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二つの帰還路―「敗北者の道と民の心を得る旅」

1.王子の帰還 ― 砂埃の中の敗走

 オルド河原を逃げ出したベルトラン王子は、

 側近とわずかな近衛兵だけを伴って北の街道を走っていた。

 

馬の蹄が乾いた大地を打つたび、

 兵たちの顔には沈黙が深く刻まれる。

「はぁ……はぁ……殿下、ひとまず、野営を……」


「黙れ!歩みを止めれば、民の嘲りに追いつかれる!」


 声は震え、威厳もなく、ただの怒鳴り声になっていた。

 すれ違う農民たちは道を譲りながら、

 王子を見る目に、あからさまな軽蔑を宿している。


「……あれが、王子?」

「近衛まで逃げ出すなんて……」

「略奪王子だ。リバトーンの領主まで追放されたそうだ」


 噂はすでに王子を追い越していた。

 ベルトランは顔を歪め、

 ついに側近に怒鳴り散らす。

「お前たちが弱いからだ!私の采配に文句があるのか!!」


 側近たちは目を伏せ、返事をしない。

 その沈黙に、王子はさらに追い詰められていく。


 ——この帰路に、誰一人味方はいない。

 そして王都へ続く道は、彼にとって

 敗北者の道となっていた。



2.王女の帰還 ― ゆっくり、民と共に


 オルド河原の勝利から二日後。

 アリアたちは、あえて街道を急がず、

 村々に立ち寄りながら王都を目指していた。


 アリアは御者席の前に立ち、

 遠くの村の煙を見つめている。

「……王都が心配です。

 一刻も早く戻らなくては」


 ダリウスは慎重に返す。

「ですが殿下。

 いま殿下が目を向けるべきは、王都ではありません」


 アリアは首を傾げる。


「民です。

 あなたが守ると言ったこの国そのものです」


 ハルト・ミツキ・アヤ・コージの4人も頷いた。

「立ち寄りながら戻るのは、ただのスロー観光じゃありません!

 殿下の存在を見せることが大事なんです!」

「殿下はもうただ王族じゃなくて、指導者なんです。

 支持率ってやつを稼ぐターンですよ。」

「物資の輸送も考えたら、

 村ごとに補給拠点を作るのは理にかないます」

「村の風景……ゆっくり見たいし(小声)」


「……皆さん。頼もしすぎます」


 こうしてアリアの帰還路は、

 民の心を得る旅になっていく。



3.最初の村


 街道から外れた小さな農村に足を踏み入れると、

 空気は一瞬で張りつめた。

「来たぞ、兵だ……」

「まさか徴税……?」


 村人たちが道の脇へ固まり、

 怯えた表情でアリア一行を見守っている。


 アリアは馬車から降り、

 村人たちの前に進み出た。

「私たちは税を取りに来たのではありません。

 ……ほんの少しですが、物資をお持ちしました」


 ルークスが箱を下ろす。

 食糧、薬草、保存肉。

 村人たちの目が見開かれた。

「物資……を、配る……?」

「こんなこと、今まで……」


 アリアは深く頭を下げた。

「戦の影響で困っている方々の助けになればと……。

 わたくしの、ささやかな願いです」


 村人たちは顔を見合わせ、

 戸惑いの中に、わずかな信頼の光が宿った。



4.ハルトとミツキ ― 老朽橋の修繕


 そのとき、ハルトが村はずれの川を見て眉をひそめた。

「……あの橋、危険すぎる」


 村人が慌てて駆け寄る。

「あぁ、最近は誰も直せんのだ……材料も人手もなくて」


 ハルトは笑って答えた。

「なら、僕たちがやりますよ」

「図面描くから、皆さんも一緒にやりましょう!」


 2人以外にも村の男たち、子供たちまで巻き込み大工仕事が始まった。

「ここを補強して……釘じゃなくて、楔で……」

「ここの角度、もうちょい下げないと危ないよー!」

「ま、待て待て……お前たち、何者だ?」

「すげぇ! 曲がらない橋だ!!」


 アリアはその光景を、

 胸いっぱいの想いで見つめていた。

 ——こういう積み重ねが、この国を変えていく。



5.夕暮れ ― コージの歌とミツキの絵


 作業を終える頃には夕陽が村を金色に染めていた。

 焚き火が上がり、コージが歌い出す。

「♪ 王女様は〜民と共に歩ーく〜

 橋を直して、飯もくれーる〜 ♪」


 子供たちが手を叩く。

「うたー! もっとー!」


「わ、わたしの歌では……?」


「殿下は最後のトリですから!!」


 一方ミツキは、

 今日の村での出来事を素早く絵にまとめていた。

「はい、これ……村に置いていきますね」


「これ……宝にします……」


 静かに感動が広がる。



6.最後の場面 ― 村人の一言


 帰り際、橋のそばで村の老人がアリアに言った。

「……殿下。

 言葉じゃなく、行いで示さるる方は久しぶりです。

 どうか、お気をつけてお帰りなされ」


 アリアは胸に手を当て、微笑んだ。

「あなた方の暮らしを守るために、わたしは戻ります。

 必ず、また来ます」


 老人は深く頭を下げた。

「わしらは、殿下の味方じゃ。

 どこにいても」


 アリアの旅路はまだ長い。

 だが最初の村で、確かな一歩を刻んだ。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。

もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。

たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。

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