表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優しい魔王の疲れる日々  作者: n
優しい魔王の疲れる日々5
49/94

番外編:虹野瀬縒佳の愛すもの1

虹野瀬縒佳と鋳鶴君

一言で言えば敵と敵

虹野瀬さんは鋳鶴君と二人一日を過ごし

彼の事を認め始める



虹野瀬縒佳は、魔法科において

いわゆる優しく温厚で病弱な会長という立場を与えられている

当然のように体育の授業には参加はせず

全校集会、学園集会でさえ立ちくらみや貧血防止とやらで、1人だけ日陰にいる

虹野瀬とは、魔法科戦の前、僕がスパイとして入った魔法科の会長だった

聞いた噂によると彼女は高校生活、ずっと同じクラスにいる

神宮寺寿に聞いたところ

彼女ですら彼女が活発に動いているという風景をいまだかつてみた事が無いらしい

保健室病院の常連らしくかかりつけの病院、家庭の都合などで遅刻、早退、欠席を繰り返している

中央病院に住んでいるのではないかと都市伝説並に学園内で噂されたりもしている

しかし病弱といってもそこに脆弱いや貧弱というイメージはゼロと言って良いほど無い

その貧弱とは正反対に彼女はとても傲慢である

そのせいだろうか魔法科内部では魔女令嬢などと冗談とは言えない冗談が飛び交っている

虹野瀬縒佳はいつも魔法科施設内に作られた自室で1人本や魔術書を読んでいる

難しそうな見た目の本を読むこともあれば

知的レベル、つまり人間的知能が下がりそうなアニメチックなカバーの本を読んでいる時もある

彼女に本の基準とかは無いのだろうけどまぁ読書好きという事にしておこう

頭は相当良いらしく、常に魔法科内ではトップまたは5番目内には入っている

それに全教科まんべんなく彼女は自分の才能というべき才能を発揮する

魔術実技でも彼女は毎年のように学園新記録と呼ばれるものを出している

普通の科に通って家庭科と社会以外は50点以下の僕なんかと比べるのもおこがましいが

きっと、脳味噌の出来とか形とかがどこもかしこも違うのだろう

友達、というものはいないらしい

1人も

虹野瀬縒佳が誰かと言葉を交わしているのを僕はあまり見たことがない

ゼロという訳ではないが多分、業務な会話や重要な会話なのだろう

怪しげな視点で彼女を見ると

いつだって1人で本を読んでいる彼女は

本を読むこと、そして自分が1人という行為によって

話しかけるなと自分の周囲に堅牢な壁でも作っているのかもしれない

それこそ虹野瀬縒佳と三年同じクラスになった人に聞いても彼女は口を開くことは中々ないそうだ

聞いた噂によると彼女は授業中教師に当てられて


「わかりません

私には理解不能な問題です」


あまりにも重く小さく女性が一番低く出せる声を出すらしい

学校とは不思議な場所で友達のいない人間はその友達のいない人間同士でドラクエみたいなパーティーを結成する事のが普通だが

虹野瀬縒佳はそのパーティーからも例外にいるようらしい

かといって彼女は会長をやっている

虐められている訳でもなければ虐げられたりする事もない

彼女が迫害されるとか疎まれたりする事はまだあまり付き合いのない僕でも分かる

いつだって彼女は教室の隅、または自室でそこにいるのが当たり前の様に本を読んでいる

その場にいるにはいるのだが

まるで本当はその場に居ない人間のように

だからといってどうという事もないし気にする事もあまりないだろう

陽明学園は全国からエリート街道を進む人間からあまりにも使えない

いわゆる「屑」と呼ばれてもおかしくない人間を入学させ学園に入籍させる

ただでさえ人間の多い陽明学園で中等部の人間から高等部、大学部の人間までで

さらにそれを6科分けして先輩、後輩、同級生、教員、他科の生徒全部含め

全校生徒10万人を超える人間と生活空間を共にする

果たして一体その中の何人が自分と関わりが出来るとか自分にとって意味のある

人間なのだろうかと考えると途方にくれるまたは絶望的な答えが出てしまうことは誰だって違わないはずなのだから

3年間クラスが同じなんて数奇な運命な縁がある人間でさえ彼女は会話をしないのにいいや出来ないのに

と思っていた悪夢のような魔法科戦が終わった後、僕はケガをした普通科のみんなを保健室病院に送った

その日だった正確に言うのなら僕にとって地獄の体育大会、魔法科戦が終わり

