ベルトランの論理――「この国の中心は俺だ」
1.幼き日の嫉妬
あれは七歳のころだ。
庭園で、姉――アリアが歌っていた。
侍女たちが微笑み、兵士さえ足を止める。
「殿下、まるで天上の声でございます……!」
その言葉を聞くたび、
幼いベルトランの胸には鋭い痛みが走った。
(なぜだ。
なぜあいつばかりが褒められる?
王家の後継ぎは、俺だ。俺のはずだ……!)
アリアの母・第一王妃は美しく、聡明で、民の人気は絶大。
対して自分の母は身分の低い第二王妃。
侍従のわずかな視線ですら、幼いベルトランには棘のようだった。
「妾腹の子が……」
「後継ぎはアリア様がよかったのに……」
誰も直接言わない。
だが、ベルトランにはすべてが聞こえていた。
だからこそ――
自分が王太子となる日は、
当然のようにすべてを奪い取ったと思える日だった。
2.第一王妃の死、そして自分の時代の到来
第一王妃が病死した日。
王城は重苦しい沈黙に包まれた。
ベルトランは泣かなかった。
泣けなかった。
(これで……これでようやく俺の時代が来る。)
第二王妃の部屋で祝杯が上がった。
声を潜めてはいたが、幼いベルトランの耳には届いていた。
「もう怯える必要はございません、殿下。
あなた様こそが確実に王位継承者――」
この日から、彼の傲慢は急速に肥大化する。
アリアは悲しみに沈み、歌すら忘れたが、
ベルトランにとってはただの好機だった。
(俺こそ王にふさわしい。
俺こそがこの国を導く。)
そう信じて疑わなかった。
3.砦を破り、英雄として帰還したあの日
東方国境で小競り合いが発生した十六の時が初陣だった。
ベルトランは無謀な突撃を命じた。
軍事的には奇策、奇跡的に天候と運が味方して勝利しただけだった。
だが城下は沸き立った。
「若き王子が砦を落とした!」
「戦の英雄だ!」
民衆の歓声、兵の敬礼、王の満足げな顔。
ベルトランの胸は誇りで満ちた。
(見たかアリア。
お前にはできない。
これこそ力だ。)
この瞬間、
自分には才能があるという誤った確信が固まった。
その後の数年、
ベルトランは東部戦線で挑発を繰り返し、
最初は優勢だったが徐々に反撃され始めた。
だが彼は認めなかった。
(俺が……間違うはずがない。)
4.そして今
「リバトーン領主ヘイデン・グラフトが追放されました。」
「グランフィール、反乱勢力と都市改善の『契約』を結びました。
軍事同盟ではありません!」
報告を聞いたとき、
ベルトランは手にした杯を落とした。
(なぜだ。なぜ俺が負ける?
俺は英雄だぞ……!
戦い方を間違えた?……違う、違う!!)
怒りに任せて王城に駆け込む。
「父上!!リバトーンとグランフィールを
取り返さねばなりません!!
軍を、軍をもう一度――!」
老王は疲れ果てた顔で手を払った。
「……ほうっておけ。」
「たかが一地方都市の混乱だ。
前線へ対応のほうが先だ。
前線が風雲急を告げておる。
そちらへの援軍の準備を急げ」
「父上!!あれは反逆です!!
我ら王家を軽んじる行為ですぞ!!」
「黙れ、ベルトラン。
余は忙しい。」
バタン、と扉が閉まる。
王子は震えた。
(父上まで……
俺を軽んじるのか……?
この国で、俺を見ている者は誰もいないのか……!?)
5.北方に援軍を求める
王城から追い返され、
ベルトランは怒りに震える手で筆をとった。
「ハーバーン領主ロード・クレイトンへ。
我が名において反乱鎮圧のための援軍を要請する。」
副官は驚いて聞き返す
「殿下……これは王の正式命令ではなく、
殿下個人の名義に見えますが……?」
ベルトランは鼻で笑った。
「問題あるか?
私は王太子だぞ。
私の命令は王家そのものだ。」
(王が動かぬなら、俺が動かすだけだ。
北方の領主など、俺の名を聞けばすぐに兵を出す。)
副官は何か言いかけたが、
ベルトランには届かない。
その数日後、返書が届いた。
「殿下、北方領より返答が……!」
「読め!」
副官は慎重に文を開く。
「『要請は確かに届いた。
ゆえに兵を前線へ送った。
王都の動向を待つ。』」
「……ふん。ようやく動いたか。」
「……で、殿下。これはその……」
「ん、なんだ?前線に送ったということは、
俺の号令を待つ態勢ということだろう。」
(俺の名で北方が動いた。
やはり俺は王族にふさわしい。
この国の中心は俺だ。)
ベルトランは満足げに笑った。
6.焦りだけが肥大していく
(リバトーンを失った?
グランフィールが動いた?
だが……まだ俺には北方がいる。)
(俺を裏切る者など、この国にはありえん。)
その自信だけが、
彼の暴走を加速させていった。
アリア 「弟よ、あなたの苦しみは理解するわ。
このままだとあなたは典型的な無能王子。ざまぁされるだけ。
今、引いてくれたら仲良く暮らせるの。引いて、お願い」
ベルトラン “Ohne die Enthusiasten bist du nutzlos.”
アリア 「え、なに?」
ベルトラン “Mit nichts als deinem Gesangstalent bist du nutzlos.”
アリア 「…………」
ベルトラン「この程度できなくて、どうやって外交するつもりだ、この無能」
アリア 「ママー。弟がいじめるーーーー」
ベルトラン「ふん。生成AIがあれば、知恵などすぐ手に入る
次回 王国再建記 英雄召喚ついに成功すーー三大魔法で敵を蹂躙
私が命を掛ければ、こんなこと簡単だったな」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。
もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。
たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。




