運命の会談 ――「この国は一歩、前へ進めます」
領主館の会議室。
マルクスが重厚な椅子に腰掛け、アリアたちを見据えていた。
「では聞こう。
昨日の視察――何か打開策は見えたか?」
空気が張りつめる。
最初に答えたのは、ハルトだった。
1.風車の提案
ハルトは厳しい結論から先に述べた
「取水口を守るのは……不可能です。」
室内の空気が揺れた。
「……ほう?」
「山が近すぎる。敵からすれば狙ってくださいといわんばかりの構造。
兵力で守ろうとすれば、あなた方の疲弊は止まりません。」
ルークスも静かにうなずく。
「守備兵を全取水口に配置するのは現実的ではない。」
マルクスは歯を食いしばる。
「ではどうする。水がなければ農地は死ぬ。」
「そこで……水路そのものの受け皿を変える、という方法です。
水車の増設は?」
マルクスは重い声で返す。
「考えた。しかしあそこより下流では流れが緩い。
水車はある程度の流れがなければ動かん。」
「でしょうね。」
「では、風を使いましょう。」
マルクスの目が細くなる。
「風車なら取水口を守らずとも水を汲み上げられる。
だがこの土地の風向きは安定せん。
農民が作った風車は一年と持たず壊れた。」
「その通りです。
普通の風車では絶対に無理です。」
ミツキが前に進み、図面を開いた。
ハルトが堂々と宣言する。
「だから普通じゃない風車を作るんです。」
ミツキの描いた図には——
山の風を捉える尾翼を持つ風車が描かれていた。
「山岳地帯特有の山風・谷風は、
時間ごとに方向が変わります。でも――
この変化に合わせて、風車が自動で向きを変えればいい。」
「自動で……?」
「軸受けと尾翼を組み合わせれば、
風向きに合わせて勝手に回る風車になります。」
「こういうの描くの楽しかった……!」
エリアスが思わず漏らす。
「……すごい。技術が完全に次元違う。」
マルクスは図面を凝視した。
険しかった表情が、徐々に驚愕へ変わっていく。
「……風が読めるのか……
いや……風に読ませるのか……」
「これが実現すれば、
取水口ではなくグランフィール全体が救われます。」
マルクスは拳を握った。
「……可能なのか?」
「可能です。
そのために、リバトーンの職人たちの支援も受けます。」
部屋の空気が一気に明るくなった。
3.経済と安全保障の提案
だが——アヤが静かに口を開く。
「……でも、技術だけでは足りません。」
全員の視線がアヤに集まる。
アヤは地図を広げ、
指で4つの地域を順番に示した。
「山岳民族 → グランフィール → リバトーン → 鉱山」
この4つ、今はそれぞれがバラバラですが……
つなげることで、全員が得をする循環が作れます。」
「……循環とは?」
アヤは深く息を吸い、論理を積み上げる。
「まず鉱山ですが、今後の開発を考えると――
木材が必ず不足します。」
ハルトが補足する。
「坑道の支保材、荷車、工具柄、建材……
鉱山は鉄より木を食う産業です。
精錬炉も薪が必要だし、いずれ限界が来ます。」
「でも、鉱山には売れる鉱物がある。」
マルクスの表情が変わる。
「グランフィールには木工技術がありますよね?」
「……農具の加工は得意だ。」
「その技術を発展させれば、
鉱山用の木材加工で新たな雇用と利益が生まれます。」
「そしてリバトーンは……
鉱山と農業都市のちょうど中間にあります。」
「仲介地点となれば、
倉庫業・運送業・市場が発展し、莫大な利益が入る。
商人たちの活気も戻ります。」
エリアスの目が鋭く光る。
「そして最後に、山岳民族。」
アヤはここで声を落とした。
「彼らは木材と薬草に強い。
でも、市場がありません。」
マルクスがうなづく
「確かに……襲撃は奪うしか手段がないからか。」
「そうです。
でも取引さえできれば――
『襲撃するより、物を売ったほうが儲かる』
敵対の理由が、経済で消えます。」
「もっといいことがあるよ!」
とコージが付け加える
「さらに彼らの襲撃が減れば、羊毛や肉の保存食などの生産も増え
それらをリバトーンに送ることができるようになれば、
さらにもっとグランフィールは儲かります!