来週に決勝戦の魔王科を控えている時だった

僕はみんなと学校に行けず遅刻気味になりかけて魔法科の門の前を走っていた時だった

僕が魔法科の前の正門を通り切る前にふとテラスを見上げた

見上げたのを今でも後悔している少しだけ呆けていると

頭上から黒いレースのワンピースを着た女性が急落下してきた

それが、虹野瀬縒佳だった

それも急落下してきた訳では無くテラスで本を読んでいた時

急な風に煽られしおりがとんだらしいそのしおりを取ろうとして

虹野瀬縒佳の背とアスファルトが平行になるように落ちてきた

避ける事が出来た気がするけれど

僕は咄嗟に虹野瀬縒佳の身体を受け止めた

避けて虹野瀬が死ぬよりは正しい事をしたと僕は思った

いややはり受け取らなくても良かったのかもしれない

なぜなら彼女はまるで人では無いといっていいほど非常に重かったからだ

不思議なぐらいに受け止めた自分の腕がもげそうになるぐらい不気味に

ここにいるべき人間ではないかのように彼女には体重と呼ばれるものが以上にあるという程にあったのである


ーーーー魔法科3階廊下ーーーー


「虹野瀬が何か?」


僕の問いかけに神宮寺は首を傾げ目を見開いた


「虹野瀬がどういたしましたの?」


「いやぁ・・・その~・・・

まぁ~・・・気になって・・・」


「そうですの」


「ほら!虹野瀬縒佳なんて変わった名前でしょ?」


「私の名前も珍しいと思うのですが・・・」


神宮寺が俯き加減にふてくされた


「私も虹野瀬の事はあまりしりませんわ」


「何でも知ってる寿さんが

知らない事があるなんて」


「私は知りたいと思った事を知ろうとする女です

たとえば鋳鶴様のその・・・サイズとか・・・」


神宮寺が照れくさそうに何か言っているが僕はそれを無視した

神宮寺寿、

陽明学園魔法科が誇る副将と言っていい存在

しかし彼女の容姿、言動からしてあきらかにそういう場にいる人間ではないと僕は思った

虹野瀬と似たようなといってもいろは正反対の白のレースのワンピースを着ている

髪の毛は少し紫かかった青をしていて一本、一本が綺麗に整っていた

見た目とは裏腹に彼女は真面目で教師受けもいいというただし、見た目以外は

虹野瀬とは3年間同じクラスらしく番号順で言うと神宮寺の隣に虹野瀬が来る

ちなみに体育大会で面と向き合う、前でも神宮寺の事は耳にしていた

当たり前と言ったら当たり前なのかもしれない

彼女は虹野瀬縒佳には劣るものの魔法科トップクラスの学力、魔術を持つ

彼女の名前が僕の耳入ったのは2年生の時、

魔法科の最優秀成績受賞者が二人いるというニュースを聞いた時だった

僕はその日だけ学園の広報部が発行している新聞を購入した

記事には魔法科に二人の天才、未来の大魔術師

と書かれていた大げさではないかと僕は思った

しかし新聞に書かれた内容を見て僕は仰天してしまった

なぜなら虹野瀬縒佳、神宮寺寿両名とも全教科満点、全魔術実技満点という離れ業をした

という事が書かれていた彼女たちは毎回の定期テストで勝負をしているつもりがないといっても

追い抜き追い越す様は勝負というものをしているとしか思えなかった

そんな有名人は知りたくなくても勝手に耳に入ってしまうものだ

彼女の良いところと言ってもいいのかは分からないけれど

彼女は一度決めたことはやめない、途中で曲げないという所だ

体育大会で僕は彼女を完膚無きまでと言っていいほど叩きのめしたというか降参させた

後悔が多い僕は神宮寺に大変な事を言ってしまい

彼女はそれを多大に勘違いのようなものをして奴隷にしてくださいとかここでは言えないような事も言った

僕は奴隷領主でも人身売買をする様な人間でもない

友達も多い訳でもなければ少なくもないほどよくいるといった感じだ

彼女にはあの日から何度も説得しようとしても彼女は首を横に振り続けた

そして今僕は彼女の主人?のような位置に立たされている


「彼女の体重おかしくないか・・・?」


僕は唐突に神宮寺に質問を投げかけた


「彼女は何も言いませんし語りませんわ

彼女は重たい女ですから色んな意味で」


神宮寺が重いため息をつく


「そういえば

神宮寺は虹野瀬さんと同じ中等部出身でしょ?」


「そうですわね・・・

中等部の時は1度しか同じクラスになったことしかありませんわ

でもお互いをよく知る前に噂は耳にしましたから」


君よりか!

