近衛が動く ――「逃げ場はない。」
いよいよ話が大きく動き始めます。
1. 商業ギルド「知らせるだけでいい。動くな」
商業都市リバトーン。
夜のギルド本部は、蝋燭の明かりだけが薄くゆらぐ静寂の中にあった。
情報管理部の青年、エリアスが密偵の文書を握りしめて走り込む。
「ギルド長……!
王都近衛が……兵を整え、こちらに向かっています!」
ロッシュ・カーネルは、書類から視線を上げずに問う。
「確証は?」
「街道沿いの宿場で先ぶれが出ているそうです……
これは確実に鉱山方面です!」
ロッシュは深く息を吐き、椅子に寄りかかった。
「……そうか。」
エリアスが問う。
「どうしますか?
鉱山に物資を……? 避難準備を……?」
ロッシュは手を上げて止めた。
「何もするな。
ただし——知らせてやれ。
情報だけは届けろ。」
「……それだけ、ですか?」
「商人が政治に介入した時点で、商人ではなくなる。
奴らに現実だけ届ければ十分だ。」
エリアスは強く頷き、
すぐに鉱山へ走る者を送り出した。
2. 鉱山・夕刻の報せ
エリアスが再度、鉱山を訪れたときにはすでに日が暮れ始めていた。
「なんなんだ。こんな時間に。最近は変なことが多いもんだ。
ルーカスはエリアスの顔を見てそうつぶやいた。
「すみません、先日こちらによこした下働きの子にどうしても伝えたいことが。
このことは内密に」
「明らかに厄介ごとっぽいんだがな、
まあ、これだけ袖の下をもらったら何も言えねぇ。
おい、例の子を呼び出せ」
ちょうど夕食の用意が終わる時間。
一息ついたところで、アリアが顔を出した。
「あ、あなたは。お久しぶりですが、何なのですか、こんな時間に」
「私はあなたにこれをお知らせするだけです……!
近衛が動いた。後はどうぞご判断ください。」
瞬間、アリアの表情が凍った。
「――っ!」
「それでは失礼します」
エリアスは言葉を残し、
余計な詮索は一切せずに去っていった。
(私は王女様の味方です)
ただ心の中でエリアスは王女の無事を祈っていた。
3. 秘密会合「真実を話します」
「あのお話ししたいことが…」
アリアはハルト・ミツキ・コージ・アヤ・ディランに声をかけ
坑道奥の空き部屋に集まった。
ただならぬ雰囲気の中、ランプ一つの薄い明かりに、緊迫した空気が漂う。
アリアはそっと前へ出た。
「……みなさん。
もう、隠してはいけないと思いました。
わたしは——」
一度、深く息を吸い込む。
「アストリア王国第一王女、アリア=ベルフォードです。
身分を偽り、鉱山へ潜っていました。」
言葉の意味を理解し、
全員の表情が凍りついた。
「お……王女……?」
「え……本当なの…アリアさん…?」
「姫ぇぇええええええ!!!」
アヤは頭を抱えた。
「ちょっと待って!?
昨日普通にタメ口で話してた……!!」
アリアは微笑んだ。
「構いません。
あなたたちは……わたしを人として扱ってくれた。」
その優しさに胸が締めつけられる。
4. アヤの合理的すぎる提案
「私は、第一王子ベルトランと召喚について方針が合いませんでした。
召喚された皆さんがどのような方か見定めるためにここに参りました。
ただ、それはベルトランにとって、私を反逆者とするのに都合がよかったようです。
討伐軍として近衛が出ています。」
「-----------!」
三人は絶句し、ディランはさもありなんという顔をしていた。
アヤは三人と同じく震えながらも、
戦略家としての思考が先に動いた。
「……その……
じゃあ、その……
王女様だけ近衛に差し出せばよくないですか?
わたしたちまで巻き込む必要……」
「アヤさん!? 言い方!!」
「正論だけどアウト!!」
しかしアリアは静かに答えた。
「いいえ。
わたしだけ差し出しても、あなたたち全員が処分されます。」
「え……?」
アリアの声は震えていた。
「異世界から来たあなたたちは、
召喚魔法にとって最適の生贄と判明したのです。
王子は……どのみち、皆さんを殺すつもりです。」
「……マジかよ……」
「なんでだよ……俺ただのオタクだよ!?」
「ひどい……勝手に召喚して、勝手に生贄なんて、そんな……」
アヤも蒼白になった。
(……王女だけ差し出せば助かるなんて……
そんな都合のいい話じゃなかった……)
6. ディランの正体と拒絶
アリアはさらに続けた。
「ですが……この場には力があります。
ディランさんは——
かつて王国最強と謳われた近衛の副将なのです。」
「副将……!」
「マジで!? 英雄じゃん!!」
「そんな人がどうして……?」
ディランは鼻で笑った。
「昔の話だ。」
アリアが懸命に訴える。
「ディランさん……助けてください。
あなたの力が必要なのです!」
だがディランは首を振った。
「……俺には関係ない。
忠誠も何もとうに捨てた。
今さら王女を助ける理由など……ない。」
アリアの拳が震えた。
「……家族が生贄になっていても、ですか?」
「…………」
6. アリアが語る最悪の真実
アリアは静かに告げた。
「……ディランさん。
第4召喚の人質の中に……
あなたの家族が含まれていたのです。」
全員の呼吸が止まった。
「…………え」
「そんな……」
「嘘だろ……!?
ディランさんの家族を……!?
王子何考えてんだよ!!」
「わ、私の召喚の裏にそんな!!」
ディランの表情から血の気が引いた。
「…………
……俺の……家族が……?」
アリアは涙で声を震わせる。
「……名前を……見ました。
本当に……ごめんなさい……」
ディランは、
ゆっくりと、拳を握りしめた。
骨が折れそうなほど強く。
「…………そうか。
……あいつらを……
“贄”にしたのか。」
沈黙が重く、
全員を圧し潰す。
7. ディランの決断
ようやく、ディランは顔を上げた。
その目には、
絶望でも怒りでもなく——
決意が宿っていた。
「……元部下に会ってくる。」
「元部下……?」
「この鉱山には……
俺に仕えていた兵たちが奴隷として働いている。
家族を人質に取られ、抵抗できないまま搾取されてきた。」
「……!」
ディランは言った。
「奴らの家族も……
処分された可能性が高い。」
アヤは唇を噛んだ。
「だから……話すんですね。」
「真実を告げ、
どうするかを選ばせる。
戦うか、逃げるか、死ぬか。
——選ぶのは、奴らだ。」
アリアは頭を下げた。
「ディランさん……本当に……すみません。」
ディランは無言で背を向けた。
「謝るな。
悪いのは——
王家を、アストリアを私物化した、あの男だ。」
部屋の出口で一度だけ振り返る。
「……俺は明日の朝、動く。
覚悟しておけ。」
全員が静かに頷いた。
この瞬間——
鉱山の運命は確実に変わり始めていた。
アヤ「逃げたい……」
謎の若君「逃げることとは生きること。それもありだね。」
アヤ「でも、ここから逃げ出せないの、どうすればいい?」
謎の若君「私も逃げ方の知恵を学んでなんとか逃げ延びれたよ。君ならできるさ。」
アヤ「誰に学べっていうのよ!」
謎の若君「次回 歌姫革命譚 逃げて逃げて逃げ続けその先に道はある」
アヤ(ありがとう、歴史に埋もれた英雄さん。あなたの知恵から学びます)
ここまで読んでくださってありがとうございます。
基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。
もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。
たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。




