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古代龍素材での装備注文にはご注意を!

作者: 日御碕 出雲
掲載日:2026/08/28

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火も受けつない頑丈な鱗を持つモンスターを素材に防具を作る。鍛冶屋はどうやって加工してるの?と言う疑問を基に1本書いてみました。


第5作目。

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古代龍エルザードの討伐から1年。


勇者モーリスは「古代龍素材の最強装備」を受け取る日を迎えていた。


場所は王都随一の鍛冶工房。

名工と謳われるドワーフの親方ブルーノが満面の笑みで勇者を迎える。


『おう、来たか勇者!』


「親方! ついに完成したんですね!」


『もちろんだとも!』


勇者の目が輝く。


龍といえば伝説の存在。

牙で剣を、鱗で鎧を、角で槍を作れば国宝級。


勇者は期待に胸を膨らませた。


親方はまず1本の剣を取り出した。


『これが新たなお前さんの新しい剣だ!』


「おお!」

勇者は受け取る。


見事な出来だった。


だが──

「あれ?」


『なんだ?』


「古代龍の素材はどこに?」


親方は柄を指差した。

『そこだ。』


「柄?」


『柄。』


勇者は見た。


柄頭についている5cmほどの飾り。

確かに古代龍の角らしきものが埋め込まれていた。


「え?」


『古代龍の角だ。』


「そこだけ!?」


『確かに古代龍で武器を作ったぞ。』


親方は胸を張った。

『嘘は言っておらん。』


嫌な予感がした。


勇者は次を見た。

「じゃ、盾は?」


『これだ。』


巨大な塔盾だった。

頑丈そうである。


しかし。


「親方。」


『なんだ。』


「古代龍素材は?」


『ここだ。』


盾の端を指差す。

装飾の紋章。

手のひらサイズ。


「それだけ?」


『古代龍の鱗だ。』


「薄っ!」


『世界最硬級だぞ。』


「そういう問題じゃない!」

勇者は額を押さえた。


「鎧は……?」


『おう!』

親方は立派な全身鎧を見せた。


銀に輝く見事な逸品。


だがもう勇者にも分かる。

「どこです?」


『留め具。』


「留め具?」


『留め具。』


肩当てを固定する小さな留め具。

そこに古代龍の髭が加工されていた。


『見事だろう?』


「どこが!」


『絶対壊れん!』


「誰もそこに耐久性求めてないんですよ!」

勇者は叫んだ。


「なんで牙で剣身作らないんですか!? 鱗で鎧作らないんですか!?」


親方は突然真顔になった。

『おい、勇者よ。』


「はい。」


『お前、古代龍の素材がどれだけ扱いにくいか知っとるか?』


「え?」


『牙は硬すぎて加工できん。』


「はい。」


『鱗は硬すぎて曲がらん。』


「はい。」


『骨は硬すぎて削れん。』


「はい。」


『火に入れても溶けん。』


「はい。」


『そして魔術師30人が過労で倒れた。』


「申し訳ありません。」


親方はため息をついた。


『結局な。』


『一番使いやすかったのが小物なんだ。』


「夢がない。」


『夢で武器は作れん。』


勇者は頭を抱えた。


「討伐したの全長3mぐらいの古代龍でしたよね?」


『そうだな。』


「素材余ったでしょう?」


『余った。』


「何に使ったんです?」


親方はにやりと笑った。

『見せてやろう!工房の奥へ来い。』


工房の最深部。

そこには巨大な作業場があった。


勇者は目を丸くした。

「なんですか、これ?」


見たこともない奇妙な工具が並んでいる。


巨大なノミ。

巨大なハンマー。

巨大なヤスリ。

巨大な万力などなど


どれも異様な存在感を放っていた。


親方は誇らしげに言う。

『これが古代龍製工具一式じゃ。』


「工具?」

勇者は嫌な予感がした。


「まさか・・・」


親方は大きくうなずいた。


『古代龍を加工するために作った。』


「何から?」


『古代龍から。』

 沈黙。


勇者は、数秒考えた。

そして言った。


「つまり?」


親方は説明した。

『古代龍の鱗を切るには普通のノコギリでは歯が立たん。』


「でしょうね。」


『だから古代龍の牙でノコギリを作った。』


「うん。」


『だが牙を削れん。』


「うん?」


『だからまず古代龍の爪でヤスリを作った。』


「待って。」


『だが爪を加工できん。』


「最初はどうしたんです!?」


親方は遠い目をした。

『それを聞くか。』


「聞きます。」


親方の目から涙がこぼれた。

『鍛冶師17人。』


「はい。」


『魔導師33人。』


「はい。」


『土属性職人40人。』


「はい。」


『全員で3日間かけて爪を1cm削った。』


「地獄。」


親方は巨大なハンマーを見せた。

『これが『龍砕き』。』


「おお。」


『古代龍の骨製。』


「すごい。」


『古代龍を加工するため専用。』


「なるほど。」


『これ1本作るために古代龍の骨を半分使った。』


「装備作れたじゃないですか!」


さらに親方は別の工具を見せた。

『これが『龍削り』。』


「ヤスリですか。」


『うむ。』


「素材は?」


『古代龍の爪。』


「剣何本作れたと思います?」


親方は聞いていない。

職人特有の顔で語り始める。

『特にこの万力は傑作でな。』


「素材は?」


『古代龍の顎。』


「顎。」


『噛む力を利用しておる。』


「生前と同じ使い方してる!」


勇者は工房を見回した。

ようやく気付く。


古代龍の素材がほとんど残っていない。

装備ではない。

工具になっている。


大量に。

とてつもない量が。


「まさか装備より工具の方が多いんですか?」


親方は胸を張った。

『10倍くらい。』


「10倍!?」


そこへ若い弟子が走ってきた。

「「親方ー!」」


『どうした!』


「「古代龍製のドリルが完成しました!」」


工房中が歓声に包まれる。

「「おおおお!」」


『ついに!』

『歴史が変わるぞ!』


勇者だけが置いてけぼりだった。


「そんなにすごいんです?」


親方は興奮気味に叫ぶ。


『これで古代龍の骨に穴が開く!』

職人たち大歓喜。


勇者は思った。

(そんな苦労してたのか・・・)


すると親方が肩を叩く。

『分かったろ?』


「ええ。」


『古代龍装備より大事なものがあったんじゃ。』


「古代龍製工具ですね。」


『そうだ。』

親方は満足げにうなずく。


『お前さんが倒した古代龍一体でな。』


「はい。」


『我々ドワーフの加工技術は100年は進歩した。』


「すごい。」


『だから礼を言う。』


親方は深々と頭を下げた。

勇者は少し感動した。


なるほど。


自分が倒した古代龍は、武器防具だけでなく技術の発展にも貢献したのだ。


そう思った瞬間。


親方が付け加えた。


『ちなみにお前さんの剣の柄に付いてる角。』


「はい。」


『あれ、本当はドリルの試作品だった。』


「返せぇぇぇ~~~!!」

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書いている最中に、勇者はどうやってこの頑丈な龍を倒したのだろう?と更なる疑問が・・・まあ、いいや。

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