表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/59

鉱山、覚悟の一日 ――「奪われた名前を取り戻し、ここで生きるために」

1.ディラン、名前を取り戻す

ディランが背を向け、

「……俺は明日の朝、動く」と言い残した夜から一晩。


朝日が昇るころ、

彼は坑外の古い作業小屋へ静かに向かった。


そこには、囚われの鉱夫となった元部下たち。

かつて彼に仕えた兵士たちが数十名作業をしていた。


顔を上げた男のひとりが目を見開いた。

「…………っ!!

 た、ディラン、ここには近づかないはずでは……?」


ディランはゆっくりと口を開いた。

「——ああ。

 だが今は、必要だ。」


その横に立つアリアは申し訳なさそうに頭を下げた。

「身分を隠していました。

 すべての責任は……わたしにあります。」


部下のひとりが膝をついた。

「なぜ……副将と、王女殿下が……ここに……?」


ディランは淡々と告げた。

「ディランの名前は今捨てる。

 俺の本当の名は——

 ダリウス・エインスレイ。

 今から王女護衛隊隊長だ。」


全員の目が大きく見開かれた。



2.事情をすべて明かす


ダリウス(ディラン)は、

落ち着いた声で事実だけを伝える。

・第4召喚で「味方人質」が使われたこと

・その中に 部下たちの家族 が含まれていたこと

・王子ベルトランが全てを指示したこと

・鉱山の全異世界人+王女は処分対象であること

・近衛がすでに出立していること


部下たちは凍りつき、

やがてゆっくり拳を握った。

「……俺たちは……ただ黙って働いて……

 家族が無事に生活する日を願っていたのに……!」


「やるしか……ねぇな。

 副将が、副将に戻って……

 王女殿下がここに来ていたなら……!」


アリアは静かに頭を下げる。

「すみません。

 でも、もう黙っているのは、私たちのせいで

 罪ない者たちが殺されるだけの未来は……嫌なのです。」


元部下たちは一斉に立ち上がった。

「副将……いや、ダリウス様!

 俺たちは、あなたに従う!!」

「王家に殺されるくらいなら……

 副将と共に戦って死ぬ方がマシです!!」


その声に、

ダリウスはほんのわずか、目を伏せた。

(……すまん。

 守れなかった。

 だが——ここからは守る。)



3.勝ち方の提示——アヤ

元部下たちが味方に加わり、

打ち合わせの場に4人も合流した。


その中でアヤはまだ紙も図もないまま、

ダリウスと丁々発止で議論を繰り広げ始めた。


「近衛は精鋭だけど、

 兵の主体は騎乗戦。

 馬で突撃してこそ力を発揮する軍隊。そうですね」


ダリウスが頷く。


アヤは続けた。

「でもこの鉱山……

 崖と谷ばかりで馬が入れない場所だらけでしょ。

 つまり——」


彼女はまっすぐダリウスを見た。

「彼らの強みがすべて死ぬ戦場なの。

 勝ち目はある。」


皆が息をのむ。そしてしばらくの沈黙。


その静寂を破ったのは、ダリウスだった。

「……俺も同意する。

 騎兵主体の近衛は、こうした山岳地帯は苦手だ。」

「騎馬の突撃は封じられ、

 重装備は足場で役に立たず、

 馬を捨てた歩兵も統率を乱す。」


アリアが続ける。

「つまり……

 この山なら戦えるということですね?」


アヤは強く頷いた。

「戦い方さえ間違えなければ、

 勝てるとは言わないけど、

 生き残れる 可能性はある。」


全員の心臓が一斉に跳ねた。



4.ハルトの役割分担


その場の視線が自然とハルトへ向いた。

影の揺れる薄暗い部屋で、

ハルトは息を飲みながら立ち上がる。


(俺が……決めるのか。

 でも……ここまで来た以上——

 誰かが言わないと。)


ハルトは言った。

「……じゃあ、役割を分けよう。」


全員が息を飲む。

「まず、地形の見極めは俺とミツキでやる。

 危険な山道、使える崖、隠れられるポイント……

 全部歩いて探す。」

「うん! やれることなら何でもする!」


「次に士気担当。

 アリアさんと……コージ。」


「よっしゃああああ!!!

 姫様とペアとか、俺もう死んでもいい!!」

「これから死ぬな!!!!」

アリアは柔らかく微笑む。

「みなさんの心が折れぬよう……

 わたし、全力で支えます。」


「そして……アヤは——」

ハルトはアヤを見る。


「……ダリウスさんの補佐に。

 軍事の話をきちんと理解し形にできるのは君だけだ。」


アヤは静かに頷く。

「わかりました。

 机上の空論なら任せて!」



5.ダリウスとアリアの演説


坑道前の広場。

全ての鉱夫、奴隷、護衛兵が集まった。


コージが舞台のように即席で木箱を積み、

アリアとダリウスを押し上げる。

「行け!! 姫!! ダリウス!!

 今日は総合プロデュース俺だァ!!!」


ハルトとミツキが額を押さえた。


しかし群衆の前に立つと、

アリアは自然と表情が王女のものになった。

「みなさん……

 今日まで本当に、よく生き抜いてくれました。」


坑夫たちのざわめきが止まる。

「わたしは、本当は王女という立場の人間です。

 けれど……

 ここで過ごした日々が、

 わたしに人としての心を教えてくれた。」


胸に手を当て、震える声で続ける。

「あなたたちの働きは誰にも届かない。

 あなたたちの命は数にも入れられない。

 そんな国を……

 わたしは、変えたい。」


ざわ……と声がわき上がった。


次に、ダリウスが前に出る。

「俺は……

 ダリウス・エインスレイ。

 王妃近衛副将だった男だ。」


群衆が一斉にざわめく。


「俺たちは今、

 殺される側に立っている。

 だがな……

 俺はここで死ぬ気はない。」


力強い声が広場に響いた。

「お前たちが汗を流して作ったこの生活を、

 この満足して笑った夜を、

 この飯を、

 この仲間を——

 王子に奪わせはしない!!」


「どうだ!?

 お前たちはまだ生きたいか!!?」


坑夫たちが拳を握った。

「おおおおおお!!!」

「死んでたまるか!!」

「この生活は守りてえ!!」


その熱気の中、

一歩だけ下がった場所でルークスが腕を組んでいた。


鉱山管理者兼護衛隊長として、

彼はこの場に立つべきか、

ずっと迷っていた。


しかし……

アリアとダリウスの言葉を聞き、

坑夫たちの熱を目の当たりにして、

静かに前へ進み出た。

「……俺もだ。」


全員が振り返る。

ルークスは、

背筋を伸ばし、

アリアに深く頭を下げた。


「王女殿下。

 王妃亡き後、お守りできず、申し訳ありませんでした。

 ……だが今度は違う。」


彼は拳を胸に当てる。

「鉱山護衛隊長ルークス・ハーヴェイ、

 あなたに忠誠を誓う。」


「ただ、これはあくまで俺の決断だ。

 護衛隊よ。王子に忠誠を誓うものは今、山を下りろ。

 俺たちはどうなるかわからん。

 お前たちはお前たちで考えろ!」


アリアは目に涙を浮かべた。

坑夫たちや護衛隊が一斉に叫ぶ。

「ついていくぜ、姫様!!」

「おうよ!!」

「やってやろうじゃねえか!!」


そして——鉱山全体が震えるほどの歓声に包まれた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。

もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。

たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