オルド河原の戦い前半――「川の水が……増えております!!」
1.王子側・前夜
「ふん。奴らは動かぬ。
結局、貧乏鉱夫どもに策などあるものか。」
「殿下、明日の夜明け突撃に備え、お休みを。」
「このオルド河原で、王家の力を見せつけてやる!
反逆者の首で王都の不満も黙らせてやる!!」
どこか浮ついた、
しかし不吉なほど楽観的な声だった。
2. 王子側・朝――異変
日の出と同時に、前線に駆け込んでくる伝令がいた。
「殿下!! 川の水が……増えております!!」
「……は?」
「ほとんどのところはくるぶしほどでもないですが、
隊列の進軍に支障は出るのでないかと」
「雨など降っていませんでしたが……
なぜ、こんな……?」
「ええい、多少の水など!
予定通りだ。前線の徴集兵たちに動き出せと伝えろ!!
後方の歩兵や弓兵たちも時間がかかる分、
早めに動きだせと伝えろ!!
騎兵は待っていていいだろう。
一時的な増水などすぐに引く。
馬の速さなら誤差のうちだ」
「は、はっ!」
ベルトランは気づかない。
この静かな水音が、
革命軍の一手として計算され尽くしていたことを。
3. 革命軍側――静かな開戦
丘陵の陰で、ダリウスがわずかに手を振った。
「――始めろ。」
その合図と同時に、
コージの歌声が響く。
「♪ ワン、ツー、タッ、ドン! ワン、ツー、タッ、ドン! ♪
リズムに合わせていけぇぇぇ!!」
「ワン、ツー、タッ、ドン!!」
投石器が一斉に唸りを上げる。
ゴォン!! バシュッ!! ブワァァ!!
石の嵐が敵前線に降り注いだ。
4. 前線の徴収兵――混乱と恐怖
徴集されたばかりの若者が悲鳴を上げる。
「な、なんだよあれ!!
石が……空から……!!」
「後ろに下がれ! 下がれって!!
……え? 後ろの奴らが来ない……?」
伝令の声が届かない。
それだけではない
後方の弓兵や騎兵は、
ぬかるんだ河原に四苦八苦してしていた。
5. バリスタの一撃――王子の恐怖
前線の混乱を見て、ベルトランは苛立ちの声を上げていた。
「なぜ進めん! 前に出ろ!!
訓練不足の雑兵どもめ!!
弓部隊もなにもたもたしている!!」
その瞬間――
バシュゥゥッ!!
巨大な矢が、ベルトランの馬の真横へ突き刺さる。
「ひっ……!!?」
「殿下、お下がりください!!」
「う、うるさい!!
あんな遠くからあたるか!!!
こ…こんなので……私がひるむとでも!!
ひーーーーー。」
言葉とは裏腹に、膝は震えていた。
その結果、勇ましい声とは裏腹に、少しずつ後退していった。
その一方、渡河中の兵たちは混乱のさなかにあった。
「なんだよ、昨日までほとんど流れていなかったのに。」
「うわ、、、、滑る、、、」
「おい、、、なんか増えてないか。」
「き、、、気のせいだ、、、おい、早くいけ!」
「お。。。おすな!!!うわーーーー」じゃばーーん
「落ち着け!!!水は浅いぞ、落ち着いたら問題ない!!!!」
最前線の徴収兵たちには焦りの色が出始めた。
「援軍、、援軍は来ないのか!」
「弓で援護を!!早く!!!」
わからない程度に増え続ける水が、後方の兵の足を遅くし、
こける、押すなどで隊列が乱れる。
王子たちの本営は川から離れだす。
「俺たち……見捨てられたのか……?」
徴収兵たちの多くが、恐怖がのどを締め付けられた。
誰もが武器を握る手を震わせていた。
訓練の浅い徴集兵には泣き出して上官に殴られる者も出始めた。
6. 降伏を呼びかける歌
アヤが頃合いを見てコージに伝令を送る。
「敵兵の士気が明らかに落ちている!混乱も始まった!!
いまなら、もっと士気を削げる!!!」
その指示を聞いて、コージたち軍楽隊が声を張り上げた。
「♪ 武器捨てろー!捨てたら撃たないぞー! ♪
♪ 降伏したら飯もあるー! ♪
さあ、両手を上げろぉ!!」
その瞬間、丘陵の上に天幕が立ち並んだ。
ミツキが描いた「両手を上げた人間」の図を大きく掲げる。
「……降伏したら助かる……?
あれって……そういう意味……だよな……?
りょ、両手を上げるのか」
一人の動揺が隣の、そのまた隣とさざ波のように伝わり始めた。
7.破滅の号令
「何をしている!!
向こう岸の部隊は何をしている!?
攻め込ませろ!!」
「で、殿下……前線が混乱しています……!」
「ええい、弓隊もほとんど川を渡れなってないのか。なら仕事を与えてやる――」
「ひ、弓隊に何を?」
「督戦を命じろ!!
逃げる者は撃て!!」
その命令こそが――
この軍の崩壊を、決定的に加速させることとなる。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。
もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。
たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。