と口を開き言いそうになったが寸前で止める

神宮寺があまりまぁ悪い意味で調子づいてはいけないと思い僕は懸命に口を閉じた

彼女は自分でも自負しているのか

たまに自分のことを


「少しだけお金があるのが取り得な小金持ち」


というあれだけお金があるのにこんな事が言えるのは彼女くらいだ


「今でも学園一の美女と噂される位ですし

運動も魔法も勉強も出来ますから」


「運動も?」


「中学まではと言った方がいいですわ

今ではもうスポーツなんてする人柄じゃありませんし」


「ちなみに当時は体育会系の部活に入ってたの?」


「えぇ基本的には全部助っ人と言った感じですわね

部活は魔法陸上部と魔法球部の掛け持ちでしたわね」


どんな競技だ!とツッコミを入れたくなったが再び寸前で口を閉じる

ふと僕の頭の中で思考が巡った

中学時代は今の虹野瀬縒佳とは正反対の様な虹野瀬縒佳という事らしい

元気いっぱいで誰からも人気があるって事か・・・

正直言って信じられなかった

自分は体育大会で御前と上辺しかまだしらなかった

勿論、こんな虹野瀬は僕には全く想像出来ない

多分、妄想でも出来ないだろう


「噂や皆さんからのお話は嫌と言うほど耳にしましたわ」


「噂?話?」


「どんな身分、どんな人間でも公正させたり仲良くしたり

分け隔て無く人間、動物関係なく優しく

日々勉学、スポーツに励む努力家だったそうですわ

それに彼女は家柄も良いんですの

大魔法使いをお父様に持ち

ご自宅も非常に豪邸と言っていいほどお金持ち

それでも全然気取ったり傲慢な部分は一つも無いという話と噂

常に人間の高みに立ちさらにその高みへ行こうとしたという話」


「今よりも超人だったんだね・・・」


半分疑いながら神宮寺に言葉を返す

でも噂は噂、信じるか信じないかはその人次第


「全部中学生の頃ですわ」


「中学生の頃・・・」


「高等部に入ってから目立った噂は魔術の事しか聞いてませんわ

それ以外は私も知りません

だから高等部1年目の時はびっくりしましたわ

あれほど輝き中心になりたがっていた人間が教室の隅にいるんですもの」


私の勝手なイメージを教えているだけですわと、神宮寺

確かにこれは神宮寺のイメージ僕のイメージでもなければ僕のイメージでもない

しかし人は変わる


中学と高校じゃ訳が違う

みんなそうだし僕や神宮寺だってそう

だから虹野瀬だって何かあったのだろうし

魔術以外は専念していないのかもしれない

身体を壊してスポーツが出来ず体力を落としたのかもしれない

スポーツという行為をしないという事によって元気が無いのかもしれない

身体や心が弱ったりしている時は誰でも弱くなるものだ

それに中等部では活発というのなら尚更


魔法科との体育大会と今朝の出来事が無ければ


「私が言うのも何ですけれど

虹野瀬縒佳は」


「虹野瀬縒佳は?」


「今の方が中等部の時よりも綺麗ですわ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「昔よりも人の上に立つというオーラが滲み出ているから」


虹野瀬縒佳

魔法科2年生徒会長

容姿端麗

寡黙

ドS

怒るときは良く喋る

文武両道

とにかく重いなぜか重い

そして女性としての性格も重い

人より上へ他者より上へ

大金持ち

でも噂は噂


「そういえば

これから影太に会いに行かなきゃいけなかったんだ」


「何でですの!?

もう少し私と愛の話合いとこれからの事を!」


「いやっ・・・

遠慮しておくよ!」


僕は暑くて脱ぎ椅子にかけた学生服を再び羽織って席を立ち上がった


「という訳で!

行ってくるね!」


「しかたありませんわねぇ・・・」


神宮寺は半ば呆れ顔でそう言うと僕はその場を立ち去り

迷わぬ足で虹野瀬のいる自室に向かった


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