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知恵 vs 魔法―― 「鉄研の部室に放置されている、めちゃくちゃ古いやつ!!」

1.敵ついに動く

 夜明け前。要塞都市アイアングリップの空を、

 赤い信号弾がいくつも横切った。

 冷たい空気が震え、砦じゅうの兵が走り出す。

「敵軍四万、最終警戒線を突破!

 今日の夕方には東の丘にたどり着く模様!」

 伝令の声に、司令所の空気が一気に張り詰める。


 ダリウスとルークスが即座に地図へ身を乗り出し、

 四人も呼び出された。

「こちらの味方の数は二万。時間をかけてくれたおかげで少し増えた。

 この街の城壁を考えるとまず負けないはずだが、、、」


「敵の数だけが問題じゃないことを確認するよ」

 ハルトが地図板に手をつき、短く言う。


 それをみながらアヤが応える

「前線砦でやられたあの長距離狙撃と異常回復……あれが本命よ」


「うん。射程三倍なんて、空気抵抗と重力で物理的に不可能」

 ハルトが眉を寄せる。


「弓そのものじゃなく、外から見てる何かがある。

 観測魔法の類いだよ」


「戦闘開始はおそらく明日の朝だ。

 各自油断せず、明日に備えよ!」

 ダリウスの号令で全員持ち場で最後の用意を始めた


 会議は短く終わり、四人はそれぞれの持ち場に散った。

 ミツキは偽の司令所と屋根付きの連絡通路の配置図を

 最後まで微調整し、ハルトは二重堀の角度や射線を確認し、

 コージは城内伝令ルートを設置しに走り出す。

 アヤは全体配置を俯瞰し、

 敵が最も嫌がる情報遮断の手順を兵士へ徹底させていった



2.開戦


 翌朝。城壁の外は奇妙なほど静かだった。

「……来ない?」

「いや、止まってるんだ」


 敵軍は弓のはるか射程外、東の丘の上で軍を展開していた。

 その時、敵陣と城壁の中間の上空にあの巨眼が浮かび上がる。

 黒い瞳孔。金属質の虹彩。

 生き物の眼のように蠢き、乾いた音を立てて焦点を調整する。


「あ……あれが、前線砦でみえたという……!」

「止まった! 連中、撃ってくる!」


 巨眼が伸び、目の中が収束した瞬間――

 数十本の矢が向かい風を無視して同時に飛来した。

 しかし、その全てが刺さったのは――


 「偽司令所に近く命中!」

 「報告通り色違いの矢が飛んできているそうです」

 「向かい風なのに全く問題なく届いたけど……!

  でもこっちは無事!」


 ミツキの報告に、兵たちがどよめく。


 巨眼が狙ったのは司令所がありそうな場所。

 しかし本物の司令所はさらに奥、

 屋根付き通路で守られている。


「やっぱり効いてる……!」

 ミツキが拳を握る。


 -----シュシュシュシュ

「ぎゃーーーー」

 

 しかし、すべての弓が命中しないわけではない。

 後方なのに危険にさらされるうえに打つ手もない。

 徐々に士気が削られていった。



3.気づき


その直後、城内を走り回っていたコージが

息を切らして指令所へ駆け戻ってきた。


「ハァ、ハァ……! 

 あの眼、すげぇ見られてる感じがするんだけど……!

 それと、なにかアルファベットみたいなのが書いてあるき気する。

 全く読めないけど、、、」

 コージが恐怖に顔を歪め、空中の巨眼を指さす。


 アヤがそれを覗き込もうと、

 顔を城壁の隙間から出した、その瞬間。


「危なっ!」

 ハルトが鋭く叫び、アヤの肩を掴んで引き倒した。


 十本の矢が、アヤの立っていた正確な場所に突き刺さる。

  「ひっ……! 危なっ……!」


  「何してるの、アヤ! 無闇に顔を出すなよ」  

  ハルトが息を荒げながら叫ぶ。


 ただ、アヤはぶつぶつ言い始め、

 そして気が付いたように少しだけ外を見て、

 すぐ顔を戻した。

 „Ich bin der, der die Ferne sieht.

 Ich bin der, der das Licht zähmt.