アゴラがもっと栄えて、歌がもっと響き渡るようになります!」
「ちょ、ちょっと、私が言おうとしたのに!」
「アヤ、俺が商学部ってこと忘れないで!!
歌っているだけじゃないの。」
エリアスは考え込んだ後、堂々と言った。
「……コージも言うように、これは政治ではなく商業です。」
「商業……」
「鉱山が木を買う。
農業都市が加工して売る。
山岳民族は木材や薬草を出す。
リバトーンは流通で儲かる。
誰も損をしない。
全員が利益を得る商業循環だ。」
彼は胸を張った。
「これは……
仲介する価値があります。
ギルドとしても、正式に動けます。」
アリアの胸が熱くなる。
マルクスは腕を組み、瞑目した。
「……農民を守りつつ、
街を豊かにする道があるというのか。」
「はい。
そのために昨日、現場を見て回りました。」
ミツキが絵を掲げる。
そこにはどこでこれらのアイデアを実現すればいいのか、
簡単な地図がわかりやすい記号と共に描かれていた。
・取水口
・山斜面
・風の流れ
・水路の段差
・加工場として使える谷間の地形
「……ここまで把握しているのか。」
「4人の知恵でグランフィールを救いたいのです。」
アリアは力強く言った。
沈黙が落ちた。
4.マルクスの逡巡と決断
マルクスはしばらく沈黙した。
そして、アリアに視線を向ける。
「……殿下。
この取引は、確かに農民の命を救うだろう。
だが、私はまだ王家への忠義を捨ててはいない。」
アリアは静かに一歩前へ進んだ。
「忠誠を捨ててほしいわけではありません。」
「今あなたが救おうとしている農民たちも、
陛下の民であることに変わりはありません。」
「どうか……
この国の未来のために、
最良の選択をお取りください。」
その眼差しはまっすぐで、澄んでいた。
マルクスは深く息を吸い——
「……わかった。」
ゆっくりと立ち上がった。
「この取引――
受けよう!!」
「……ありがとうございます!」
「よし、次は設計だ。」
「風車描きたい……!」
「明日はチーズを食べるぞ!」
「グランフィールライブ決定ぃぃ!!」
「「「気が早い!!」」」
アリアは胸に手を当て、小さく微笑んだ。
「これで……
この国は一歩、前へ進めます。」
またまたまたですが、
経済循環について、絶対に提案するならハルト。
Transport Fever 2のサプライチェーンマネジメント。
彼ならこのゲームしているはず。
水車→風車つながりでハルトに活躍させたから、
ハルトの出番増やさないために、アヤに渡した。
でも、それだけじゃあ、彼女が万能になる過ぎるので、
コージが商学部という設定を思い出して、
アヤだけに言わせないようにしました。
まあ、この辺も作劇場の都合ということでお許しください。
ということで、この二人はいつもこんな感じで言い合っているはずです。
アヤ「ちょっとハルト! 輸送ルートの確保ばっかり考えて、
資源の枯渇や外交戦略が疎かになるのは、
文明の指導者として失格よ!」
ハルト「何言ってるんだアヤ!
戦略ばっかりで、肝心のサプライチェーンの効率が悪いと、
どれだけ立派な国土計画も無駄だろ。政治の前に物流設計だ!」
コージ「うわぁ、また始まったよ、
シヴィライゼーション廃人と
トランスポートフィーバー狂の喧嘩だ!」
ミツキ「どっちの言い分も分かるけど、
図面を投げ合うのはやめてよ~!」
アヤ「もういいわ! こんなところで内政の優劣を争うのは
時間の無駄よ! 世界の広さを知りなさい!」
ハルト「望むところだ! 最適化されていない海図は、
俺の輸送魂が許さない!」
アリア「次回 歌姫革命譚 大航海時代---新たな大陸で活路を開け
ま、、、まずは、アストリア王国を救ってください。
あと、この世界って丸いんですか?
日本って、そういえばどこ?黄金の国?」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。
もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。
たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです




