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煤煙の城壁 ―― 「環境破壊でごめんなさい」

1. 観測魔法の裏側

 少し時間はさかのぼる


「第一弓小隊 少し左」

「第二弓小隊 少し奥」


 ヴァルターの観測魔法は単にズームレンズの役割を

 果たすだけではなかった。

 視覚共有も10人まで可能であった。

 そこで我こそはと志願した若手エリートの10名の古代語魔法使いが、

 視覚共有した。


「風の精霊 シルフよ

 今から放たれる弓矢を遠くまで届けたまえ」

「全弓小隊、タイミング合わせろ。放て!」


 ヒュヒュヒュヒュヒューーーーーーーーーーーー


「「「「全小隊 目標正確に命中」」」」


「よし次探す。しばし待て」


 彼らは近くの凄腕弓兵に指示して、狙いを定めていたのだった。

 フリューアは100本の弓矢を通常の3倍もの遠距離に届けられるが、

 遠くまで見えない。

 また、狙ったところに飛ばせるわけでもない


 そこで、色違いの矢を打たせ、その矢がどこに飛ぶのかも

 確認することで、風の影響などを補正していた。

 小隊ごとに分けることで、確実に補正ができるようにしていたのだった。


 だが、多数の魔法使いが共有していたことがあだとなった。

 観測魔法――つまり巨大ズームレンズが破壊されて、

 視覚共有していた10名もの古代語魔法使いが退場した。



2.奥の手


 前線に響く、精霊魔法使いフリューアの怒号。

「目が見えなくとも、シルフは自然と混じらぬ敵意を感じて

 敵の気配を察知できる!

 凄腕のみでいい。弓兵5人、わが合図と同時に放てー!!」


 敵陣から見えたのはわずか五つの影。

 だが放たれた矢は、あり得ない軌道を描いた。

 風に乗り、壁を這い、角度を変え――


 城内のどこかの誰か を、確実に打ち抜く。


「なんだこれ……」

「どこから来てるんだ……?」


 背後の天幕では神聖魔法使いヒルデガルトが舌打ちした。

「精霊使いさん、いくら確実に当たるからって、

 誰かわからないのは、ちょっと地味ではございませんか?

 いつ終わるか、退屈ですわよ」


 フリューアが睨む。

「精霊が敵をすくめ上がらせている。恐怖という名の刃だ。

 お前の派手好きとは違う」


「はいはい。

 美味しいところは全部、あとで神が持っていきますことよ」


 そう言うとヒルデガルトは天幕の裏に戻り、

 そこでは女性の吟遊詩人が怯えながら歌わされていた。

「声が震えてますわよ。私の歌のようにうたえないのですか?

 できなきゃ……分かってますよね?」


 相手を見下した笑い声が、隣の天幕まで響いた。



3.対抗策


 一方その城壁上では――

 ミツキが震える手で合図を送る。

「……動かなきゃ……。この数なら!」

 ミツキが仕込んでおいた城壁上の煙幕発生装置に

 火をつける指示を出すために前に出る。

 仕込んでいた非常用の壺へ火を入れた。


 次の瞬間――

 ボンッ!

 城壁上に並んだ大量の壺から、真っ黒な煙が噴き出した。


「……環境破壊でごめんなさい。

 でも、背に腹は代えられないの!」


 タールと硫黄が混じる濃密な黒煙。

 風下へ流れ込み、前線を覆い尽くす。


 フリューアは鼻で笑った。

「煙幕? シルフの前では無意味だ」


 再び弓を放たせる。

 だが――

 ひゅっ……!

 矢は煙に触れた瞬間、進路を逸らし、遠方へすっ飛んでいった。


「……え?」


 フリューアの顔から血の気が引く。

「シルフが……言うことを聞かない?

 なぜだ……煙ごときで……!

 なぜあの煙を嫌う?」


 何度かやっても結果は同じ。


「「「??????」」」

 それはミツキをはじめとした王国側の兵士も同じであった。

 むしろ精霊の動きがわからない分、

 なぜ矢がいきなり見当違いの方向に飛び出したのか

 全く理解できていなかった。



4.大技炸裂


 フリューアは焦りを誤魔化すように杖を突き上げた。

「ならば焼き払う!

 神聖魔法使いよ、これこそ大技だ!

 精霊の炎――サラマンダー顕現せよ!!

