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優しい魔王の疲れる日々  作者: n
優しい魔王の疲れる日々5.5
51/94

番外編:虹野瀬縒佳の愛すもの3

僕は虹野瀬の足を掴んでいた

彼女を止めるために僕は多少の傷を負った



今年の春休みに起こった事だ

僕は何者か分からない何かに襲われた

魔王だなんと言われてた人間が呆気なく誰かに襲われた

だなんて事が知れたら僕は外も歩けない

このことは僕と母以外は知らない

とにかく僕は誰かに何者かに襲われた

だがしかし顔は顕わにしていた

身の毛がよだつ男の本能を刺激するような女性だった

美しさの中にとてつもないぐらいに不気味な何かを放つ女性だった

制服の襟で傷は隠してはいるが僕の首には未だに襲われた後の傷が付いている

僕は彼女に首筋を咬まれた

何故だか分からない僕は何もしちゃいない

平凡でありたいと思って普通の人間に戻って1年だった

春の夜静かな平穏な夜

誰もいない夜桜の灯りしかない自宅付近の大きな一本道で

何の罪も悪気もない僕は彼女に咬まれた

母がたまたま家に帰る途中に拾ってくれたからよかったものの

あの時母が来なかったら僕は死んでいただろう

いやそれがよかったのかもしれない

結果僕は今のこの人生を送っているのだから

母はこの事態を隠す為に交通事故という扱いにした

後から聞いてみるとどうやらあの女性は吸血鬼か何かといった類のモノらしい

一般論にあるか無いか分からないが吸血鬼に襲われる人間は

ヴァンパイヤハンターだったり特殊な聖職者とか世界が羨む絶世の美女だったりするのだが

そして普通ならばそこで美少女が助けてくれるとか現れてくれると思ったのだが本当の鬼が現れてしまった

僕は今は辛うじて人間という扱いになっている

吸血鬼の類の人間に咬まれたところで吸血鬼になってニンニクや十字架に、日光も嫌いというか弱点になる事は無かった

しかしその影響というか後遺症は残っている

身体事態に変化があったとか頭脳明晰になったが訳ではない

むしろ学力は下がっている

僕は普通の学生だったと言えばいいのかそうでは無かったと言えばいいのか

運動能力は以前よりあがっている

正直いつも運動神経抜群ではないがどうやら僕の身体は感情に左右でもされているのか

何か心を揺さぶられたときに身体能力が漫画や小説に出てくる奇妙奇天烈主人公の様に跳ね上がる

そういう事があった時に何かスポーツテストでもしていれば

50m走は4秒を切るし握力は3ケタに確実に到達するだろう


「貴方の家に行くの?」


「そう母に会ってもらいます」


「世界のDr雅、

雅なんて萌えそうな名前じゃない?」


「綺麗だったり萌えたりするのは名前だけです

実際は40超えた目付きの悪い母親ですよ」


「へぇ

でもさぞかし中学や高校ではさぞかし萌えキャラの様にちやほやされたんでしょう?」


「僕の母は根っからの喧嘩好きですよ

それにあの人が萌えキャラみたいな女子だなんて聞いたこと無いし

それに生身の人間をそういう目で見ないでくださいっ!

ていうか虹野瀬さんにも萌えとかあるんですね・・・」


「これしき人間としては普通の知識よ」


普通にいつものか細い声で虹野瀬はそう言った


「それに私やガハラさんみたいな女の子をツンデレと言うのでしょう?」


「そっそうなんですかねぇ~・・・」


彼女にはデレの要素が無いだからただのツンで強いて言うならツンドラまたはドラツンだな

と今僕に変わって僕の親友が此処に居たらそう言う所だろう

僕や虹野瀬、歩達が通う私立陽明学園から

7~8分くらいいった所に僕の家がある

その隣の家には僕の幼なじみの三河歩の家が建っている


「足が痛いわ・・・

それにしても自転車ごめんなさいねと言いたいところだけれど

悪いのはあなたよ?私の体重、知ってたでしょ?」


「それはそうですけど・・・」


「何か文句でも?

というより早く家に着かないと一つ一つ貴方の身体を切り落とすわよ?」


「どこからですかっ!?

というか切り落とすな!」


「自転車に乗ろうとするなんて中学生以来よ

それに二人乗りしようとして後輪がパンクするなんて信じられない

今はもう私の両足がパンク寸前よ

物好き君はもう少し優しい人だと思っていたのに」


優しさは要らないんじゃないのか

本当に規格外というか・・・

滅茶苦茶というか・・・


「じゃあ具体的に言ってください

今でも出来ることならしますから」


「そうねほんの一例だけれど

例えば物好き君が私を抱き抱えるかお姫様抱っこをして運ぶのはどうかしら?」


「僕の両腕を殺す気ですか!?

