第43話:魔王と捕縛
神宮寺さんと逃がし明乃さんとライアさんに捕縛されてしまった鋳鶴君
そして体育大会のルール改定、普通科はどうなってしまうのでしょうか・・・
「やぁ久し振りだね?
ルール改定というのはどういう事かな?」
いつも通りの風間さんが魔王科会長室に備え付けられた
たった一つしかない窓から風間さんが結さんに話しかけている
「それがどうした?
知将風間一平会長にはこれぐらいのビバインドを背負った方がいいだろう?
それとも今、お前の得意な言葉責めで私を倒すか?」
結さんは座っていた社長椅子を風間さん側に向けると
相手の目を見ながら質問を返した
「それをしてどうするの?
第一ここは魔王科の本拠地だよ?
君の所にどんなトラップがあるか分からないし
それにここには君の言うことを聞くまるで忠実な駒がいる
勿論みんな、君の事が好きすぎて思いが溢れ出してしまう子
百合な子、君に夜ご奉仕をする子
何をしでかすか分からないよ?
僕は小心者でね怖いことは嫌いなんだよね?
観衆の目の前に出るのも嫌だし
その観衆の前で醜態を晒すなんてもっての外だよ?」
「だから何だ?
一体、お前は何が言いたい」
「今回は望月君は戦わせないよ?
君は一応君は彼のお姉さんだ
そう血の繋がった、ね?
それに君が兄ならまだしも姉なんだ
一応女性だし彼はそういう事を考慮して君を攻撃しないと思うんだ?
今、望月君は君の手中にあるからね?
だから君に望月君は預けるよ?」
風間さんはゆっくりと語ると
首元に下がったネクタイを締め直した
眼鏡を上げシャツをズボンの中に素早くしまった
「それで誠意を見せると
私は鋳鶴を返すつもりはさらさら無い
愛弟をあそこにのさばらせておくのは実に危険だ
それはお前も分かっているはずだと思うが?
魔法科での戦いを少なからず見ただろう
そうは思わないか?風間一平」
「確かに彼は普通科では第一級危険生物並の扱いをしないといけないかもしれないね?
でも彼は君が思うような事は一度もしたことないよ?
それに第一級危険生物扱いしたら彼が何よりも可哀想とは思わないかい?
僕が姉なら、君みたいに彼を捕縛したりなんてしないよ?
むしろ何もない荒野にでも放ってもいいぐらいだ勿論一人きりでね?」
風間さんは自慢げに話し終えると
結さんは目の色を変え机の上に置いてあった自分の愛用の刀を鞘から抜き
窓際にいる風間さんに近付き、風間さんの左頬に突き付けた
「お前に私と鋳鶴の何が分かると言うんだ?
たかが2、3ヶ月の付き合いで姉弟の話に首を突っ込むとは
頭が良いという噂は嘘か?それとも演技か?」
突き付けられた刀を風間さんは左頬に突き付けられた刀を左手を使いどかした
「僕は演技はしないよ?
それに僕は君みたいに望月君は悩みを僕や周りの人に教えてくれたりする
君が家に帰っていない間に僕らは随分仲良くさせてもらった
だから望月君の気持ちは少なからずとも理解が出来る
多分、彼が捕縛されている今起きたとしよう
きっと彼はふと目が覚めてこう言うだろうね?
「結姉を助けないと!
普通科も大事だけれど結姉も大事だ・・・
戦わずして結姉を降参させる事は出来ないかな・・・」
ってね彼は本当に面白い
魔王と呼ばれているのに人にお人好しと言われるぐらい親切だ
君と違って男性を拒んだりしないし気難しくもない
彼が魔王じゃなければ彼はごく普通の学生になれていた
それを君達、お姉さん達のキャリアが彼の邪魔をしていたりもする
世界武力統合機構のお姉さんと魔王科生徒会長のお二人だね?
それが彼の邪魔をしている事は君達姉妹は分かっているはずだよね?
そりゃあそうだよ彼は君達二人にとって愛弟なのだから」
突き付けた刀を再び鞘に戻すと
結さんは再び椅子に腰掛けた
ギシッという音だけが部屋中に響く
机の上で腕を組み鼻先を指に乗せた
結さんは風間さんに背を向けたまま
その重い口を開いた
「興が冷めた・・・
しかし今のはこういう事ととろう
俺たちは本気だ
本気でかかってこないと勝つと」
鋳鶴が普通科に入ることを決めたのは私だ
だから辞めさせるの私の自由だ
お前達に私の鋳鶴はやらん
勝つのは私たち、魔王科だ
鋳鶴を管理するのは私だ
あいつは私の言うことだけ聞いていればいい」
風間さんは立ち上がり呆れ顔になった
眼鏡を左手でクイッと上げると真剣な表情になった
「人っていうのはさ?
随分面白い生物なんだよね?
痛い?と聞いたら痛くないという事もある
逆に痛くない?というと痛いと言う事もある
人は無理をするんだよね?
大丈夫?と聞かれて大丈夫だよというそれと一緒さ
今の僕には望月君に足掻いてほしいと思っていると僕は悟ったんだよね?
