第40話:魔王と第一覚醒
再び死にかけた鋳鶴君、
しかしそれは魔王になる為の布石
そして魔王の力とは法衣が意味するものとは!
まだまだいきます40話!
ーーーースタジアム南西側ーーーー
「はい・・・はい了解しました
現状待機ですね・・・?」
生徒手帳・・・では無く
自分の力でマスター虹野瀬と交信する偽沙綾さん
鋳鶴君にはまだ対魔の鎌が刺さっており起きる気配すら無い
血だまりが出来ていて脈も止まっている
しかし死んでいる気はしないといってもいいくらい生気を感じる
彼女は目にした彼の左胸に蒼の炎が揺らいでいるのを
そしてそれは蒼い閃光と共に現れた
閃光は円柱となり瓦礫で埋まってたまたま出来た空洞から
天へ天へと蒼い円柱炎はあがった
そして蒼い円柱炎の炎はみるみる小さくなっていく
円柱が無くなり偽物の沙綾さんは天井を見た
そこには大胆に「魔」と書かれた白いマントを羽織り
髪は銀髪にそして左胸には蒼に光る炎が迸っていた
「さぁ・・・
偽物、対魔の鎌はもう僕には通用しない
まぁ可哀想だけれど」
そう言うと鋳鶴君は空中から地面に降り立った
神々しさが鋳鶴君を取り巻き直視できないほどに蒼の炎が輝いている
それに先ほどまで左胸に先ほどまで突き刺さっていた対魔の鎌は
彼の右腕に確かに握られており対魔の鎌は彼に触れられるとみるみるうちに腐り落ちた
「対魔の鎌が・・・!」
「もう今の僕に君の持っていた鎌は効かないし
白魔法も強力な魔術じゃないと僕に傷すら与えられない
まだ戦う?それとも命乞いして勝負を捨てる?」
「命乞いをするくらいなら・・・
私は私の役目を果たすま・・・」
彼女が話し終えるまで彼は待てなかった
その前に自分の右手が動いていた
彼が彼女の前に立つと彼女は跡形も無く消え去っていた
ボルト、ネジなどを一片も一本も残さず
「君はまた作って貰える・・・
死者を冒涜するのは止めて欲しい
これを大将に言わないとねさぁ・・・行こうか」
そう言うと魔王はマントを一度回し背中に戻すと
神宮寺寿の居るこの場よりも50mも離れた南西側に向かった
ーーーースタジアム北部屋ーーーー
「やっぱり・・・つぇぇ・・・」
左手に炎を灯したまま疲労が溜まり疲れ果てている赤神君
目の前の炎使いの男はまだ仁王立ちしている
「もう無理だろ?
所詮てめぇは普通科なんだよ!
駄目人間と吹き溜まりなんだよ!
第一、普通科は必要ねぇんだよ!
消えちまいな!あばよ!」
火が燃え上がるように火々ノ縢の髪は逆立っている
右手と左手には炎が蓄えられ音をたてながら燃えている
彼は両手を自分の頭上にあげてそこで炎を合わせた
「まぁ~だとどめには早いんじゃねぇの?」
彼が炎を集結させていると城屋誠が現れた
彼は今は力を解放させていないのか先ほどとは違い
赤い身に纏われていたオーラが無く背中に「鬼」の一文字も無い
「あぁ!?てめぇからぶっ殺してやろうかあぁん!?
普通科なんて雑魚の塊!俺1人で充分だっつうの!」
火日ノはそう言うと城屋誠は鬼と言う文字を背中に漂わせ
火日ノの間合いに入ったその間、約0.5秒
そしてさらに0.5秒全力で右腕を振り抜き
全力で振り抜かれた右拳を彼の顔面に直撃させた
「ちっ!
炎の鎧みたいなの着けてたか!
