絶望の先にある光 ―― 「われらの推しは……」
1.鳴り響く歌声
「キュンキュンキュン キュンキュンキュン 。」
いきなり、コージが80年代アイドル風の振り付けで歌いだした。
その声に最初に反応したのは軍楽隊だった。
「うぉーーーーーーーーー、歌で負けられるかーーーーーーーー」
「アリア様~最高!!!!!!!至高!!!!!!!!!!!!!」
野太い声が司令部を、町中を駆け巡る。
それをみたコージが指揮を始めた
「キュンキュンキュン キュンキュンキュン 。」
「キュンキュンキュン キュンキュンキュン 。」
ズン、チャッ、ズン、チャッ! コージの指揮に合わせ、
正気を取り戻しはじめた軍楽隊が、
やけくそ気味にポップなリズムを刻み始めた。
そのとき、ヒルデガルドは一瞬ひるんだ。
「な、なんですの、今の。
た、確かに今までも勇気を振り絞って対抗する者はいましたは。
でも、それとはまったく違う何か。
彼らのえげつない思いをほん少しだけだけど、
感じることができました、、、、
い…いや…感じたというよりはまったく理解を超えたなにかでしたが……
あ…ありのまま 今 起こった事を話します……
ゆ、、、勇気の感情、、、かと思ったら思ったら、
いつのまにか妙な熱狂、しかもおぞましいセリフ…
何の感情かわかりませんし、何を歌われたのかわかりません
あ、、、頭がどうにかなってしまっているのではないでしょうか
軍歌とか民謡とかそんな高尚なものでも下賤なものでも全くない…………
もっと恐ろしいものの片鱗を感じます」
「ですが、私の神への信仰はそのような浅いものではございません。
神ならぬ人の身で対抗しようなど笑止ですのよ。
神の御心をお知り下さい」
さらにコージは続ける
「みんなー! 暗い顔してちゃ推しに失礼だぞー!
さあ、声を合わせて! 一緒に叫ぼう!
曲は『われらの推しはアリア様』!!」
コージは戦場の空気を読まない満面の笑みで、司令部の皆へ声をかけた
「さあみんなご一緒に! ハイッ!
『キュンキュンキュン キュンキュンキュン』」
その瞬間。 さっきまで「ごめんなさい」
と落ち込んでいた司令部が息を吹き返した。
ダリウスはものすごく困っている。
「鎧を着て、その振り付けは……」
ルークスは目をそらしながら
「おっと、馬、馬は大丈夫か」
と気づかないふりをする。
ミツキは顔を真っ赤にしながらうつむいていた
(この世界、かわいい衣装ないから嫌っていったのに)
地面にのめり込んでいたアヤが、
バッと顔を上げ、鬼の形相で叫んだ。
「前にも言ったけど、それは絶対いや!!」
「えーっ!? この状況でもダメ!?」
「この状況だからこそよ!
