商業ギルドと鉱山の取引――「価値があるなら取引をすればいい。」
1.エリアスの焦りと、ロッシュの制止
リバトーンの市街が王子の略奪で混乱する中、
ギルド支部の一室で、
員エリアスは机を叩いた。
「ギルド長! このままではリバトーンが壊れます!
鉱山の方に加担して、王子や領主を止めるべきです!」
ロッシュは、淡々と返答する。
「落ち着け、エリアス。
商人は王家にも反乱にも味方しない。
価値と契約にだけ味方する。
それが商業ギルドだ。」
エリアスは食い下がる。
「しかし……鉱山側は間違いなく街を救います。
あれだけの活況、あれだけの規律……
彼らは価値があります!」
ロッシュの目が細くなる。
「……ようやく分かったな。」
「え?」
「価値があるなら取引をすればいい。
肩入れではなく商売という形で。
それならギルドの原則も破らない。」
エリアスは目を見開いた。
「……つまり、鉱山と正式に取引を?」
「そうだ。
反乱勢力への支援ではなく、
新規顧客の開拓としてな。」
2.取引を持ちかける——鉱山側の出した答え
その日のうちにエリアスが鉱山へロッシュの名代として出かけた。
ロッシュの伝言は短かった。
「鉱山に売れるものはあるか?
ギルドは買う用意がある。」
ルークスが返事をした
「鉄鉱石の生産は増えている。
近衛が残した馬で生きているのを買ってくれ。
足が折れたのはつぶして肉にしたから、それも干し肉にして売ろう。
あと、近衛たちの武具や防具の装飾品もいい値段で売れると思うが…」
ハルトがそれに付け加えた。
「それらも確かに売れると思いますし、
高く買ってください。
ただ、おそらくそれ以上に売れるのは、
……効率化の秘密だと思いますが、いかがですか?
軸受け、溝と規格化、ステアリング……
あとは水車による粉挽き……?」
ミツキは不安げに付け足した
「図面があるから……売れる技術にはなるかも。」
アリアは不安げに口を開く。
「売れるんですか。ものじゃないのに?
あと、売れたとして、この鉱山の秘密にしておいたほうが
良いのではないですか?」
アヤは微笑んで言う。
「おそらく、売れる。
そして、むしろ、広めたほうがいいのよ。
生産性の高い鉱山が複数できれば、
王国の中で鉱山労働者の発言力が強くなる。
その時、鉱山側が革命の中核に立てる。」
ダリウスが腕を組んで頷いた。
「……いい案だ。」
エリアスはにっこり微笑んで、
「さすがだ。
単なるものより仕組みのほうがはるかに重要。
あなた方は何の価値が一番高いかをご存じだ。」
『効率化技術の販売』 が正式に決まった。
3.近隣鉱山の視察——そして衝撃
数日後。
リバトーン商業ギルドを経由して、
二つの近隣鉱山から責任者が到着した。
・石炭鉱山の監督:元商務省の左遷組
・銅鉱山の責任者:ケガで飛ばされた元国営鍛冶長
二人は鉱山に足を踏み入れた瞬間、言葉を失う。
「……なんだ、この活気は?」
「奴隷鉱山で……歌が聞こえる?」
坑口に広がる光景は、
彼らの知る牢獄のような鉱山とは全く違っていた。
坑夫たちは笑って働き、
水車は回り、
トロッコはスムーズに動き、
護衛と坑夫の間に緊張はない。
「……これは、奴隷の刑場じゃない。
共同体だ。」
さらに夕刻——
アリアの歌が響いた。
澄んだ声が、
夕焼けの鉱山に広がる。
二人は圧倒され、立ち尽くした。
「……これが……噂の王女殿下か……?」
「この歌……兵や労働者の心そのものを支えている……」
石炭鉱山監督は拳を握りしめた。
「俺は……こんな場所を作りたかった。
だが本省は数字と罰則だけしか見なかった……!」
銅鉱山責任者も呟く。
「こんなに活気があふれた場所なら
俺も怪我をせずにもっといいモノを作れた」
二人はどちらともなく王女の前に立った。
「王女殿下……
あなたの歌が……
俺たちの最後の誇りを呼び覚ました。」
二人はその場で頭を下げた。
「あなた方の味方をします。
どうか……我々にも同じ道を歩ませてください。」
その瞬間——
鉱山はひとつの地域から、
広がりを持った勢力 へと変わった。
◆ 4.ギルド長ロッシュ、静かに微笑む
後日。
ギルドへ戻ったエリアスは、
視察成功の報告をロッシュに伝えた。
「鉱山は、ただ強いだけでなく……
誇りがありました。
王女殿下の歌で人が変わるくらいです。」
ロッシュは書類を閉じた。
「……そうか。
ならばもう心配はいらん。」
「商人はな、エリアス。
価値を持つ者はきちんと育てないといけない。
そして、育てた価値を最初に掴むのが、我々だ。
そうすることで一番儲けることができる。」
エリアス
「……はい、ギルド長。」
ロッシュは静かに笑った。
「さあ——
彼らにもっと価値を生み出してもらおう。」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。
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たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。