やっぱり卑怯だなてめぇらは!どのみちこんな事になるかと思ったぜ
でも言っとく普通科は雑魚くねぇし魔法科よりも強い
俺が言うんだから間違いないぜそれともう一つ
まだ「鬼」の力みたいなやつの操作方法を俺はしらねぇ
だから加減は出来ねぇしそろそろエネルギー切れだな
もう少してめぇら矛盾コンビとの戦いを楽しみてぇが相方はのびちまってる
相方が伸びてるんだ・・・てめぇはどうすればいいか分かってるよなぁっ!!!!」
「うわっ!やめろぉっ!」
氷室君の堅い氷魔法の鎧も彼の前では無意味
鎧は粉々に砕け散り周囲には氷の結晶が飛び散った
「城屋さん・・・さんきゅ・・・」
「いいって事よ!
俺もむかついてたしな!
それにてめぇもむかついてたろ?
どれにあとはあのバカが片付けてくれるさ
俺たちは此処で昼寝でもしてようぜ」
「そうっすね
はぁ~あ・・・疲れた」
そう言って二人は目を閉じ瓦礫の上で居眠りを始めた
ーーーー普通科本陣ーーーー
「さぁ・・・勝負は全く分からなくなった!
普通科のポーンは全て倒れ魔法科もクイーンとキング以外は全てとられた
確かに僕のルークは取られた
でもね僕の一つのポーンは今、たった今、ナイトになったよ
将棋で言う成金的なあれだね」
天に伸びる蒼い光を見ながら
風間会長は両手を広げて言った
「成金ね
それはチェスには無いわ
でも普通科のキングはもうボロボロよ?
差詰めチェックメイトという所かしら?」
虹野瀬さんが妖しい笑みを浮かべたのを見ると
風間さんはそれを見て笑い声をあげた
「確かにそうかもね?
でも負けないだってまだ僕には能力を使える体力が残されている
MPよりも僕の呪文はHPを消費するのさ
そして僕はこう言おう
「僕の大将の証は普通に壊れない」
今の体力ではこれが限界だ
でも君が彼を・・・望月君を倒せば君らの勝ち
君らが望月君を倒せなかったら僕たちの勝ちになる
僕の大将の証は壊れなくなったからセンサーにも反応しない
君達は天井や拡音機、監視カメラは破壊できても
大将の証の中のICチップは壊せないようだね
そして彼はもうポーンではなく立派なナイトになった
ここで僕は
「僕が死なないのは普通」
と言う
こうして君は僕を殺せないし僕は現時点では死なない
体力が尽きれば効力は消えるかもしれない
だけれど・・・時間稼ぎにはなる
そして・・・最後の仕上げだ・・・
「君の大将の証は君の玉座にあるのが普通だよね?」
こうして僕はここで力尽きる体力を・・・残してね・・・」
言いたかった事を言い終わると普通科の生徒会長はその場に倒れ込んだ
自分が先ほどまで首から下げていた大将の証は消え風間さんの大将の証は壊せなくなっている
「いきな真似をするものね
でも好いわ、きっと私が勝つから
魔王と言ってもまだ完全じゃないのなら私たちにも勝機はあるもの
それに大将の証がなければ私たちの負けは明白だから私は貴方を狙えない
流石ね普通科の圧倒的普通者さん」
そう言うと虹野瀬さんは転送魔法を使い魔法科本陣に向かった
ーーーースタジアム南西側ーーーー
「あらごきげんよう
魔王になる決意はしたのかしら?」
神宮寺さんは鋳鶴君を見かけるとスカートを両端を持ちペコリとお辞儀をした
それを見て鋳鶴君は固く拳を握りしめた
「黙れ上辺っ面
正直な態度を取ればいいと僕は思います
他人を騙して勝とうなんてどうかしてますよ魔法科の皆さんは」
「そうかっかせずに深呼吸して下さいません?