 Ich bin der, der das Bild wandelt.“

「……あれ、古式ゆかしいフォントだけどドイツ語じゃない。

『我、遠くを見るものなり』

『我、明るさを調節するものなり』

『我、像の大きさを変えるものなり』

  なんであんなのも読めないの、コージ!!」


 その瞬間、ハルトが叫んだ。

「ズームレンズだッ!!」

 指揮所がざわめく。

「35mm-105mm! F3.5-4.5! 間違いない!

 鉄研の部室に放置されているめちゃくちゃ古いやつ!! 

 あれは魔法で作った巨大なカメラレンズなんだ!!」


 ダリウスとルークスの理解は追いつかない。

 しかし見られているから狙えるという構図だけは明白だった。


 ハルトは即座に叫ぶ。

  「レンズは光を集める!

  レンズで太陽を見たら目が焼ける!

  だったら――太陽光反射で潰せる!!」


  「どうするの!?」

 ミツキが詰め寄る。


 「太陽は動いてる……今の入射角で反射できる限界、

 ……猶予はあと30分だ!」


「30分!? 数千人の市民を動かすには短すぎるよ!」

 コージが叫ぶが、すぐに腹をくくった。

「いや、やるしかない! ミツキちゃん、配置図を! 僕が声を届ける!」


コージは城壁の反響板を使い、声を張り上げた。

「みんなーーー!! 聞こえるかーーー!!

 王国を守るために、鏡を持って走ってくれ!!

  30分だ! 30分でこの国が決まる!!」


ミツキは震える手で図面を引く。

「太陽は動くから……ハルト君、30分後の角度予測は!?」


「南南東、仰角45度! 予測位置にマーキングして人を並べて!」

「わかった! アヤちゃん、伝令お願い!」


街中がどよめき、やがて足音が響き始めた。

鍋の蓋、手鏡、磨いた銀食器。生

活の道具を握りしめた市民たちが、息を切らして集まってくる。

「間に合わせろ! 走れ!」


 ミツキはその間に、

 鏡の角度と配置図を即座に書き上げ、

 兵へ配っていった。

「鏡がない人は、

 剣や盾をちょっとでも磨いてきれいにして!!!」

 そうしたら太陽光を少しでも反射するから。

 それであのレンズを狙って!!!」


 そして十分後。


「レンズが伸びた……焦点が……絞られてる!」

 アヤが叫ぶ。


「バルス」

 コージの号令で、数百枚の鏡(?)

 が太陽光を受けて一斉に反射した。


 白い光が束になって飛び、

 空中の巨眼へ――


 ――ジュウッ!!


 黒煙が上がり、巨眼は悲鳴を上げるように震え、

 次の瞬間、破裂するように砕け散った。


4.敵陣にて


「「「「目が……! 目がああああああああ!!」」」」

 突然、レンズが砕け散ったと思ったら、

 視覚共有をしている魔法使いたちが目を抑えて悶え始めた。


「ど……どうされました?」


 しかし、目を焼かれた魔法使いたちは悶えるだけで、

 応えることはできなかった。



5.まだ終わらない恐怖


 場内に歓声が広がった。 「……やった……!!」

 知恵が、帝国の神秘の眼を打ち砕いた瞬間だった。


 ヒューー

「ぐわーーーーーーーーー」


「な、、、なんだ、、、今の矢は、急に曲がったような、、、、」


 飛んでくる矢の数はかなり減ったものの、

 今度はあり得ない軌道で正確に届くようになった。

「まだ終わってないぞ!気を引き締め直せ!」

謎の赤い仮面「いくら三倍の射程でも、あたならければどうということはないな」

ハルト「いや、結構、当たりますが!」

謎の天パ「戦場では後ろにも目をつけろ」

ダリウス&ルークス「そんなのこの世界では無理だ。お前たちの世界はそうなのか」

みんな「イヤイヤイヤ。あの人だけが異常」

謎の赤い仮面「新しいタイプにならなくても

       ちゃんと対話で分かり合うことができるのか。

       私もちゃんと民衆と対話する気があれば

       道化と自分を卑下することがなかったのかもな」

謎の赤い仮面「次回 歌姫革命譚 猛攻 神聖魔法使い 君は生き延びることができるか」

みんな「精霊魔法使い相手の戦いすら終わってないのに……」

謎の別の大佐「古代文明を手に入れたと思ったのに……」

謎の顔にけがのある大男「鏡で太陽光を集めて焼くとは許せん!!!!」

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