アヤによるここまでの歴史講義
歌姫革命譚のここまでのダイジェスト講義です。
一部を読んでなかったあなたも、これを読めば王国史試験で合格点が取れますよ!
「王国史の講義をずっとサボっていた?
でも、今から追いつきたいから何とかしてくれ?
……はぁ。まあ、しかたない。
今から私が丁寧に教えてあげますからね。」
アヤは机に年表と地図を広げ、深く息を吸った。
「最初に起きたのは――
無能と断じられた異世界人四名の鉱山送りです。
鉄道オタクのハルトは、
トロッコと軸受けで労働環境を変えました。
絵師のミツキは、
文字の弱い世界で“図”によって理解と信頼を積み重ねました。
アイドルオタクのコージは、
歌によって人の心をつなぎ、共同体を生みました。
そして私は……
歴史と兵站の知識で、
『死なないための選択肢』を提示しました。」
4人の得意分野を一気に解説した後、
アヤは次の言葉を力強く説明した。
「この時点で起きた変化は一つ。
力ではなく、知恵で状況が動いたという事実です。」
さらに話を続けるため、アヤは視線を上げる。
「次に重要なのが、
王女アリアとの合流です。
彼女は支配するためではなく、
民と共に歩くために現れました。
鉱山は戦場となりましたが、
勝利を決めたのは剣ではなく――
歌と、取引と、鉱山奴隷たちの意思でした。」
自分が役立たずで、
その一方でアリアが皆の中心にいたあの日のことを、
アヤは懐かしそうに思い出しながら、話を続けた。
「結果として、
鉱山は解放され、
商業都市リバトーンは再建され、
農業都市グランフィールとは
“同盟ではなく取引”が成立します。」
アヤは地図の中心を指さす。
「これ、歴史的に見ると重要なんですよ。
武力を使わず、経済と文化で勢力圏を広げた例です。
戦闘で勝つよりも戦闘せずに勝つ、
これができたからこそ、
歌姫革命は世界の中でも模範的な革命になったんです」
(私も偉そうだったな。王女に決断を迫るなんて、
今考えればよくそんな怖いことできたよな。)
「あー、ごめん、ちょっと思い出してた。
わ、私、無茶苦茶格好、良かったんだからね。この時!
私こそが、この革命の立役者。主役よ主役。
あ、、、本音がにじみ出た今のなし。
こら、ここだけノート取らない!
主役はアリア様よ!!!」
ちょっと間を整えるために、アヤは咳払いをして話をつづけた
「え、えーと、話を戻してと。
その時、王国は混乱の極み。難民まで発生する状況に。
そこでアリア様は親衛軍を組織し王都に向かうことにしました。」
――オルド河原の戦い
「ここで重要なのが、オルド河原の戦いですね。」
アヤは地図の川筋を指でなぞった。
「王子ベルトランは、
過去の戦訓から“秩序を守る場”としてオルド河原を戦場として選びました
それは過去に守備側が勝った戦い。
それを我々がオタクの知恵でひっくり返します。」
川の流れ。
地形。
水量の変化。
その日の風景がアヤの胸をよぎった。
「ハルトが地形を読み、
ミツキが図に落としました。」
アヤは淡々と続ける。
「歴史をきちんと学ぶのは、歴史をなぞるためではないのです。
歴史から得た教訓を今後に生かすため。
王子は歴女の私を追放して、歴史を軽視したうえに、
歴史の表層だけまねてしまったんですね、嘆かわしい」
実際、川は増水し、
王子の軍勢は混乱した。
「そして決定打になったのが――
アリアの存在でした。」
彼女は前に出た。
剣を振るわず、命令もせず、
民と兵の前で、ただ“責任を引き受ける覚悟”を示した。
「水攻めをする際に農民にお願いした。農民もそれに答えた。
この時、民とともに歩むというアリアの理念が始めた形を成したのです
だからこそ、農民にアリアが頭を下げに行った日が革命の誕生日なのです
ここ、共通テストに出る確率8割だから、きっちり抑えておくこと
戴冠式の日という引っ掛けに引っかかる学生が多すぎる。
本当に嘆かわしい。
王座の前でアリアが国王から禅譲を受けた日を
誕生日にする学説もありますけどね
それは権力継承という表面しか見てないと、
私は思います。
検定教科書、書いているのは私だから、
テストは私の学説が〇になるからね。
文句は歴史学者になってから言ってよね」
結果として、
王子の軍は瓦解し、
秩序――オルドは、静かに塗り替えられた。
アヤは一度、言葉を切る。
「歴史的に見ると、この戦いの本質は――
戦術の勝利ではありません。
“どう勝つか”ではなく、
“どう在るか”を選んだ側が、
支持された戦いだったんです。
戦闘はあくまでも政治の延長なんです。
だからこそ、
秩序を作った戦いと呼ばれることになったの。」
(秩序を作るか。。。
偉そうなこと言っているけど、作るよりも維持するほうが大変なのよね。
私、本当にちゃんとできているのかな?
アリアがしっかりしているから、
アリアが民に『私たちの傀儡』と呼ばれてないと信じたい、、、
って、私が揺らいでちゃ、学生不安よね。
ここは少し偉そうに)
「ここはセレスティア王国大学の筆記試験で一番よく出るからね。
背景まできちんと押さえておくこと。
あと、水攻めだけ書いたら点数低いからね。
その準備段階からちゃんと民を守るために頑張った、
ハルトとミツキの名前を忘れないこと。
ミツキの絵は教科書の挿絵に多くあるから皆覚えているけど、
特にハルトは地味すぎてみんな忘れちゃうのよね。
かわいそうに」
「王女として王の前に立ったアリアは王に跪かずに、
王に退位を迫りました。
そこで問われたのが、
この言葉です。
『――お前が、この国を背負うのか?』
仲間の言葉後押しと、
これまで積み重ねた行動を背に、
アリアは答えました。
『私が、この国を背負います。』
この言葉に安心した前王は自ら王位を退き、
アリアに王位は継承され、
歌姫は“民と共に歩く王”となったのよ。」
アヤは静かに講義を締めくくる。
「以上が、
歌姫革命第一部・鉱山から王座までです。
ただし――」
彼女は地図の外側を指した。
「歴史的に見て、
一番厄介なのは、いつもこの後なんですよね。」
王国の外にある帝国。
戦争の記憶。
革命の代償。
「第二部では、
王となったアリアが
“外の世界”とどう向き合うかが問われます。」
アヤは肩をすくめた。
「……あ、みんなが私を呼びに来た。
それじゃあ、この講義はここまでです。
次はちゃんと自分で教科書を読んで講義に参加してね。」
(……コージの説明少なすぎたかな?
でも、だって、歴女の私の出番とったからつい……
教科書にはちゃんと書いてあるからいいよね。
そもそも国歌歌えない国民なんて皆無なんだから。
みんな彼の名前は知っているし。
うん、OKOK.
ダリウスもものすごい人気よね。
舞踏会では貴族の令嬢に熱い視線を送られているし。
亡き家族思いのダリウスがなびくはずないのにねぇ。
あと、ルークス、あんなに嫌な奴だったのに今ではこんな有名人に
あの時、牛に括り付けて突撃させなくてよかった)
アヤの机の上にあったのは一冊の英雄記だった
発行元:リバトーン商業ギルド出版部
『鉱山でくすぶっていた中年、王女の歌で覚醒し、今や最高の騎士ですが何か?』
という感じでいかがでしたでしょうか。
2/1の二部再開までしばらくお待ちください。




