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鉱山決戦終盤――「一人ずつゆっくりお帰り下さい」

 1.戦の朝——半分しか騎兵じゃない


  夜明け。

  ベルトラン王子の近衛軍は、

  すでに戦闘前に壊滅寸前だった。


 誇り高き近衛の姿はもうそこにはなく、

 糞尿まみれの野営でほぼ眠れておらず、

 士気は地の底であった。


 それより問題は馬であった、

 副官達が慌てて報告する。

「殿下、騎兵として動かせる馬は……

 半分の250ほどです。

 残りは……脚をやられているか……

 騎乗を拒み暴れております……」


 ベルトランは唇を噛みしめた。


「……では徒歩で行け!

 鎧を脱げ!

 軽装で強行だ!!」


 徒歩組250名は鎧を脱ぎ捨て、

 鎖帷子すら置いて、

 ただの疲れた歩兵となっていた。



◆ 2.初めての敵影


 山道を進むと、

 視界がひらけた平坦な場所に出る。


 坑夫たちが——

 初めて姿を見せた。


「いたぞ!!」

「やっと出てきやがったな!!」


 しかし敵は笑っていた。

 それも、不気味なほどに。


「よう。よくこんなとこまで来れたねぇ。」

「山登りは都会っ子には厳しいかったんじゃね。」

「今から帰れば糞尿食らわずに済むぜ。」


 ベルトランが叫ぶ

「この地形なら騎兵有利だ。やはり奴らはあほだ。

 皆、突撃だ!!

 一気に蹴散らせ!!」


 騎兵250が突進を開始する。

 坑夫たちは走って逃げるが、当然馬のほうが速い。

 山の向こう側に逃げたももの追い付かれると思ったときに事件が起きた



3.騎兵突撃、柵で完全停止


 カーブの先には地面に埋められた槍柵が姿を現した。


「なっ!? なんだこれは!!」

「馬が止まった——!?後ろ止まれ止まれーーーーーーー」


 柵が大量に重ねて埋められているため

 馬の脚が突っ込むと抜けなくなる。


 馬は半狂乱となり、

 騎兵たちは地に叩きつけられた。


「くそ!!

 馬が言うことを聞かねえ!!」


 後方から坑夫が罵声を飛ばす。


「おい、近衛!!

 馬の扱い、へったくそだなァ!!」



4.上から熱砂の雨


 柵で動きの止まった騎兵たちの頭上で、

 すでに坑夫たちが準備を終えていた。


「いくぞォ!!

 せーの!!」


 ジャバァァァアア!!!

 熱したが砂が、

 騎兵たちの上に一斉に落とされた。


「ヒヒィィィィィィィン!!!!」

「ギャアアアアア!!」


 馬は完全にパニック。

 暴れ狂い、騎兵を踏みつけ、

 隊列はあっという間に崩壊した。


「馬が……味方を踏んでる!!」

「やばい!! 近づけない!!」


 ベルトランが叫ぶ

「俺の騎兵がぁぁぁぁ!!

 何をしている!! 進め!!」


 坑夫たちは大笑いしている。


「砂まみれの騎士様方〜!!

 夜のフン尿と汚れまくり―!!」


 コージのあおりが最高潮に

「はっはっは!!!

 コゲ馬ダンス完成だぁぁぁ!!!」


 アリアは苦笑する

「それは……名前がひどいですよコージさん……」



5.徒歩部隊の頭上へ——石の嵐


 騎馬隊の惨状を見て徒歩の250が、

 隊列を整え直して進もうとした瞬間。


 ゴロロロ……ッ!


 頭上の崖から、

 坑夫たちが抱えられるサイズの石を

 大量に転がし始めた。


 ドドドドド!!!

 ガンガンガンガン!!!