暑苦しい男性は嫌われましてよ?」
神宮寺さんが鋳鶴君をなだめる
しかし鋳鶴君は自分の怒りを沈ませようとしてくれた相手の服を
目では確認出来ない速度でその服の裾辺り全体を破り裂いた
「僕は本気ですよ
それに今はどんな魔法でも使えそうだ
僕はあなた方を許すつもりは微塵もない
分かりますか?
大事な人を失ってその人と再会できたけれど
その人が自分の敵の味方だったら
そしてその人が機械だったら・・・
今更反則がどうとか・・・違反したどうでもいい・・・
お前等みたいな奴等を・・・僕は許せない・・・!」
鋳鶴君が大きな声を出した途端
周囲の瓦礫が浮き数メートルほど上昇すると空中で爆ぜた
瓦礫は小さな石の破片になった
「場の空気をも変える・・・
これが魔王のなれかけ・・・?
冗談ですわ・・・これで魔王の血が半分しかありませんの・・・?
私は本当にこんな人間とはいえない人間を敵にまわしましたの・・・?」
神宮寺さんは足がすくんでその場から動けなくなっている
そんな彼女を見て鋳鶴君は手をさしのべた
「降参してください・・・
僕は出来るだけ・・・出来るだけ戦いたくないし
それに女性を相手になんて出来ません・・・」
しかし彼女は鋳鶴君のさしのべた手を振り切り魔道書を開いた
見構える鋳鶴君しかし見構えるのが遅かったのか
それとも彼女の詠唱が早かったのか鋳鶴君は黒球によって吹き飛ばされ
壁に背中を強打してしまった
背中を強打しあまりもの吐血する鋳鶴君
そんな鋳鶴君を見て彼女は冷たい視線を向けていた
「なぜですの?
貴方は魔王なのになぜそこまで人に優しくですの?
考えられない!なぜ!どうして!
私に手をさしのべても私はその手を握らない!
貴方にも分かったでしょう!
それになぜ貴方は私を攻撃しませんの!?」
神宮寺さんが怒声をあげると鋳鶴君は再び立ち上がった
「貴方を攻撃して何になるんですか・・・!
手をさしのべても意地でも僕の手をとらないと言うのなら・・・
僕のさしのべた手を僕が無理矢理でも握らせる!
そうでもしないと貴方みたいな頑固者は降参してくれそうにない」
「だから何ですの!?
そう言われても握らないと決めたら握らない
それが私!神宮寺家7代目頭しゅ・・・」
神宮寺さんは一瞬目の前の光景に疑いを覚える
なぜなら先ほどまで自分から20m先にいた鋳鶴君が
瞬間移動でもしたのか自分の目の前にいて自分の手を握らせている
なぜだか瞳から涙がこぼれ落ちる
敵の手を握っているそれに敵は魔王
自分より下等な普通科の生徒で目立った家の生まれでもない
そんな男に手を握られて涙を流している
久し振りに触れた人の温かさ自分に足りない物をこの男は持っている
「どうして・・・」
あまりに急な事に驚きが止まらない
足は震え自らの眼前の敵も見えなくなっている
「えっ!?
いや・・・う~ん・・・
神宮寺さんはこんなところで戦う人じゃないと思って・・・
まさか泣いちゃうとは思わなかったごめんね・・・?」
「なぜ私に手をさしのべますの・・・
私は貴方の敵!
不正を行い!あなた達を危険に晒しあなた達を下等と言ったんですのよ!?」
そう言う神宮寺さんを見て
鋳鶴君は屈託の無い笑みを見せた
「だからなんですか?
それをいちいち言ってたらきり無いですよ?
反則なら普通科もたくさんやってますよ?
