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優しい魔王の疲れる日々  作者: n
優しい魔王の疲れる日々5
43/94

第39話:魔王と有町沙綾

倒れる魔王、覚醒した鬼

奮起する矛盾、覚醒した鬼を目の前にし焦る白魔道士

そして黒魔道士対圧倒的普通者

そして優しい魔王は左胸を刺され地に伏せていた






ーーーー普通科本陣ーーーー





鋳鶴君が刺されてすぐ普通科本陣では激闘が繰り広げられていた

倒れた二人を背にしいつもは駄眼鏡と呼ばれている男が奮戦していた

本陣では火球、氷球、雷球、黒球、白球、風球など様々な魔術が放たれている

それを普通科会長は全て言葉を武器にし様々な魔法球を消しきっている


「貴方に耐えられるかしら

この無数の魔法球、それに私は会長よ?

一撃でも攻撃を受ければ普通なら倒れるはずなのだけれど

やっぱり一筋縄ではいかないわね」


「言っておくけれど一撃も当たってないし当たる気もない

僕は勝ちに来てるんだだから負けないし負けられない

大義名分とかは一切貰っても嬉しくない

この9人で勝ちたいんだよね

でも君を相手するのは骨が折れそうだ

というかもう折れているのかもしれない」


「貴方の何を戦利品にしようかしら

そうね最高の物にしましょう貴方の命または首を貰うわ

そして明日の新聞の記事はこうなるの


「陽明学園普通科生徒9人死亡

内会長、瓦礫の中から胴体が出現、首元は捜索中」


素晴らしいとは思わない?

そして普通科は葬式をするのよ9人分のお葬式を」


そう言うと魔術書を閉じ

自らのスカートを裂いた

すると足に手を添え詠唱を始めた


「私の魔法は飛ばすだけじゃないの

自分に付加も出来るのよだからこうして風の魔法を足に付加して

足の速度を何倍にもあげて・・・」


詠唱を終え、添えられていた手を離すと

両足は渦巻く竜巻に包まれ地面に足を踏み込む

そして


「・・・!

君は僕のっ・・!」


「遅いわよ・・・

全然遅いまるで止まっているかの様に思えたわ」


白く細い足に添え付けられたようにある膝が

普通科会長の顎にまるで釘を打ち付けるハンマーの様に蹴り上げた

いつも周りに笑顔を振りまく表情から鮮血が流れていた




ーーーースタジアム北部屋ーーーー


「くっ・・・おい!お前等!大丈・・・・!?」


気づくと周囲は瓦礫に埋まっていた

しかし自分の前には緑色に発光する壁が無数の瓦礫を防いでいた

視線を左側にやるとそこには自分の幼なじみが身体から血を流して横たわっていた


「桧・・・人・・・?

よかったぁ・・・いつもの・・・桧人だぁ・・・

大丈夫・・・・?」


少女はいつも笑っている

どこでもどんな所でも自分が傷つくことがあってもいつも笑っている

今日も笑っているが鮮血を滴り落としている

彼女の服には血がこびり付きまるで水たまりのように血だまりが出来ている


「おい!詠歌!

お前!どうして!おい!おい!」


「大丈・・・夫・・・!

この通り・・・!全然っ・・・!」


いつもの笑みから悲痛の表情に変わる

彼女とは幼稚園からの付き合いという共通点がある

それ故に分かることがある


「あぁ~あ・・・

何が私が守るだよ~

全然守れてねぇじゃん1人守るために全滅ねぇ・・・

本当雑魚共がやる事はわからねぇなぁ!

まぁいい運動にはなったあとはてめぇだけか

氷室どうするぅ~?」


「お前にくれてやんよ!

これ異常雑魚の相手は疲れるだけだ!

ったくよぉ・・・!

