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川の違和感 ――「めっちゃ強いやつじゃん!!」

1.王子軍視認

 オルディア丘陵の稜線に立った瞬間、

 風景が一気に開けた。


 眼下の オルド河原。

 乾季により川幅は縮み、

 石が転がる広い河原がむき出しになっていた。


 そしてそこに――

 敵軍二千七百。


 アリア親衛軍全員が一斉に息を飲んだ。


 ハルトが驚いた

「……やっぱり増えてる。

 二千五百……いや、もう少し多いかもしれない。」


 ルークスが答える

「王都周辺でらの補充が追いついたのだろう。

 質はさておき、数だけは揃えたな。」


 アヤは視線を鋭くし、手前の隊列を指した。

「あれ。手前の群れ……完全に徴集兵よ。」


 徴集兵はやる気のなさそうな感じでただぼーっと河原に座っていた

「え、あれで戦うつもりなの?」

 ミツキの問いにダリウスが答える

「いや、あれは前座だ。

 突撃して死んでくれればいい程度の扱いだろう。」


「ひっでぇなオイ!?

 そんな使い方していいの!?」

「古今東西、督戦隊は普通よ。

 逃げる兵は後ろから射られるだけよ。」

「は!? 逃げる味方を射るってどういうこと!?

 現代じゃ完全に戦争犯罪……!」

コージは抗議の声を上げるが、アヤは歴女の観点を見せる。


 ダリウスが現代人の感覚を一蹴する

「ここでは当たり前だ。

 士気の低い兵を無理やり動かすのに、

 もっとも合理的な方法だと言われている。」


「それ……合理的って言うか……地獄じゃない?」


 アリアは苦い表情で兵たちを見つめる。

 手前の徴集兵は明らかに質が低く、

 装備も揃っていない。

 昨日まで農業をやっていたような顔ばかりだ。


 その後ろ――

「……見て。

 あれが本隊。」


 川向こうの陣は、美しいほど整っていた。

 弓兵の列は一直線に揃い、

 騎兵は馬を流れに慣らすように歩かせ、

 隊長らしき人物が川幅を計測していた。


 ダリウスはそれを肯定する

「練度が高い。

 王都のエリート主語隊の残存兵力だな。」


 アヤがそれをみて、

「……川を挟んで分断されているのは……古今東西で悪手なのでは?」

 と敵陣に疑問を呈した。


 ただ、ダリウスは即座にそれを否定した。

「乾季ゆえにな。 浅瀬を渡る計画なのだろう。

 この地は過去に守備側が勝ったと歴史に残る土地。

 その時も乾季だったと聞いている」


「なるほど乾季の川は緩衝材にならないのね。天気までは読めなかった。

 両軍が互いに渡りやすい状況。

 手ごわいわね。」


2.違和感

「でもさ……」

 コージが手をかざして敵を眺めていた。

「なーんか……変じゃない?

 このスカスカ具合。

 いや、言っちゃ悪いけどさ……

 少なすぎない?」


 ルークスが答える

「確かに。王都兵なら、

 雑兵をあんな前に晒さない。」


 ダリウスも応じる

「王子のことだ、兵の損耗を気にしていないのだろう。」


「いや……そうじゃなくってさ……。

 なんか川に違和感が……」


 そこでハルトの地理オタクが爆発する

「川……河原……乾季……農地……水路……」


 ミツキがそれに応じる

「堰?」


 ハルトの脳裏に、数日前の視察の景色が一気につながった。

 グランフィールの農村――

 谷に流れ込む水路――

 その水路の起点にあった、

 いくつもの小さな取水堰。

「……そうだ。

 あの時、農業用水……

 堰がいくつもあって……

 水の流量がコントロールされてた……。」


「取水堰……?」


「あれを……

 農地側を閉じて、暫くして川側を全部開いたら……?」


 アヤが息を呑む。

「……水が一気に増加する。

 乾季で川幅が狭いと油断していたら――

 水攻めが成立する……!!」


 ルークスも同意する

「オルド河原は粘土の土地だ。

 少し水が増えるだけで騎馬は機動力をそがれる……分断できる!!!」


「マジか!!

 じゃあ勝てるじゃん!!

 めっちゃ強いやつじゃん!!」



3.水攻めの裏に


 その瞬間。

「――っ!」

 ミツキが声にならない声を上げた

 全員が振り向いた。

 ミツキは両手で胸を押さえ、必死に声を絞り出した。

「……だ、だって……

 あの堰の水って……

 あの畑に使う水だよ……!?

 止めたら……農村、どうなるの……?

 麦……野菜……全部……

 明日の食卓が……なくなるよ……?」


 風が止んだように感じた。


 コージの顔から笑みが消えた。

 ハルトが拳を握り締めた。

 アヤは目を伏せた。

 ダリウスやルークスでさえ、

 静かに口を閉ざした。


 アリアは何も言わない。

 ただ、穏やかに広がっていた畑を思い出していた。

 ――その畑を

 守りたいと言ったのは、

 つい先日の自分だった。


 そして今、

 その畑を 壊せば勝てる と知ってしまった。


「アリア……さん……?」

 ミツキの絞り出すかのような声に、

 アリアは応じきれず、唇を強く結び、

 深く、深く息を吸い込んだ。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。

もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。

たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。

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