死んでも歌うもんですか、そんな似合わない歌!」
アヤの怒声が響く。
だが、その怒りのおかげか、
彼女の目からは濁った「絶望の色」が消えていた。
ハルトもミツキも、
そのやり取りを見て呆気にとられ――
そして、ふっと肩の力が抜ける。
「……ふふ。ブレないね、アヤちゃん」
「……あんなの見せられたら、
落ち込んでるのが馬鹿らしくなるな。
おい、コージ、もっとみんなが歌える歌でだな……」
2.コージの本気
コージは「ちぇっ」と舌を出して肩をすくめた。
「厳しいなぁ、歴女は。
……わかったよ。これなら文句ないだろ?」
コージの雰囲気が一変する。
おちゃらけたアイドルオタクの顔が消え、
指揮者としての真剣な眼差しが戻る。
「僕らの推しは、アリア様だけじゃない。
……この国そのものだ」
指揮棒が振り上げられる。
「行くぞ。――国歌『With Wisdom』2番と3番だ」
その瞬間――
歌が始まった。
王国軍の兵士が一人、続いてまた一人。
痛みに声を震わせながら、それでも歌う。
バラバラだった声が、徐々にひとつに重なっていく。
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二番:歩む王(King walks)
我らは支えん 歩む王
知恵ある声に 心寄せ
我らの願い 託しつつ
王は進まん 未来へと
三番:われらあゆまん(We walk)
われら歩まん 知恵友に
声を合わせて 国を成し
王・民ともに 隔てなく
明日へ進まん 共にいこう
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それは、アリアと民がともに歩む誓い。
血の滲むような時間の結晶。
アリアの声がなくても、
兵士たちの声だけで、巨大な波のように響き渡る。
要塞の壁が震えた。
ヒルデガルトは初めて顔を歪めた。
「……な……んですの……この……雑音は……?」
金色の光が揺れる。
神の歌が押し返される。
さらに歌は要塞都市にすむ人々と広がっていく。
街の家々が共鳴した。
土と石が震えた。
王国軍の、王国民の歌声が、ヒルデガルトの魔法を侵食していく。
「ありえない……
神が……私の声が……信仰が……負けるなんてこと……?」
ヒルデガルトの膝が落ちた。
精神の土台が崩れる音がした。
「なぜ……
あんな下賤な歌に……
なぜですの……
神よ……答えてくれくださりませんか……!」
しかし、もう神は答えなかった。
「わ……私の中の神は……
私の信仰は……死んでしまいました…………」
――静寂。
次の瞬間、要塞中に歓声が爆発した。
「勝ったぞーーーー!!」
「歌だ!!俺たちの歌が!!」
「アリア様ァァァァァ!!!」
コージは涙を拭い、泣き笑いで天を見上げた。
「……やっぱり……
俺の推しは……アリア様だ……!」
3.消えない恐怖
一方、狂戦士化していた兵士たちは動きを止め、
我に返ると全員、指揮官の号令を待っていた。
司令官グスタフが息を呑んだ。
「……馬鹿な。神聖魔法が負けた……?」
ヒルデガルトは地に伏し、震えていた。
唇はかすかに動くが、声は出ない。
神との回線が断ち切られた魔法使いは、ただの人間と変わらない。
「司令官! 精霊使い英雄も戦闘不能、古代語魔法も砕けています!
英雄全員、戦闘不能です!!」
兵士たちは恐怖ではなく、理解不能の沈黙に包まれた。
グスタフは唇を噛みしめた。
王国の戦力を侮ったわけではない。
そのとき、遠くで王国軍の鬨の声が上がった。
グスタフはついに決断を下した。
「ちっ、実績のない英雄に頼ったらこんなもの。
幸いこちらの損害はほとんどない。
いったん陣まで戻れ、体勢を立て直すぞ」
アヤがそれをみて安堵する。
「みて、敵が引いていく。これで私たちの……?
ダリウスが冷静に制止する。
「よく見ろ、本陣は動いていない。
それに敵は壊走していない。整然と引いている
ハルトがおずおずと尋ねる
「つまり……どういうことですか?」
ルークスは返答した。
「わからん。が、まだ敵はやる気だということ。
今までで明らかにこちらのほうが損害が大きい。
普通の戦力だけでも、こちらが不利だ。」
会議室は静まり返った。
4人は気づいた、これは終わりではなく始まりだということを。
あとがき
コージ「お、俺の本気で戦闘終わり、じゃないのかよ!眠れないじゃん!!」
左手に銃を付けた謎の宇宙海賊「知らんのか。戦闘が終わったら、戦闘が始まる。」
「だが、精神力を武器にするのはさすがだ。
俺の銃も精神力が燃料だが
みんなの精神力を束ねて撃つなんざ、
俺にはできん芸当だ」
左手に銃を付けた謎の宇宙海賊「次回 歌姫革命譚 なるか!逆転歌姫砲
オタク者チームによる逆転劇、見逃すなよ」
アリア「平和と愛の歌が許されるような日々を迎えられるよう、私も頑張ります」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。
もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。
たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。




