見えない敵、認識できない脅威――「地獄の窯が開いたのかもしれん」
いよいよ本格的に魔法が登場します。
【Aパート:崩壊する前線砦】
「敵襲、今までよりはるかに大軍です」
「来たか。どの程度だ。」
「約三万。」
これまでにない数に前線砦に緊張が走る。
「なんて数だ!!」
「王都及びアイアングリップ に急報!!」
「こちらは1万5千。援軍が来るまで何とかこらえるぞ。
今までよりはるかに早く援軍は来る!」
何とかこらえられるはずだった。
だが、今までより敵があまりに手前でとまった、
今までも魔法のために敵はある程度距離をとる傾向があった。
だが今回は何かが違う。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「なんだあれはーーーーーーーーーー」
空に何かがと光る。
表面は奇妙に滑らかで、中央には巨大な単眼のような円。
それが——ギョロリとこちらを向いた。
「……動いた? 今、こっち見たか?」
視線が合った直後だった。
――ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ。
とんでもない量の空気を裂くがした。
そしていきなり指揮所に周りに色違いの雨が突き刺さった。
「な…………なぜここまで届く?」
「さすがにこれは異常だが…………………………」
「さ……さすがに当たらんか。だいぶ外れている」
「なぜ敵は矢に色を付けている。
同じ色同士は近いようだが」
――ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ。
もう一度とんでもない量の空気を裂くがした。
そしてまた指揮所に周りに数十本の矢が着弾した。
「ま……また、だが…………」
「また、色違いの矢。何の意味が…………」
「ち、近づいているから少し、移動を…・」
――ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ。
移動しようとしたその時、三度目の正直。
今度は司令官を中心に数十本の矢が降り注いだ。
「う、あ……?」
次の瞬間には司令官を中心に多数の上級将校が地面に崩れ落ちていた。
「し、司令官殿!? 司令官負傷!!」
「どうやって狙った!?
届くはずないし、狙えるはずもない!!!」
誰にも分からない。
そのとき、敵の歩兵が金色の影を揺らめかせながらかけてきた。
「来るぞ!!って、なんだあのオーラは。今までとは全く違う」
だが、その体は綺麗ながらも禍々しいオーラをまとい、
不気味に脈打っている。
「斬れ!!」
味方の剣が敵兵の腕を切り裂く。
深手ではないが、それなりの血が飛び散った。
「やった! ……」
――シュウゥ……
切り裂かれた肉が蒸気を立てながらつながり、
数秒後には元どおりになった。
「……は?」
敵兵は無表情で剣を振り上げる。
肩を砕かれても、膝を割られても、何度でも立ち上がる。
「化け物だ!! 死なねぇ!!」
パニックは瞬時に砦じゅうへ伝播した。
「撤退だ!! もはや戦線が保てん!!」
怒号と悲鳴が混じり合う中、空の上から、
あの巨眼だけが静かに砦の崩壊を見下ろしていた。
東方最重要砦は、その日のうちに陥落した。
【Bパート:王国会議室】
「……報告は以上です。
現在、前線から帰還中の無事な兵を収容中ですが
どれだけ少なく見積もっても20%は未帰還、
あるいは復帰不可能かと………………」
重苦しい沈黙が落ちた。
王都の会議室には、ダリウス、ルークス、
そしてアヤとコージ、ミツキ、ハルトがそろっていた。
しかし誰も口を開かない。
最初に言葉を発したのはダリウスだった。
「わかった、全予備兵力を五千をできるだけ早く前線に。
残りはありったけ兵を集める準備を。よろしいですね。女王陛下」
「許可します。王都の医師たちも急ぎ向かわせましょう」
「御意」
ひと段落して、ルークスが口火を切る。
「……あり得ん。確かにここ数年、射程が少し伸びたや、
伸びる弓兵の数が増えていたという報告は受けている。
魔法の強化が行われていたいう捕虜からの証言もある。
だが、今回は射程が少し伸びた程度ではない。全く次元が違う。」
ダリウスが、深くうなずく。
「しかも、指揮所狙い撃ちだと!
報告通りの距離でどうやって、狙ったんだ!!
どれだけ目が良くても無理だ。
そのうえ、壁の向こうに狙いをつけるなど不可能だ!!!!」
「じゃあ……何?」
とミツキがつぶやく。
アヤは並べ、淡々と言う。
「指揮所への集中砲火、しかも射線がとおってないはず。
そして——致命的なのは、回復速度が異常。」
アヤはいらだちを隠しきれずさらに続けた。
「すぐに回復するって、生命の理に反している!
今までも帝国側は魔法で多少回復が早まるのは知っているわよ。
それはまだ新陳代謝を早めた程度かもしれない。
でも、骨折すらすぐ治るのが異常でなくて何よ!!!」
ハルトが顔をしかめる。
「つまり、今までの延長の魔法改良とかじゃなくて……」
「ああ。」ダリウスが言う。
「帝国は禁断の領域に踏み込んだのだ。」
ルークスも続ける。
「王子が焦った理由がようやく分かった。
あの方は、これが生まれつつあることを察知していたのだろう。
だから——召喚などという無茶を……」
部屋が静まり返る。
やがてアヤが息を吐いた。
「……向こうは今回完成された化け物を手に入れた、
と考えるのが妥当。ということ。まさか。。。」
ミツキが震える声で問う。
「じゃあ……次は私たちが、あの化け物と戦うの……?」
コージもさすがに普段の明るさを失っていた。
「化け物……歌が通じない?…………どうすんだよ!!!!」
ダリウスはゆっくりと目を閉じた。
「分からん。だが一つだけ確かだ。」
重く、胃に落ちるような声で続ける。
「今日を境に、これまでの戦争の常識はすべて役に立たん。
地獄の窯が開いたのかもしれん。」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。
もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。
たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。