「ぐあっ!!」

「頭が割れる!!」

「盾がない!! 鎧もない!!」

「なんで俺たちだけ歩兵なんだよ!!」


 アヤが観測台で呟く。


「……徒歩部隊への打撃、成功。

 混乱は完全に極まったわね。」


 ハルトも同意する

「ミツキの図があれば連携が早い。

 各隊、予定通り動いてる。」


 ミツキも自分の役割を果たせたことに安堵している。

「みんな石のサイズまで守ってくれた……

 すごい、こんなに息が合うなんて……」


6.最後尾——精鋭弓兵20名の殲滅射撃


 そして最後に、

 近衛の退路側へ

 ダリウスの元部下——精鋭弓兵20名が現れた。


 暗い影の中で、

 弓を引き絞る。


「目標は馬だ。混乱を巻き起こすぞ」



 シュッ!!

 シュシュシュッ!!!


 20本の矢が、

 一斉に近衛の背側へ飛び込む。


「ぎゃああああ!!」

「後ろから!?!?

 なんで後ろに敵が……!!」

「馬が……! 馬が!!」


 副官が進言する

「殿下ッ!!

 も、もう無理です!!

 隊列が……全て崩壊……!」



7.王子、逃亡


 ベルトラン王子の顔は恐怖に染まった。


「こ、こんなはずは……

 俺は次期国王だぞ……

 この俺が……!!

 い、一度!!

 補給物資のところで……兵を立て直す!!

 よいか!立て直すための策だ!

 皆はここ踏ん張れ!! すぐ戻って来る!!」


 副官達は冷めた目で見ていた。


 ベルトランは数名の側近を連れて

 山道後方へ必死に走り去った。


「ほら、後方への道はある。一度退いて次に戻るぞ」


 これが最後の罠だとも知らずにベルトランは駆け戻っていった。



0.前夜:アヤの退路を残せ作戦


 決戦前夜の戦略会議で罠についてハルトが聞いた

「山道の退路は全部岩で塞ぐんだよね?」


 アヤは即座に首を振った。

「だめ。あえて完全には塞がない。

 馬一頭がやっと通れる程度でいいわ。」


 ミツキがたずねる

「え……? どうして?」


 アヤが応える

「兵を追い詰めすぎると死兵になる。

 死ぬ覚悟の兵は、想像以上に危険なの。」


 ダリウスも頷く。

「追い詰めた弱兵ほど無謀な突撃をしてくる。

 腐っても奴らは近衛、一対一なら圧倒的に強い」


 アヤは山の簡易図に細い退路を描き足した。

「逃げ道を細く長く残すことで、

 近衛兵は逃げる方を選ぶ。

 恐怖に支配されている軍は、戦うより逃げることを優先するから。」


 アリアは理解して感心した。

「……つまり……

 引かせるために退路を残すということですね。」


「そう。

 追い詰めないすぎないことでこちらの被害は最小限に

 兵の少ないほうが兵の多いほうに勝つための最大の知恵よ。」


 ハルトはその発想に驚いた。

「……つまり……

 勝っているのに優しくしてるわけじゃなくて……

 合理的に勝つための逃がし道ってことか。」

「そういうこと。」


 こうして

 馬一頭通れるだけの退路を意図的に残す方針

 が決まった。



8.近衛兵、士気完全崩壊


 王子が逃げたという事実が

 一瞬で軍全体に伝わる。


「殿下は……?」

「逃げた……らしい……」

「終わった……」

「誰が残るかよ!! 俺は死にたくない!!」


「怪我人? 知るか!!」

「俺の命が先だ!!」


 味方の負傷者を蹴り飛ばし、

 必死に山道を逃げる兵たち。


 だが退路は岩に塞がれ、

 逃げるほど狭くなる。


「おい、早く通れ!!のんびりするな!」

「押すな!!狭いんだぞ!!!」

「やめてくれ!!」


 坑夫たちは上から叫ぶ。


「おう、帰り道はあっちだぞ〜!!

 一人ずつゆっくりお帰り下さい!!」

「ほうら、鉱山土産だ。熱砂でも持って帰りな。」

「夜寒かったろう。暖かくしておかえりーーー」


「あづいーーーー」



9.最後の突撃


 ダリウスとルークスが最後の檄を飛ばす

「敵は混乱している。ここからが兵士としての俺たちの仕事だ」

「全員、抜刀、残った敵をたたき出す!!!」

「おーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 混乱している敵に向けて、山の陰から、山の向こうから一斉に突撃が始まる。

 これで終わると、誰もがそう確信した。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。

もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。

たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。

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