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知恵が築く要塞 ――「知恵が国を守る日」

1.作戦会議

 要塞都市アイアングリップの司令室には、

 地図と書類が広げられ、緊張した空気が満ちていた。

 

 ダリウスはその中心に立ち、

 集まった五人へ静かに告げる。

「帝国軍がいつ来るか分からん。

 明日かもしれんし、半年後かもしれん。

 だが一つ確かなことがある。

 ——ここが王国最後の盾になるということだ。

 今日は知恵を集める。どんな策でもいい、出してくれ。」


 騎兵隊長ルークスが最初に手を挙げた。

「ならまず、城の周りに堀をもう一つ掘るべきだな。

 外堀はあるが、あれでは浅い。

 もう一重掘って、間の土地を泥にする。

 重装歩兵は沈むし、馬も進めない。」


「泥の深さは地形次第だな……」

 とハルトは地図に線を引きながら言う。


「その線だと深さとか、

 幅とかわかりにくいよ、私が書いてあげるね」

「じゃあ頼んだぞ。この作戦、お前らに丸投げだ!」

 

 ミツキとハルトが息を合わせるように

 「任せて!」と返事した。

 

 続いてアヤが前に出た。

「敵がいつ来るか分からない。

 だったら常に敵を迷わせておく必要があるわ。

 ——偽の司令所を作りましょう。」


「偽物?」とコージ。


「本物がどれか分からなければ、

 攻撃されても動じない。

 さらに偽の伝令を走らせる。

 倉庫も治療所も、

 全部嘘の本陣を用意してやるの。」


 ハルトがうなずく。

「観測魔法対策か。

 たしかに……敵にとっては情報が全てだからな。」


 ダリウスは短く言った。

「合理的だ。採用する。」


 ハルトが地図を覗き込みながら言った。

「敵が狙撃してくるなら、

 そもそも見せなければいい。

 ……屋根付きの移動通路を作ろうよ。」


 ダリウスが眉を上げる。

「屋根付き?」


「うん。城壁から城内への移動が全部見えないようにする。

 さらに城壁の上を少し内側に傾けると、

 外からは見えにくくなるんだ。

 鉄道の高架でも同じ理屈で

 下からは絶対見えない角度になってる場所がある。」


 コージが感心した声を漏らす。

「お前、鉄オタなのになんで建物に。。。」


 ハルトは怒りながらこたえた。

「高架は建物じゃないし、

 高架の設計は建築工学じゃなくて

 土木工学の仕事!!」


「鉄オタ、、、どこまで沼なんだ、、、」


 ミツキが大量の図面を机に並べた。

「街を戦う街にするよ。

 三重門を作って、ここを狭くして……この道を塞いで……。

 敵が入ってきても、簡単には進めないようにするの。」


「城そのものを罠にするわけか」

 とダリウス。


「そう。袋小路に見えるけど、

 上から槍を落とせる場所も作っておく。

 家の壁を抜いて兵専用の通路も作れる。

 ……ふふ、これなら絶対に進みにくいよ!」


 コージが目を丸くした。

「……ミツキ、なんか楽しそうだね。」


「うん! ちょっと不謹慎だけど、

 街が変わっていくの、好き!」


 最後にコージが、胸に手を当てて言った。

「ぼくからも……ひとつ。歌のステージを作りたいんです。」


 ダリウスが目を細める。

「歌の……ステージ?」

「長い戦いになります。兵士や町の人たちたちの心が折れないように、

 広場に反響する場所を作って……歌を届けたいんです。

 敵の精神攻撃だってあるかもしれない。

 なら、ぼくらも心で戦うべきだと思うんです。」


 アヤが静かにうなずいた。

「士気は兵站よ。いいわね、コージ。」


 ダリウスはゆっくりと頷いた。

「よし。これで五つ。どれも合理的で、

 そしてこの国を守るに値する策だ。

 ——全て採用する。動け!」

 緊張が熱へと変わっていくのを誰もが感じた。



2.要塞都市の変貌


 その日から要塞都市は、急速に姿を変え始めた。


 ◇ルークス・ハルト・ミツキ

 二重堀の掘削現場では、兵士と農民が総出で土を運び、

 水を引き、泥をならしていく。


「もっと水量を増やして!」

「この角度なら泥が溜まる!」

「門から離しすぎないで!」


 ルークスの号令に、作業員たちが応える。


 ◇アヤ

 偽の司令所が三つ、偽倉庫が四つ、偽治療所が二つ。

 伝令兵がわざと交差しながら街を走り、

 外からは本陣がどこか分からないようにする

 訓練をし始めた。


「あなたは今日は偽伝令ね。

 本物より堂々として走るのよ。」

「偽物なのに堂々……?」

「そう、敵に見せるための芝居よ。」



 ◇ハルト

 屋根付き通路の計測に余念がない。

「光はこの角度……敵の高台からは、

 ここは死角になる。

 よし、この屋根の角度でいこう。」


 兵士たちが思わず感心する。

「何者なんだ、この人……。」


 ◇ミツキ

 図面片手に街を走り回る。

「そこ狭くして! この壁は抜いて!

 あ、ここは袋小路だけど、

 上から槍を落とせるようにしてね!」


 兵士たちはあまりものわかりやすさに感嘆した。

「この娘の図面……実物よりわかりやすい?魔法か???」


 ◇コージ

 広場で声の反響を確かめながら歌う。

「ここなら……届く。兵舎にも、門にも……!」


 兵士たちが足を止めて笑う。

「コージさんの声、元気出るな!」

「だろ? 俺もみんなの笑い声で元気出るよ!」


 夕暮れ。

 要塞都市アイアングリップの上空を、

 冷たい風が吹き抜ける。

 二重の堀が暗い影を落とし、

 屋根付きの通路が蜘蛛の巣のように街をつなぎ、

 三重門がそびえ、

 偽の司令所が灯をともす。

  そして中央広場には、歌のステージが完成しつつあった。

 

ダリウスは城壁の上からその光景を静かに眺める。

「……知恵が国を守る日が来るとはな。」

 誰に聞かせるでもなく、彼は誇りを込めてつぶやいた。

「帝国は驚くだろう。

 王国が知の要塞に変わったことに。」

 遠く、夜の帳が降りはじめていた。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。

もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。

たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。

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