本当に貴方っていう人は・・・」


「ほんの一例といったじゃない

それとも二例や三例も聞きたい?」


二例、三例もあるのかとんでもないな本当に


「はぁ・・・

マリーアントワネットだって貴方よりもう少し謙虚で慎み深い人だったというのに

それにガハラさんの方がまだ可愛い方ですよ」


「だって彼女達は私の親友みたいなモノだもの」


「時と次元を無視しているっ!?」


「さっきから五月蠅いわよ物好き君

それに慣れ慣れしく私の発言一言一言にツッコミを入れないでくれる?

同じ学園に通っているとか思われたら恥ずかしくて家から出られなくなっちゃうわ」


「同じ学園の生徒でしょうよ!」


そこまで否定されるとは・・・

というか物好きじゃない


「はぁ・・・ガハラさんの方がまだましかも・・・

このままじゃ精神がもたない」


「物好き君、貴方は次元の違いってやつを知らないの?

それに何か私がガハラさんより貴方に酷い事をしているみたいじゃない」


そう言ったのが彼女には理解出来ていないようだ


「何か持ってないんですか?

杖とかさっきの日本刀は・・・出すわけにはいきませんけど」


「何も出すモノは無いし全部外出するから部屋に置いてきてしまったわ

杖は私の体重を支えきれないし日本刀は支えには弱すぎるもの

それに鞄とかも一切持つ主義はないもの

教科書の内容、ページ数まで詳細まで一言一句間違わずに暗唱できるし

必要最低限の文房具とかは持っているから

私は体育や外出授業には参加しないわけだから着替えることもない訳だし」


「あぁ・・・だから鞄とか持ってなかったんだ」


「それに両手が自由じゃないと切ったり裂いたり刺したり出来ないじゃない」


「・・・・・・・・・・・・」


人身凶器とでも言った方がいいのだろうか・・・

この場合人間文房具とでも言っておくべきか・・・

それともドラ○もんか


「それに私には自室が学園内にあるし

何か不足してもそこで1人でいれば誰か来てくれるわ

全裸で過ごしてもあそこでは何も言われないし」


「・・・そういうことはあまり公にするべきではないかと」


「何よ自室で全裸で過ごそうとサボろうと私の自由でしょ?

