の突進を抑えていた両腕がもうパンク寸前だ
次きたら多分抑えられなくなるだろう
次がきたらという場合いだが
「じゃあもし!もしだ
僕が君を裏切ることがあったら迷わず殺してくれ
僕はそれで構わない
僕は貴方を裏切らない!」
黒騎士が突進を慣行する
僕を殺そうと
その構えた大きな槍で僕を串刺しにしようと
虚空空間の無限の距離を使い
加速を繰り返し
僕へ僕へと近付いていく
「信じて良いのね?」
天から声が聞こえてきた
その天からの問いに僕は縦に首を振り肯定する
「信じられなくなったら
そこで殺しても良い」
「本当に貴方って欠陥品ね
この世の誰よりも
物好き君」
「それはどうも」
天がそう言うと
黒騎士が音も無く崩れ去っていく
風化する様に音もたてず鎧が落ちていく
槍、兜、甲冑様々な黒騎士の防具と槍が落ちていく
その崩れた黒騎士の残骸の向こうそこには白い巨塔があった
そこの上で虹野瀬は確かに僕を見て微笑んでいた
そんな事があって
出前で夕飯を食べて僕等は二人で布団に入っていた
勿論付き合ってもいないしまだ手も握っていない
敷き布団が一枚しか無いと言うところでツッコミを入れるべきなのか
それともゆりが鰻重をぶちまけたのが悪いのかそれは定かでは無い
虹野瀬は着替えがなかった為に姉達のあまりのパジャマというか部屋着を着てもらっている
彼女はまったくうたがうことなく風呂に入り普通に夕飯を僕と食べた
そしてこの状況
「ねぇ物好き君」
「物好きじゃない
望月!」
「貴方そういえば私を呼び捨てにしたでしょう?」
あまりにもの勘の良さというか
そういう要らない事を覚えている虹野瀬にびびる僕
「貴方にだけは許してあげるわ」
「は?」
「許してあげるといっているの
呼び捨て許可みたいなものかしら」
「まぁ落ち着け!
僕は君の恋人でもなければ同級生でもない!」
「そんなの関係ないじゃない
私と神宮寺との差別の差が嫌なだけよ
それにもう私、重い女じゃないみたいだし」
そう言うと虹野瀬は僕の顔に自分の顔を近づけた
「そういえば良かったわね物好き君」
「何が?」
「ほら襲いたい放題じゃない
やりまくれるわよ?」
あまりの発言に開いた口の塞がらない僕
というかやりまくれるとは何処の国の言語なのだろうか
恐らく日本では無いのだろうけど
「そう言えば言いたい事があったの」
「何だよ」
「私の事を救ってくれてありがとう望月君
これまでの無礼をお許し下さい」
あまりの丁寧な謝り方に拍子抜けする僕
奇想天外、奇妙奇天烈な謝り方に感動する
が
「なんて言うと思ったかしら?」
僕の感動は一瞬で水の泡と化した
「でも本当に感謝しているわ
私の邪魔な思いと重さを取り払ってくれて
だからこれだけはちゃん言うわ
貴方の目の前で今ここで」
そう言うと虹野瀬は一度深呼吸をした
長いようで短い深呼吸
「ありがとう」
胸の奥に何かが刺さった気がした
これがいわゆるツンデレなのか・・・?
と頭の中で考えてしまう僕
「ちなみに1、ありがとうにつき
貴方の家の財産を半分もらうわ」
「金取るのかよっ!」
といった感じに夜を過ごし
朝には一緒に寝ていた虹野瀬は僕の隣から消えていた
手紙とかすかな彼女の石けんの匂いを残して
というかなぜか身体が重い・・・
今日も学校だというのに妹二人が僕を起こしに来る
そこで気づく何か身体が重すぎる
僕はすぐに風呂場の前の体重計に向かった
体重計の針は389kgを刺していた
どうやら神様とかそういう類とか思いとかは
適当なものなんだと僕は知った
手紙には何が書いてあったかまだ僕は手紙を開いてはいない
けれど逆に見なかったら彼女にとやかく言われそうだったので読んだ
物好き君へ
お手紙でごめんなさい
と言うとでも思ったかしら
まったく私は謝る気なんて無いわ
だった貴方は起こしても起きないんだもの
だからご飯を先に頂いて学校に行ったわ
やっぱり言葉で伝えられるような私じゃないから手紙にしたの
この紙一枚の中でなら貴方に御礼が言えるわ
ありがとう
PS
ちゃんと次元の区別をしなさい
私はガハラさんより厳しいわよ?
なんと言って良いか困る内容を書くなっ!
と言いたくなったが僕は大きく息を吸って我慢した