私の言うことを聞かせたいだけれど彼は思い通りになる筈がない
それは君が一番知っている筈だよね?
演技が達者なのは君の方だと僕は言うよ?
でも安心してほしい
彼は絶対に君の前に立ちふさがる
弟としてではなく1人の普通科生徒として
体育大会に僕らと優勝する為に
だから彼は面白いんだよね?
1人の人として
家柄とか家族とか異能とか関係なく」
「言いたい事はそれだけか?
話が終わったら帰ってもらえないだろうか
私にはまだ仕事が残っている」
先ほどまでピシッとしていた制服をだらけさせた
再びシャツを出し少し胸元を開けている
「それじゃあ僕は帰るとするよ?
あと条件として体育大会決勝戦はあと2週間後にしてほしいんだよね?
まぁお願いします?」
「それぐらいなら全然構わん
後で大会本部に連絡を取る」
そう言うと風間さんは窓から飛び降り
普通科の会長室に向かった
ーーーー中央保健室病院ーーーー
「会長!
どこに行っていらしたんですか!
ふざけないでくださいまだ貴方は怪我人なんですよ!?」
病院内に設置されている公衆電話で雛罌粟さんは連絡をとっています
看護師さんの静かにしてくださいという声なんて今の怒鳴り声の前に
聞こえるはずがありません
「雛罌粟?
あ~傷なら心配しないでね?
僕は全然平気だからね~?
それとみんなに体育大会は2週間後
トレーニングとか練習とかしておいてね~?
とか伝えといてね?僕はちょっといきたいところがあるから切るね?」
ブツッ!という音と共に風間さんとの通話が切れた
雛罌粟さんが大きなため息をつく
すると後ろから雛罌粟さんの肩を高橋さんが叩いた
「コホンッ!
雛罌粟さんここは病院なんですから・・・
皆さんは確かに英雄視とかされていますが
此処は学園内とはいえ公共の施設なので
そこんところを黙認してください」
雛罌粟さんはよく周りを見回してみる
視線がほとんどこちらを向いている
先ほどまでのあまりにも大きな自分の怒鳴り声を思い出すと
雛罌粟さんは耳まで赤くしてその場を高速で立ち去った
「普通科って・・・
頭がいい人もおバカなの・・・・?」
高橋さんは頭の中に疑問を残したまま自分の部屋に向かった
ーーーー魔王科拷問部屋?ーーーー
今日の朝に捕らえられてしまった鋳鶴君、
もう日は落ちかけていて夕方になっていました
きっと今頃彼はとんでもない拷問を・・・
「はい鋳鶴く~ん
大きくお口を開けてね~
はいあ~んして」
「へっ!?
いやっ!自分で食べられますから!
明乃さん!いいですって!」
されていませんでした
非常に腹が立ちます
こっちはどんだけ心配しとるかわかっとんのかー!
ってくらい腹が立ちます
鋳鶴君は現在結さんの部屋の隣で豪華なディナーを
明乃さんに食べさせて貰っていました
ちなみにディナーはオムで包んだライスです
しかし羨ましい事!私も食べさせてほしいですよ!
あ~んは男の特権ですよ!?
それにしてもあのデカメロン!あれは凶器ですよ!?
あのデカメロンを食べさせてほしいぐらいですよ!
すみません自重します紳士の皆さんも自重しましょうか
とにかくそんなでかい乳を眼前にした鋳鶴君はご飯どころではありません
もう微妙にブルンブルン揺れてますよ!?
鋳鶴君は明乃さんのあ~ん責めに色んな意味で負けてしまい
口を大きく開いてあ~んしてしまいました
何なんですかこの駄目主人公っぷりは!
お母さんに知らない人から貰った食べ物食べちゃ駄目って教わってねぇのか
あぁぁぁぁぁん!ってくらいにすんなりトロトロフワフワなオムライスのオムの欠片が
お口に入りもぐもぐして鋳鶴君はごっくんしました
「おっ・・・美味しいです・・・」
照れくさそうに顔を赤らめてモジモジする鋳鶴君、
思春期の女子かこらぁっ!ってツッコミたくなりますが我慢してください
「あら嬉しいわ
心を込めて作ったの♪
お口に合ってくれて光栄だわ」
明乃さんは両胸に備え付けられているデカメロンとポニーテールを
ユサユサ上下にさせながら喜びをあらわにしていた
そのユサユサしているデカメロンを見て鋳鶴君の目は恐ろしい程に充血している
「将軍の指示だ
貴様など殺したい時に殺せている
それに将軍が拷問も抹殺もするなと言うんだから
抹殺もしないし拷問もしないだから今は指示に従って
私たちは不本意同然に貴様のメイドをしている
今すぐに私は貴様を冥土に送ってやりたいがな」
小さく鋭利なナイフを取り出し
ライアさんは鋳鶴君を睨み付けた
鋳鶴君はあまりの気迫に押されてしまっている
そんな鋳鶴君を明乃さんは大きな胸で包み込むように抱きしめた
あまりにも急な展開に挙動不審になる鋳鶴君、
明乃さんは天真爛漫な笑顔を振りまいている
「もぅライア~?
