鉱山決戦前半――「近衛の兄ちゃん、これ浴びな!」
いよいよ鉱山決戦始まりました。
1.王子の陣頭指揮
山のふもとで、
金糸の外套を翻してこの絵たちに号令したのは——
第一王子ベルトラン=ベルフォード。
「はーーーっはっは!!
この程度の山、散歩みたいなものだな!
では全員すすめ!!」
近衛兵は緊張するどころか、
殿下のご機嫌取りに必死だ。
「流石です、殿下!」
「敵など殿下の前には影すら落としません!」
ベルトランはご満悦で笑う。
「姉上もこの山に隠れたらしいが……
たっぷり後悔させてやろう。」
それは、
彼自身が後悔する最初の一歩だった。
2.ハルト&アヤ、信号監視台へ
鉱山側。
ハルトとアヤは
山の中腹に作った監視台から
望遠鏡を覗いた。
「……バカみたいに王子が前に出てるよ。
兵の統率とか全く考えてないわね。」
「やっぱり……戦う気ないんだな。
勝ったつもりで山に入ってきやがる。」
アヤは黒炭をペン代わりに走らせながら言う。
「隊列の乱れ、馬の挙動、装備の重さ……
この山道では致命傷。
噛み合ってない軍隊ほど怖いものはないわ。」
ハルトは頷く。
「じゃあ、ミツキに伝えよう。
例の場所まであと少しだって。」
合図の旗を振る。
3.伝令にミツキの絵が神活躍
ハルトの合図を受けた伝令は、
山の各所へ走る。
だが手に持っているのは、
ミツキが描いた色つきの簡単な地図。
・丸=敵
・三角=味方
・×=危険
・岩のマーク=落石ポイント
・赤線=通路が塞がる場所
・青線=罠を作動させる位置
伝令が地図を見て走ると、
坑夫たちは一目で理解した。
「おお!! ここで土を落とすのか!!」
「こっちは石と砂を準備しろってことか!!」
ミツキの図は、
文字の読めない坑夫にも直感で刺さった。
伝令たちは口々に言う。
「これ……分かりやすい……!
ミツキの図があるだけで伝達が何倍も早い!」
「現場で伝わる図って一番価値あるのよ……
本気であなた天才よ、ミツキ。」
アヤも同意した。
「えっ……そんな……(照)」
ハルトは本気で感謝していたが少しだけ悔しい思いをしていた。
「本当に見やすい地図。これならだれが見てもわかる。
地図は本来、鉄オタの出番なのに…………
なんか悔しい。」
_4.コージ達の嫌がらせ歌が山に響く
そして——
静寂を破る音が山に響いた。
「へーーーーーい!! 近衛の兄ちゃんたち〜!!
こっちのフン尿浴びていきなァ〜!!」
坑道上のコージの歌(?)が爆発する。
♬
「お〜ま〜え〜の〜
きゃくぅ〜は〜
す〜べ〜る〜す〜べ〜る〜〜〜〜〜」
♬
「う〜え〜か〜ら〜
フ〜ン〜にょ〜う〜
お〜ち〜る〜お〜ち〜る〜〜〜」
……字面にすると間抜けだが、
なぜか 妙にリズムがよく耳に残る。
アリアが小声で言った。
「……これ……ひどい歌ですね……
でも……ちょっとだけ……クセになるかも……」
ミツキが苦笑しながらうなずく
「姫様、だめですよ……!」
アヤは突っ込みを入れる
「あのセンスは……軍楽隊より……芸人……」
ハルトも苦笑する
「まあ……士気が上がってるからいいか……」
坑夫たちは笑いながら罵声を飛ばし、
逆に団結が強まっていく。
5.近衛隊、ますます士気崩壊
山道の下。
近衛兵は完全に困惑していた。
「なんだこの歌!!」
「頭から離れねぇ!!」
「うるせぇ歌だが……ちょっとだけ癖になる……くそ!!」
苛立つ声が上がる中、
またもや崖から 石の雨 が降ってくる。
「うわぁっ!!」
「盾を上げろ!! 顔に……ッ」
だが盾を上げれば馬が制御できず、
次々に騎兵が転ぶ。
ベルトラン王子はどなる。
「貴様ら!!
たかが石ころで何を慌てている!!
しっかり立て!!」
副官が小声で耳打ちする。
「殿下……このままでは——」
「うるさい!!
敵はただの坑夫だぞ!?
姿を見せたら一撃で終わりだ!!」
その言葉とは裏腹に、
兵たちはすでに疲労・不安・苛立ちで
顔が青ざめていた。
6.嫌がらせ三連撃で近衛の心が折れ始める
坑夫たちが一斉に叫ぶ。
「せーーーーーの——!!!」
まずすべる岩くず撒いたら、馬が滑り、
騎兵の足となる馬の足取りが止まる。
糞尿バケツ投下したら、臭いだけでなく、
笑われる恥辱で怒りMAXとなる。
この恥辱と怒りは冷静な判断を奪い、
持久力が確実に低下する。
石つぶての雨は地味に痛い上に、
→盾の上げ下げで体力が削られる
そしてコージの悪魔の歌。
♬
「お〜ま〜え〜の〜
か〜お〜に〜
で〜か〜い〜う〜ん〜ち〜〜〜♬」
「やめろ!!」
「歌うな!!」
「笑っちゃうだろ馬鹿ぁ!!」
敵は見えない。
罠は止まらない。
近衛は進めば進むほど士気が削られる。
ベルトランは歯ぎしりした。
(……くそ……くそ……!!
なぜ姿を見せない!?
出てこい、卑怯者ども!!
俺の凱旋パレードの邪魔を……!!)
だがそれは、
彼らが もっと深い罠に誘導されている証拠 だった。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。
もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。
たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。