それに友人の居ない私にはあの空間がピッタリなんだもの」


彼女はまるで友達が居ない事が普通の事の様にそう吐き捨てた


「着きましたよここです」


家の前にやっとの重いで到着した

短いようで長い道のりだった


「とにかく今日は家にいるはずですから

早く終わらせましょう」


僕が家の扉に手をかけようとすると

僕がドアノブを触る前に扉が勢いよく開いた


「お兄ちゃん!おっかえり~!」


いきなり僕の妹、

ゆりが現れ僕の顔を踏みつぶしそのまま地面に押し倒した

虹野瀬は何が起こっているのか分からないような顔をしている


「こっ!こんにちわっ!」


ゆりは僕を押し倒した後

虹野瀬を見て数秒硬直して我に返ったかのように

僕の身体の上から去った


「とっても元気な妹さんね

物好き君とは違って可愛らしくていいと思うわ

それに疑問が浮かんだの

なぜ貴方だけ欠陥品みたいな人間なの?」


かなり傷ついた

今の虹野瀬の言葉で

刃渡り6cmのナイフで突かれたような痛み

すでに僕の心からは血が噴水の様に溢れ出ている


「あのすいません・・・

家族がいるんで危険物とか文房具は僕に渡してください!」


「今此処で?」


虹野瀬は僕を睨んだ


「私を罠に嵌めてくれたわね

ただの物好き君だと思っていたわ」


「望月ですから!」


そこまで言う事はないと思うんだけどなぁ・・・

しかし彼女は無言になると全身から文房具という名の凶器を振り落とした

そして刀やナイフも

一言も何も喋らずに時折僕を睨みながら


「受け取りなさい

匂いとかは嗅いでもいいわよ」


僕はそこまで変態じゃない

しかしよくこんなにも凶器や文房具を身体にかくしている

本当にドラ○もんなんじゃないかと疑問を抱いてしまうぐらいに

様々な凶器、様々な文房具回収する僕も大変だ

それに魔法科で見た凶器の数を遥かに陵駕している


「勘違いしないでほしいのは

私はまだ貴方を完全には信用していない」


「はいはいそうですか」


「もしも貴方が私を騙して家に連れ込みあんな事やこんな事をしてみなさい

貴方の大切な魚肉ソーセージを綺麗に刻んだあげるわ」


そんな事は微塵も考えていない


「それに私は防犯ベルは常に携帯しておくわ

この紐を引けば魔法科の生徒が総出撃して貴方を迎撃するわ

そしてこの家も家庭崩壊させる」


「大丈夫ですから・・・何もしませんから」


大変な事をよくもこうさらっと言えるな

嘘ではないとは思うがそんな事されたらかなり大変だ


「普段は妹さんと3人で暮らしているんですってねぇ」


家族構成というか他の家族が普段居ない事も知っているというのか

とにかくこの前の体育大会での僕の抱っこではまったく信頼を得られなかったらしい

外で二人でいると家の中から誰かが顔を出した


「鋳鶴、何してる

女なんか連れてきてさっさと入って夕飯を作れ」


「あぁこの人が母さんに診てもらいたいらしいんだ」


ここからは虹野瀬の出番

僕は家までの案内人にすぎない

家の玄関を開き家の中に入って靴を脱ぎ床に出る

まだ夕方だけれど家の中では玄関の電気が付けられている

僕が靴を脱いでリビングに続く床に足を乗せる

そこで気づく

僕にとってはこの軽い段差を登る事も靴を脱ぐ事も簡単だ

しかし虹野瀬はどうだろう

389kgの重たい身体を持ち上げ床に足を乗せる

これだけでもたったこの行動だけでも虹野瀬は力を振り絞らねばならない

僕は彼女の手をとって床に上げた

そこで僕の後ろに誰かいると悟る


「外で診る

その子は普通の子じゃねぇんだろ

さっさとしろ早く飯が食いたいしな」


そう言うと母は渋々靴を履き外に僕と虹野瀬を連れた

そして自分の家の小さな芝生の所に彼女を座らせる

彼女のお尻の下にある芝生は潰れていて少し凹んでいる


「はい

それでは少し質問をします

嫌な事があったり答えたくない事があったら首を横に振るか言いたくないと言え

ちなみに私は嘘とかを見抜けるからな嘘ついても無駄だぞ

とにかく鋳鶴が診てくれとかほざくのならお前は何か病気かなにかにかかっているんだろう

それに今のお前の目は私を見てから暗い色になっている

完全に私を信用してねぇえ証だなまぁ仕方ねぇ

医者を信用できないって事は昔とかに医者で嫌な思いをしたんだろ

余談はこのぐらいにしてさっさと質問を始めるぞ」


そう言うと母は白衣を羽織った

僕は虹野瀬の隣で胡座をかいて座っている


「あなたの今感じる自分の異常な所を教えてください」


「身体が重い所です」


「そう感じるようになったのはいつからですか」


「中等部を卒業して後の春休みです」


「その病気の辛い点は?それといつ症状が出るか教えてください」


「身体が重く歩くなど一般人にとって一般な事が出来ない事です

症状は毎日出ます四六時中、24時間」


虹野瀬は母さんの質問に対し淡々と返す

しかし彼女はいきなり口をつぐんだ

何の質問かは聞いていなかったが彼女は先ほどまで開いていた

口はまるでファスナー付きの財布の様になってしまったのか口を開こうとしない


「もう一度言う

過去に辛いこと、哀しい事はなかったか?」


「言いたく・・・ありません」


虹野瀬の心が揺れているのを僕は少なからず感じた

その様子を見ていないのかそれとも察しているのか

母さんはさらに質問をする


「なら家族はいますか?」


「言いたくありません」


「友達はいますか?」


「いません」


「質問は以上だ

そこで、だ

虹野瀬、お前には今此処で死んでもらわなきゃならんのだが

いいか?まぁ一瞬の死だから安心しろ

私は下手くそじゃない」


母さんはそう言うと白衣を脱いで

腕を組んで体操を始めた


「嫌です」


虹野瀬はそう吐き捨てた

冷徹な目を目の前の人間に向けて


「信用出来ないからか?」


「はい

初対面でなおかつ

望月君の母となると駄目です

信用できません」


「論理的なガキだな・・・

骨が折れそうだ・・・」


僕はそう言って拳を構える母さんの前にたった


「何の真似だ?」


「殺すのはやり過ぎだ

いくら母さんが医者でも人殺しはさせない

それに僕がここにいる時点でそういう事するとは分かっていたけどね

普通だったら母さんは僕を追い出す筈だ

だからここをどかないし退けない

殺しは許さないたとえ医者となれど」


「そうか

じゃあお前も死ね

その方が都合が良くなる」


母は拳を作り

左の拳で僕を右の拳で虹野瀬の鳩尾を殴った

全力に近い力で思いっきり地面に足を踏み込んで


「あと虹野瀬は病気なんかじゃない

まぁ色々あんだよ年頃の女子には

鈍感なアホにはちょうどいい修行的なあれになるだろうな

女の心を理解し救ってやれよ

今、お前しか虹野瀬を救えない

この世のどの人間がやってもお前しか救えない

それでは良い夢を

私は飯でも食うか

ゆりー!神奈ー!出前取るぞー!」

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