神宮寺・・・あの野郎・・・わざと雑魚共を掴ませやがったな・・・!」


激情する矛盾する氷と炎が少年の激情を燃え上がらせる

級友の三河歩と荒神麗花も倒れていて寸分とも身体は動いていない

全員に傷が嫌と言うほど入っているいくつか手足も折れているだろう

これを見たら悲しむ者が普通科にどれほど居るか少年は

愚鈍のふりをした自分の脳をフルに回転させた

見た目は不良、頭脳も愚鈍それが赤神桧人のいつもの姿

しかし彼は愚鈍でありながら策士である

球技大会での相手の腹を半強制的に下し乱闘を起こす作戦を考えついた

すなわち彼は矛盾している愚鈍ながらの策士それはかけられぬもの

しかし赤神桧人の最終成績は9人の中でも上から数えた方が早くなる



鈴村詠歌


国語:100


数学:100


社会:100


理科:100


英語:100


保健体育:100


音楽:100


技術家庭科:100




雛罌粟涼子


国語:100


数学:100


社会:100


理科:100


英語:100


保健体育: 96


音楽: 98


技術家庭科:100



風間一平


国語:100


数学:100


社会:100


理科:100


英語:100


保健体育:100


音楽:100


技術家庭科: 48



赤神桧人


国語:100


数学:100


社会:100


理科:100


英語: 18


保健体育: 84


音楽: 68


技術家庭科: 68



三河歩


国語:100


数学:100


社会:100


理科:100


英語: 28


保健体育:100


音楽: 48


技術家庭科: 14




土村影太


国語: 18


数学: 29


社会: 13


理科:  0


英語:  2


保健体育:100


音楽: 24


技術家庭科:100



望月鋳鶴


国語:  9


数学:  3


社会: 64


理科: 24


保健体育: 42


音楽: 22


技術家庭科:100



荒神麗花


テストを受けていないため欠席扱い



城屋誠


テストを受けていないため欠席扱い


という順番になっている

彼は自分の事を自分で愚鈍と言う

なぜなら賢い自分に嫌悪感があるからそれは彼しか知らない

そして今、数秒前まで愚鈍だった脳が鬼才が如く頭脳に変わる

なぜなら悔しいから

なぜなら相応しくないから

なぜなら目の前のむかつく連中を倒したいから

なぜなら鈴村詠歌に借り、というものを作りたくないから


そして朦朧とする意識の中

自分の両手で自分の頬を力一杯叩いた

そして二、三回右肩を回す


「さぁて

まぁ俺は怒るつもりは無い

こいつらの弱さが悪いからな

といつもなら俺は言うだろう

今日はちげぇ

ご託宣を並べるのは止めだ

久し振りに頭の運動でもするか!」


「火日ノあの雑魚はくれてやんよ

さっさと終わらせろよ?」


「こんな雑魚は10秒もいらねぇ

5秒程度で充分だろ」


そう言うと火日ノは火炎魔術書を開いた

しかし火炎魔術書を開いたとたん

赤神桧人は覚え立ての火炎魔法の爆発を利用し

足元を爆発させ勢いをつけしばらく飛んだ所で右手を振り下ろした

火炎魔法の爆発の勢いがついた右手は寸分の狂いもなく火日ノの右頬に命中させ

火日ノは向かい側の壁に殴りつけた


「さぁ

もうお前の阿呆臭い阿呆予言は終わりだ

さっさと立てよ戦いはこれからだぜ?」


ーーーー望月鋳鶴ーーーー


「うっ…

ここは…」


先ほどいた戦場とは違う

彼の周りには花園があり

小さな川がせせらいでいた

まるで天国のような景色が彼を囲んでいた

そして頭の下に柔らかい何かが添えられている感触が彼の視線を天に向けさせた


「鋳鶴…

久しぶりだね…」


そこには魔王がかつて愛し失った少女が

魔王を膝枕で天国の様な世界に迎え入れた


「沙綾・・・!?

ここは・・・!いったい何処!?

それに何で僕を刺したんだ!」


望月鋳鶴は見知らぬ世界に来た事に驚きを隠せずにいた

そして先ほどまで目の前の敵が見知らぬ世界で自分を膝枕をしている

しかし周りを見回してみる先ほどとは違い瓦礫や石片が一粒も一塊も落ちていない

それに砂埃も舞っていない上に自分の左胸に深く刺された対魔の鎌が刺さっていなかった


「鋳鶴・・・

やっと会えたね・・・」


少女は涙をこぼすと鋳鶴君を抱きしめた

鋳鶴君も目の前の有町さんに敵意が無いことを確認すると

自分から有町さんの背後に腕を回し有町さんをギュッと抱きしめた


「沙綾・・・

会いたかった

待ち遠しかった」


鋳鶴君の抱きしめる力が強くなると有町さんは鋳鶴君から身を引いた

すると先ほどまで笑顔を浮かべていた表情が一気に泣き顔に変わった


「鋳鶴はね

死んじゃったの・・・

私の偽物に心臓を刺されて死んじゃったの・・・

だから私と同じ世界にいて私とお話をしているの・・・

ごめんね・・・守ってあげられなくて・・・ごめんね・・・」


鋳鶴君は目を点にしたまましばらく現実を受け止められずにいた

自分の大好きな人が泣いているしかし何も言葉に出来なかった


「でもね鋳鶴・・・

うっ・・・ひっぐ・・・

鋳鶴に会えたのは嬉しいでもね・・・

鋳鶴はまだ生きてるの・・・」


「えぇっ・・・?

さっき僕は死んだって・・・」


「何でだろうね・・・

私にも分からないでも・・・

鋳鶴は此処で死んじゃ駄目な人なの・・・これを見て・・・

みんな闘ってる普通科の為に勿論鋳鶴の為もあるかもしれない」


「何で僕の為に?」


「この前、鋳鶴と土村君って子が魔法科で傷つけられちゃったでしょ?