不正もしてますし僕等の会長もあなた達をあなた達ぐらいバカにして貶しています
ただそういう感情が表に出てないだけですよ
僕は戦うのが本当に嫌いなんです
喧嘩もあまり好きじゃないですしそれに人と競うことも嫌いです」
神宮寺寿は思った
なぜこんな優しいお方が魔王なのだと
そしてその考えは自然と口から出ていた
「なぜ・・・貴方なんかが魔王と呼ばれているのか・・・
興味深いですわ・・・神様も分からないものですわ・・・
こんなにも優しいお方が魔王だなんて
なんだか拍子抜けしちゃいましたわ・・・」
拍子抜けした上に腰を抜かした神宮寺さんは瓦礫の上に座り込んでいた
それを見て鋳鶴君は神宮寺さんを両手で優しく抱き上げた
「へっ!?」
鋳鶴君の行動に驚く神宮寺さん
しかし鋳鶴君は魔法を使って瓦礫の破片を集合させ岩で出来た石椅子を作った
破片の鋭利な部分は削がれ市販で売っている椅子よりレベルの高い椅子が完成した
そして鋳鶴君はその椅子に神宮寺さんを優しく降ろす
降ろした時神宮寺家7代目頭首の顔は秋に木に茂る紅葉よりも赤くなっていた
「様・・・」
「へ・・・?
椅子大丈夫!?
何か刺さったりしてないよね!?」
「違いますわっ!」
「へっ!?」
そう言うと神宮寺さんは鋳鶴君に抱きついた
そして彼女は再び鋳鶴君の顔を見て頬を染めた
そしてその表情のまま彼女はとんでもない事を口にした
「私を・・・貴方の奴隷にして下さいまし・・・」
「はっ・・・?」
あまりの発言に開いた口が塞がらない鋳鶴君
そんな鋳鶴君の表情を見ずに彼女は再び話を再開した
「私が貴方様に使えれば
危機は広がりませんわ!それに私は便利です!
普通科の誰よりも使えますわ!
それに私はいつでもあなた様の為に命を捧げます!
何もかも捧げます!富!地位!名誉!処女!何でもお捧げいたしますわ!」
「えっ・・・?
いいよ!悪いよ!
それに処女は・・・一番大切だから!
僕なんかじゃなくてもっといい男性に捧げなよ!
それに奴隷なんかじゃなくてお友達から!ね!?」
「あぁ!なんてお優しいのかしら・・・
魔王様・・・いいえ!鋳鶴様っ!一生着いていきますわ!
だから私の事を・・・!」
神宮寺さんが何か言いかけると
鋳鶴君は神宮寺さんの唇に右手の人差し指を当て
神宮寺さんに話すことを止めさせる
そしてキスしてしまう距離ぐらい近くに寄り
「寿・・・
それ以上言うと本当に奴隷にするぞ?
それが分かったならその椅子に座っていてくれ
君は僕には勿体ないぐらい綺麗だし頭もキレる
だから僕の事は様付けとかしなくていいし呼び捨てでも構わない
それに君の力は僕の為じゃなく魔法科や陽明学園の為に振るってくれ
分かったね?」
鋳鶴君がそう言うと彼女は石の椅子の上で固まったまま頬を赤く染めた
そして彼は立ち去り魔法科会長である虹野瀬縒佳がいる魔法科本陣に向かった
「さぁ・・・来なさい・・・
成金魔王・・・
自分の存在が微塵にも思えるほどに
私が叩きのめしてあげるわ
貴方の無力さを教えてあげる
そして普通科は終わるの
貴方と私は奴隷と主人の契りを交わして
私の禁忌魔法がトドメとなり貴方は私の奴隷になるのよ
普通科中等部3年、望月鋳鶴君」
虹野瀬縒佳は妖しい笑みを浮かべると
白魔法を使うための魔法陣を機動させた
魔王を倒すために
普通科を完膚無きまでに叩きのめす為に
そして・・・
魔王を奴隷に自らの野望の為の駒にする為に
「さぁ・・・
魔法科と普通科のナイトとキングの
愚鈍と高貴の魔王と白魔術師の
最終決戦、始まり始まり」
そう言うと彼女は魔法陣を完成させ
魔道書を手に取りそして開き詠唱を始めた
更新あいたかな・・・?
四でいただけると嬉しいです!