【前日談】快進撃の裏で
補給基地の奪取は、ベルトランに確信を与えた。
帝国軍は脆い。
後方を裂けば、前線は自然と崩れる。
敵の拠点で十分な食事をとった後、
後方から逆に進撃して、敵を挟み撃ちにした。
突然の挟み撃ちに、敵のほとんどが降伏した。
さらに、帝国の後方が手薄になっているのをいいことに、
奪った村落を拠点に、王国軍はさらに奥へ進む。
帝国穀倉地帯。
今まで王国が侵入したことがない、だが帝国の食糧庫だった。
「ここを拠点に帝国を食い荒らせ」
ベルトランの声には、疑いがなかった。
勝利の連続が、判断を軽くする。
一方、近衛の再編に伴い、
進軍に途中から合流させられた騎兵小隊長ルークスは、
状況を冷静に見ていた。
知らない土地。
補給線のない行軍。
そして、現地調達という名の略奪。
「……これは、続かない」
彼が気にしたのは、民の怒りでも、倫理でもない。
いつ兵糧が尽きるか。いつ戻れなくなるか。
略奪は一時の延命にすぎない。
それを始めた瞬間、兵站は完全に死ぬ。
ルークスは、部隊を無理に進めなかった。
速度を落とし、命令を曖昧に解釈し、進軍を鈍らせる。
それは反抗ではない。
合理的な拒否だった。
その結果、ルークス他いくつかの小隊は
他よりも「成果」が少なかった。
勝ち続ける王子にとって、その慎重さは臆病に映った。
この判断の違いが、
やがてルークスを前線から遠ざけ、
王国軍内部に、静かな断絶を生むことになる。
前日談三話いかがでしたでしょうか
またなにかサイドストーリーや前日談などで
短いものが思いつきましたらこちらに追加しますが、
とりあえずまた簡潔としておきます。