だからそれでみんなあんなに気合いが入っているのかな・・・

いいな鋳鶴はあんなに良いお友達がいっぱい居て

嫉妬しちゃうな・・・」


頬を膨らませる有町さん

その表情を見て鋳鶴君には笑みをこぼした


「そっか・・・

でも魔法科のした事は許せないよ・・・

どうしてもね本当は殺してやりたい

沙綾を利用して僕を殺して天井を落としてカメラや拡音機を破壊した

そしてみんなが保健室病院に運ばれず血を流している」


「鋳鶴は優しいね・・・

でも殺すとか言っちゃ駄目だよ

鋳鶴が殺す~とか言ったら

みんな信じちゃうかもしれない

だから私と約束して、誰も殺さないって

そしていつまでも鋳鶴の大好きな人たちを大切にしてあげて

それが今の私のお願いだから

ここから出るとか鋳鶴と一緒にそう言うお願いじゃなくて

これは私の本当のお願い

だから戦って、みんなを守って、

大丈夫、私はいつでも此処で鋳鶴たちの事を見てる

だから・・・ねっ!」


鋳鶴君は沙綾さんの話を聞き終わると

やれやれというそぶりを見せ頭を2回掻いた


「沙綾には敵わないな・・・

分かった・・・約束する誰も殺さないよ

それじゃあ魔法科の人たちと同じになっちゃうからね」


「あとね神様から貰ったんだ」


そう言うと沙綾さんは

純白のスカートの腰辺りに付けられていたポケットから

何かの宝石が埋め込まれたペンダントを鋳鶴君に渡した


「これは?」


「神様が鋳鶴に渡せって

何か鋳鶴の意志と疎通して力になってくれるんだって

鋳鶴は神様にも一目おかれてるんだね!」


「へぇ・・・

じゃあ快く貰っておくね!」


鋳鶴君はペンダントを沙綾さんから受け取ると

自分の首の後ろに手を回しペンダントをかけた

ペンダントは蒼い光を放っていてとても美しく発光している


「もうそろそろ向こうの世界に帰れるのかな・・・

鋳鶴に久し振りに会えたと思ったらまた帰っちゃうんだね・・・」


沙綾さんが寂しさのあまりぐずりだすと鋳鶴君はそっと沙綾さんを抱きしめた


「大丈夫だよ・・・

いつでも沙綾が僕を見てくれてる

それにいつでも沙綾に会える気がするんだ

根拠はまったく無いけどね!

でも沙綾と別れるのはやっぱ辛いよ・・・

ここにいつまでもいたい・・・ずっとずっと・・・」


鋳鶴君の顔が俯き始めると沙綾さんはブチッ!

という音をたて鋳鶴君を突き放した


「もう!なっさけないなぁ!

そんなんじゃ魔法科の人たちは倒せないよ!

歩や凜に怒られるよ!


「何やってるんだ!情けないっ!」


ってさそれに私はずっと鋳鶴の側にいるから!

昔の鋳鶴みたいに堂々として胸張って!」


「もう!ずっと本当に変わってないね沙綾は!

もう良いよ!行きますよ!行けば良いんでしょ!」



「うん!それでよし!

行ってらっさい!

もう此処には来なくて良いからね!

絶対に来ちゃ駄目・・・だから・・・ね・・・」


沙綾さんが再び泣きそうになると

鋳鶴君は沙綾さんを再び抱きしめ頭を優しく撫でた


「あぁ・・・帰ってこない・・・

僕が居なくても寂しくて泣くなよ!」


「うっ・・・!うるさいっ!

泣いてなんかないからっ!

もう行っちゃえ!」


「じゃあね沙綾

今度お墓参りでも行ってくるよ」


そう言うと鋳鶴君は沙綾さんの目の前から消えた

消えた途端に沙綾さんの目に涙が浮かんだ

しばらく沙綾さんは大声を上げて泣き続けていた





ーーーー普通科本陣ーーーー





「さぁもう限界の様ね

飽き飽きしたわせいぜい次の一撃が限界でしょう?」


「いいや・・・?

僕は・・・待っているよ・・・

君の大好きなチェスで無いことが起きるかもよ・・・」


「それはどういう事かしら

貴方以外の戦力でましな人といえば・・・

ルークと貴方のキングしかないじゃない

あとはポーンよ全部捨て駒、ただの飾りのような物」


「いいや・・・

それは違う・・・チェスには無いことだよ・・・

つまり・・・」


風間君がそう言うとスタジアム南西側に蒼く大きな何かが天を突き抜けた

そしてそこに視線をやると「魔」とかかれた法衣を着た鋳鶴君の姿があった



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