 浄化の炎で敵を焼き尽くせ」


 城壁の上、黒煙の中から炎が形を成し、サラマンダーが次々と現れた。


 「炎の獣???????」

 「くるな、くるなーーーーーーーーーーーーーーー」

 兵士たちの絶叫。


 「いやーーーーーーーーーーー」

 ミツキも死を覚悟した。


 だが――

 「グォーーーーーーーーーーー」


 サラマンダーはいきなり苦悶の声をあげた。

 浄化のための正赤い炎でなく、

 黒く濁った炎が不気味にとぐろを巻いた。


 「ギャオーーーーーーーーーーー」

 更なる苦悶の声が発したかと思いきや、

 シュウゥゥ…… と不吉な音を立てて、

 倒れ込むように溶けていく。



 フリューアは理解が追いつかぬまま、

 逆流した魔力の衝撃を浴び、煤まみれで崩れ落ちた。

「な……なぜ……精霊が……怒って……」


 答える者はいない。


 城壁の上には震えながらもようやく立ち上がった、ミツキと兵士たち

「い……今……今のは……」

「私……私にも……ただ……苦しそうだった……」


 ハルトとコージが駆けつけてくる。

 ミツキはホッとすると同時に、何か微妙な罪悪感を感じていた。



5. 地味な脅威


 精霊魔法が沈黙し、帝国軍は動揺する。

 しかし、一人だけ落ち着いた足取りで前に出る影がいた。


 神聖魔法使い――ヒルデガルト。

「精霊など所詮は自然の下僕。

 だが我らは神に選ばれし者ですのよ。

 その差を教えてあげますわよ」


 杖を掲げると、

 帝国兵全体が金色の光に包まれた。


 城壁の兵士たちはぽかんと口を開けた。

「……なんか、地味じゃね?」

「さっきの火の化け物や巨大レンズに比べると、

 ただ光ってるだけ……」


 しかし、ダリウスとルークスは蒼白になった。

「馬鹿者ども!!

 あれが一番ヤバい魔法だ!!」

「馬が暴れないように、全員、心を鎮めろー」


 次の瞬間だった。

 帝国兵の目から感情が消えた。

 恐怖も痛みも感じない、狂戦士バーサーカー へと変貌する。

 折れた腕をぶら下げたまま笑いながら突撃し、

 皮膚が裂けても、金色の光がそれを塞ぎ、回復させる。


「ひっ……」

「人間じゃない……!」


 王国側の兵士たちが後退を始めた。


6. 絶望の賛歌


 ヒルデガルトは畳みかけるようにゆっくり息を吸い、

 歌い始めた。

「――〈戦場の賛歌〉」

 荘厳で神をたたえる歌声。

 その歌声はただの音ではない。


 魔力が声を運び、

 王国軍全体に圧力として降り注ぐ。

 効果は絶大だった。


 帝国軍のバーサーカーは全軍に広がっていった。


 それに対して、王国軍は恐怖を感じたものから、

 吐き気や頭痛を感じた、

 さらに理由のない罪悪感から立っていられない程の

 精神的重圧を感じていった。

 司令室でも同じだった。


 アヤは顔をしかめながら、震える声で崩れだした。

「くっ……これは精神汚染攻撃……!

 脳に直接、『負けろ』って命令されてる……!」


抵抗もむなしく、皆が落ち込みだす。

「くっ……ごめんなさい……!

『解説役』ポジションで、

 安全圏から偉そうに講釈垂れてごめんなさい……!

 ……視察名目で、経費使って食べ歩きして

 ……ごめんなさい……!

 ……歴女なんて役に立たないオタクで

  ……ごめんなさい……!」


 ハルトも頭を抱え、うずくまる。

「俺が悪かった……

『鉄オタチート』で文明レベル崩壊させて……

 俺TUEEEしてごめんなさい……!

 コミュ障だからって……

 面倒な説明をいつもミツキに丸投げして……ッ!

 本当にごめんなさい……!」


 ミツキは涙を流し、自身の腕を抱いた。

「怖い……ごめんなさい……

 アヤちゃんとのキャラ被り避けるために、

『可愛い妹枠』をあざとく狙ってごめんなさい……!

 図面引くだけ引いて……

 中身の計算なんにもしてなくて……!

 ごめんなさい……!」


 ダリウスが膝をつく。

「すまぬ……

 アヤ以上に解説ポジで済まぬ。

 油断したせいで元部下を失うなんてすまぬ。

 息子よ、犠牲にしてしまってすまぬ……!」


 ルークスは歯を食いしばり、拳を握りしめる。

「申し訳ない……

 最初はMOBの予定だったのに、

 偉そうになって申し訳ない。

 その割に劇中いいポジションで、

 ダリウスを蹴落として大将軍、

 ルークスの下克上を実は狙っていて申し訳ない。

 鉱山で憂さ晴らしていじめた皆よ、

 本当に申し訳ない……!」


 兵士たちの目から光が消えていく。

 王国軍は、崩壊寸前だった。


 その時――

 空気が、振動した。


 歌。

 ただの歌ではない。


 兵士たちが何度も聞いた、あの声。

 絶望を押し返す、温かく、強い――

 あの歌声 が響いた。

アヤ「これがチャンスだ!

   私がセンターとるんだ。

   私が主役だ。

   地味ポジションにさようなら。

   (アヤ フリフリ衣装に着替える)

   みんな 抱きしめて~ 歴史の果てまで」

   「生き残りたい 生き残りたい

    歴史の導きで 今たちあがーった」

謎の銀河の歌姫達「「本気出してきた!?」」

コージ「俺の出番なくなる?俺の本気みせてないから、まだ眠れない!!!」

アリア「次回 歌姫革命 ミス・アストリアー歴女歌姫の初オーディション

     私の出番ないうちに私のポジションまで取りに来たのね」



ここまで読んでくださってありがとうございます。

基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。

もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。

たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。

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