改革チートの余波――「木のレール、物流革命、いかだ。歌う国のはじまり」
1,三か月
戴冠式から、もう三か月が経った。
王都セレスティアの空気は、
あの日を境に変わったと人々は口をそろえる。
街を歩けば、どこからともなく歌が聞こえる。
市場の女たちが野菜を運びながら口ずさみ、職人たちの槌音すら、
どこか旋律に聞こえるほどだ。
「今日も王都は賑やかですね、陛下」
「ふふ、みんなの歌声が聞こえると、私も頑張らなくちゃと思います」
そんなやり取りをしながら、アリアは執務室へ向かう。
机には山のような書類が積まれているが、
彼女は疲れた顔を見せない。民とともに歩む王は、
毎日歌と同じように王都の中心にいた。
2.鉄鉱山
――一方その頃。
王都から離れた鉄鉱山では、別の歌声が響き渡っていた。
「よーし、今日はこっちの坑道に新しいレールを敷くぞ!」
鉱夫たちの声が坑道にこだまする。
足元には、太い木材で作られた木のレールがずらりと並んでいた。
数か月前までは石とぬかるみに足を取られ、
トロッコを押すにも四人がかりだった。
今では二人でも押せばスーッと進む。
「山岳民族の木は本当に丈夫だなぁ!」
「ありがてえことだ。おかげで腰の痛みも減ったぞ!」
木材には、山岳民族の焼き印が押されている。
彼らの交易再開は、
アリアたちの働きかけがもたらした奇跡だった。
やがて、坑道の奥から誰かが歌い始める。
♪ 山は遠くとも 我らの宝
今日も歌えば 心は軽い ♪
それは昔ながらの鉱山節に、
新しい王国の国歌の節回しが重ねられたもの。
仲間の声が広がるたび、
鉱夫たちは自然と四人の英雄と国王の姿を思い浮かべる。
――あの兄ちゃん姉ちゃんら、陛下と一緒にまた来ねえかな。
そう呟く声も、どこか楽しげだった。
3.商業都市リバートン。
川面に太陽が反射し、港は活気の渦に包まれていた。
「木材、入港ーっ!」
「鉄と銅の荷も確認済みだ!」
「山岳民族の薬草、今日の分はここだ!」
商人たちが声を張り上げ、港を走り回る。
以前の混乱が嘘のように荷揚げがスムーズだ。
人々は口々に言う。
「王都の新しい物流の仕組み、すげえな」
「ハルト様とミツキ様が作った計画表、
あれを真似たらすべてが変わったよ」
町の中心では、チーズとワインの香りが漂っていた。
グランフィールから送られる食材は大人気で、
酒場の前には長蛇の列ができている。
商人ギルドのロッシュは、嬉しそうに眉を上げた。
「ところで上下水道なんだが……設計が思ったより複雑でな」
「ハルト様とミツキ様に聞けば一発ではないですか?」
「だからこそ呼べないんだよ、あの人は今、王都で超多忙だ」
ロッシュはため息をついたが、その表情はどこか誇らしげだった。
広場では吟遊詩人が歌っている。
♪ 王と民が ひとつの歌で
新しい道を歩き出す ♪
市民は足を止め、その歌に耳を傾けた。
4.農業都市グランフィール。
丘を越えると、川沿いに巨大な風車がゆっくりと回っている。
ハルトの設計をもとに作られたそれは、
数か月前に比べて作業効率を格段に高めていた。
「ほっておいても水をくみ上げてくれる!」
「風の流れを読むってのは、本当に大事なんだなぁ」
そんな声に交じり、川沿いにいかだが流れてくる。
積まれているのは、山岳民族の切り出した木材と、
袋に詰められた薬草だ。
「いつも助かるよ!」
「お互い様だ。そっちのチーズ、また頼む。」
民族間の交流は、まだぎこちない。
けれど、そのやり取りは確かな信頼を含んでいた。
町の一角では、木材加工の作業場が新設されていた。
山岳民族の木材需要が増えたおかげで、
職人の技術が急速に発達している。
そして、広場にはこんな看板が出ていた。
「本日開店! 山のチーズフォンデュ!」
子どもたちが笑い、旅行者が列を作る。
マルクスは腕を組みながら、街並みを見渡していた。
「変わったもんだな、この町も。
あの五人のおかげで……まるで別の国みたいだ」
フォンデュの湯気が空へ立ち上り、穏やかな風が吹いた。
5.その裏で
日が沈みかけたころ。王都へ向かう定期便の兵士が、
荷馬車に揺られながらぼそりと呟いた。
「……前線の砦な。最近、やけに静かなんだよ
帝国がこちらの歌にビビッて引いてくれたらいいんだけど」
彼はそれ以上の説明をしなかった。
今はまだ、ただの気のせいだと思われていたからだ。
――けれど、それは。
第二部の幕開けを告げる、
最初の小さな兆しだった。
どんな内政系でもいかだのレベルはチートと言わない。
だが、世界を変える本当のチートは交通だ!
アリアとコージのコンビこそ神。ミツキは俺の嫁。
どの解釈でもいいですが、
鉄オタとして、歴史オタとして、これは譲れない!!
二部は全部で13話です。
長いようで短い、オタク達とアリアの歩みの物語もあと少し。
一部よりもかなり駆け足になりますが、
最後まで是非お付き合いいただければ幸いです。




