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鉱山決戦中盤――「地獄の夜。戦う前に心が死んでいく」

1.夕方——近衛、野営準備ゼロに気づく


 日が傾く頃。

 山道はすでに狭く、

 近衛はのろのろとした速度でしか進めなかった。


 ベルトラン王子は苛立ちを隠せない。

 「……まだ半分も進んでいないのか!?」


 副官は汗を流しながら答える。

 「殿下、馬が全く言うことを聞かず……

 それに、泥と石が——」


 「言い訳はいらぬ!!」


 その時、兵の一人が恐る恐る言った。

 「で、殿下……

  じ、実は……野営の準備が……」


「……何?」


「荷馬車が……崖のぬかるみで動けず……

 野営具が全部、その……後方に……」


 野営具(テント・乾燥薪・予備食料)のほとんどが

 山道の手前に置き去り。

 つまりこのままだと用意もないまま——

 この位置で野営するしかない。


 夜の山は危険だ。

 山賊、狼、冷え込み……

 だが退路は狭まり、戻るには時間がかかる。


 副官が尋ねる。

「殿下……戻りますか?

 日暮れです、このままでは——」


 ベルトランは歯ぎしりした。

(戻れば逃げたと思われる……

 姉上を追う俺が? 国中の笑いものだ……)


「王子、ご決断を!!」

兵たちは決断の瞬間を待ちわびていた



2.その瞬間、運命の罠——大岩落とし


 王子が決断しあぐねていた その瞬間。

 山の上から、合図の笛が響いた。

 ピィィィィ——!

 ハルトが旗を振る。


 ミツキの図を見た坑夫たち20名が、

 用意していた楔を一斉に抜く。


 ゴゴゴゴゴ……ッ!!!!

 次の瞬間——

 山肌の上に待機していた巨大な岩が

 ゆっくりと、しかし確実に動き出す。


 ドォォオオオオオオオン!!!!

 地面そのものが震え、

 山道後方が馬一頭分くらいの道を残して完全に塞がった。


 「な……何が……!!?」

 「退路が……!!」

 「岩で……塞がれた……!!」

 「殿下……っ!

 退路が…………!」


「……は?

 た、退路……?」


 ぐら、と馬が震えた。

 ただ、その直後の報告にベルトランは安堵した。


「うろたえるな。奴らは失敗した。

 道は完全に閉じてない。最低限の用意だけすぐにもってこい!!

 これなら野営もできる!」


「確かに。」


「素人の罠はこんなものか。道もふさげない。誰も倒せてない」


そう、まだだれ一人死人も脱落者も出ていなかった。



3.糞尿で汚れた食料と水——内側から腐る兵


 山の上で撒かれた糞尿は、

 近衛の水筒や食料袋にも降りかかっていた。


 「これ……食えるか?」

 「匂いが……無理だろ……」

 「俺のだけじゃねぇ、全部汚れてる!!」

 「どうすんだよ……」

 「おい、俺のパン返せよ!!」

 「ふざけんな、俺の水筒だ!!」

 殴り合いになりかける。


 副官は震えていた。

(……これは……野営じゃない……

 地獄の入り口だ……まさか誘い込まれた……)



4.夜がきた——コージの精神崩壊歌


夜になり、

兵が疲れ切って座り込んだ頃。

山中の暗闇から……

あれが聞こえてくる。


コージの、例の歌だ。

「う〜え〜か〜ら〜〜

   ふ〜ん〜にょ〜う〜〜

     お〜ち〜る〜お〜ち〜る〜〜♬」


「やめろぉぉぉぉ!!」

「寝られねえ!!」

「声が……遠くから……何人も……!」

「頭がおかしくなる!!」


ベルトランは叫ぶ

「黙れぇぇ! 姿を見せろ!!!」


しかし返ってくるのは、

「お〜ま〜え〜ら〜

  ね〜む〜れ〜る〜と〜

    お〜も〜う〜な〜よ〜〜♬」


アリアは洞窟でため息をついた。

「……コージさん……

 下品すぎます……

 でも……ちょっと笑ってしまう……」


ミツキはまたも笑いながらうなずく

「姫様!? ダメですよ!!」


アヤはまたも冷静に突っ込む

「やっぱり……これは心理兵器よ……」


ハルトは疲れていた

(コージ……天才……そして最低……)



5.さらに追い打ち:弓兵部隊の奇襲


深夜。

疲れ切った近衛兵の警戒が薄れたころ。


影が山の上から滑り降りた。

——ダリウスの元部下、精鋭弓兵20名。


彼らは声も出さず、構えを取る。

目標——

馬。


指揮官が静かに手を振る。

次の瞬間、

シュッ……!

 シュッ……!

 シュッ……!

20本の矢が、


暗闇の中で馬の脚元へ飛び込んだ。

グルルァァァア!!

 ヒヒィィィィィン!!!


馬が暴れ、


近衛の陣が一気に崩壊した。

「うわああああ!!!」

「誰だ!? 敵か!? 敵なのか!?」

「弓だ!! どこだ!! 何も見えない!!」

「馬が狂った!! 押さえろ!!」


テントは倒れ、兵は踏まれ、

物資は散乱し、

悲鳴と怒号が夜の山にこだまする。


ベルトランは混乱の中で叫んだ。

「反撃しろ!!

 どこにいる!? どこから撃ってきた!!」


副官も返答する

「見えません!! 暗闇から……っ!」


ベルトランが叫び返す

「何もかも暗い!! 兵を起こせ!!」


兵も返事する

「起きてます!! 叫び声で!!」

一睡もできない夜が続いた。


挿絵(By みてみん)


6.決戦の朝

太陽が昇り始める。


近衛の野営地は——

糞尿まみれ、馬は暴れ疲れ、

兵たちは眠れず疲労し、

不安で顔が土色になっていた。


ベルトランの目には

隈が深く刻まれていた。

「……っ……

 なぜ……誰も姿を見せない……」


副官が進言する

「殿下……兵の士気が……限界です……」


「だ……黙れ……

 勝つ……勝つのだ……

 妹と奴らを捕らえるまで……

 俺は……王になる……!」


その頃、

山の上ではアヤ・ミツキ・コージ・ハルト、

そしてダリウスとアリアが立ち上がっていた。


「……いい頃合いね。」

「作戦図、全員に配り済み。」

「声はいつでもいける!!」

「これで……決着をつける。」


ダリウスは剣を握り、

静かに号令を出した。

「——行くぞ。

 決戦の朝だ。」

ここまで読んでくださってありがとうございます。

基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。

もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。

たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。

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