駄目よ?望月君は一般の子なんだから
ねぇ?でも可哀想ね一族が素晴らしくて自分だけ・・・
劣等感とか葛藤感とか無いの?」
「特にはありませんよ?
それは仕方ない事ですし
僕はその現実を受け止めて一応生きてますし・・・
それに両親が両親ですしね・・・」
鋳鶴君は明乃さんの優しい質問に自然に答えてしまっています
明乃さんはずっと笑顔で話を聞いてくれています
ライアさんはずっとムスッとしていますが
鋳鶴君がそう言うと明乃さんは鋳鶴君をもっと強く抱きしめました
あぁ・・・鋳鶴君と変わりたいです・・・
「偉いわね・・・
君も魔王科に来るべきだったのかもしれないわね・・・
でも此処は女の子しか居ないの
先生も生徒もみんな女の子、
多分今、魔王科には望月君しか男の子は居ないわね
此処は言ってしまえば花園ね
でも結の帝国と言ってしまえば帝国
真実を言うと世間的に可哀想な女の子しか居ない」
「世間的に?」
「そうまぁ世間的にというか様々な可哀想な女の子だけが集まるの
例えば・・・強姦魔や酷い痴漢にあった子、
戦争の兵器として作られた子、
親に捨てられた子
魔女や悪魔と言われ世間から見放された子
ご令嬢やヤクザとかの家に産まれた子、
迫害や家が貧乏で勉強出来ない子
色んな子が居るわ
それを結は我が子の様に救うの・・・
自分もその1人だからかも知れないわ」
「そうなんですか・・・」
「だから望月君は男の子だから注意しなきゃ♪
男嫌いの女の子も通ってるから抹殺されちゃうかも知れないわ♪」
ニコッと微笑む明乃さん
軽く言ってますが鋳鶴君は開いた口が塞がっていません
「あっでも男の子は確か1人だけ居たわね
ねぇ?ライア?」
「シャルアの事か?
まぁ奴は男だが女みたいな不思議な奴だ
でもニューハーフでは無いと思う
まぁ貴様を殺せる力は彼にもある
しかし私はあいつが嫌いだ
飯だけが取り柄の国生まれだからな
おっと・・・私は将軍に呼ばれていてな
明乃後は頼んだ」
壁にもたれていたライアさんは渋々答えると
よっこらせといった感じで重い腰を上げ部屋を去った
「彼女はいつもあんな感じなんですか・・・?」
鋳鶴君が恐る恐る明乃さんに質問をする
「そうねぇ・・・
ライアがいつもあんな感じなのは
元軍人だからだと思うわ」
「元軍人?」
鋳鶴君は頭の上に?を浮かべ
腕を組んだ
「彼女は人間兵器だったのよ
左目に眼帯しているでしょう?
あれは生まれつきではなくて
軍に植え付けられた目を隠す為につけているの
結がそう言っていたわ・・・」
「それは・・・どこの軍ですか?」
鋳鶴君の口調が少し強くなったのを
明乃さんは少なからず感じた
そして彼の目を見るとほんのりと赤に染まっている
髪は少し白みを帯びて銀髪になりかけている
「なぜそれを聞くの?」
「それを聞いてじっとしていろと?」
「いいえ?
でも何で望月君は怒っているのかしら?」
「僕は人間兵器とか魔王とか怪物が嫌いです
自分が魔王だから言うなとかじゃなくて
そう言う風に呼ぶ人達が嫌いなんです
そしてその人達ならまだしも・・・
そういう事をする人達を許せない・・・」
「そういう事をする人達?」
「人間兵器や怪物と呼ばれてしまう人を作る人たちが・・・」
鋳鶴君の髪が跳ね上がると
飲み物の入っていたワイングラスが音をたてて割れた
「今の僕が魔王になったのは幼い頃に生かせる為に母がした施しです・・・
それは仕方が無いことです
でも人間兵器や怪物は違う・・・
薬や違法な手術によって作られているから
そしてその人達を利用して戦争や略奪を起こす!
利用するだけ利用して捨てるときはまるでゴミの様に捨てる!
僕はそういう人たちだけは嫌いなんです・・・
お節介だとは思います・・・
でも彼女の目がおかしいのならそれを治してあげたいんです・・・
僕は・・・」
鋳鶴君が俯くと明乃さんが鋳鶴君をそっと手をさしのべ
鋳鶴君を抱きしめた
「貴方はまるでマザーテレサみたいな人ね
困った人はほうっておけない優しい人なのね
貴方が魔王だなんて信じられない・・・
神様がいたとしたらなぜ貴方を魔王にしたのかしら
ねぇ望月君、見せてくれないかしら」
「えっ!?
なっっ!何を!?」
明乃さんの手が鋳鶴君をさすっていく
鋳鶴君はイヤらしくさわられ思わず吐息が漏れている
どんどん明乃さんの手は鋳鶴君の思春期の心を弄ぶ
そして鋳鶴君のお腹の上に座ると
「さぁ・・・
見せて、そして教えて頂戴、
望月君の全部を・・・」