第四の召喚と、夜の旅立ち ――「わたしは……あの場所へ戻らねばならない」
いよいよ本当に革命がはじまりますよ。
1.王宮会議室――召喚の再開
アリアが鉱山から戻ってきた日。
王宮の空気は刀のように冷たかった。
軍報告書が机に叩きつけられ、
将校たちが口々に叫ぶ。
「帝国軍が国境を越えました!」
「城壁の補強も追いつきません!」
「王子殿下、兵の士気が――!」
「黙れ!」
第一王子ベルトランの怒声が会議室を震わせた。
「だから召喚を続けると言ったのだ!
前回は数が少なかっただけだ!」
魔術師長が恐る恐る口を開く。
「ですが……ここ数回の召喚で得られた者は……
呪文も武も扱えぬただの若者で……」
「なら強い供物を揃えればよい!」
ベルトランの声は狂気じみている。
「戦災孤児、反逆者の家族を用意した。
若いほど生贄としてふさわしいと古文書にあった
これだけの生贄なら、英雄が出る!」
アリアの顔が蒼白になった。
「そんな……!
孤児たちはこの国が保護すべき子どもたちです!
反逆者と言ってもその多くは単にあなたのそりが合わないだけ。
その縁者を犠牲にするなど――」
「長い間、王宮を離れていた者が口を挟むな」
ベルトランの冷笑が飛ぶ。
「……っ」
「お前は王族の自覚があるのか?
この危急にどこをさまよっていた?」
その問いに答えることができなかった。
鉱山で見たもの――
ハルト、ミツキ、コージ、労働者たちの姿。
下働きの娘として過ごした日々。
歌で灯った人々の笑顔。
その全部を語ることなど、できるはずがない。
(……何を言っても、通じない)
アリアは静かに唇を噛みしめた。
2. 第四の召喚――黒瀬文乃
儀式は粛々と進められた。
生贄として並べられた子供たちが震え、
魔術師たちが呪文を唱え、
空気は異様な緊張で満ちる。
そして――
光が立ち上り、子供たちが消えた中央に一人の女性が立っていた。
「……え……?
ここ……城……?
うわ、儀式系……え、まさか異世界召喚……?」
黒瀬文乃20歳。
歴史オタク。戦史好き。戦略に強い。
どこにでもいる歴女のはずだった。
「お前が……英雄だと?」
ベルトランが眉をひそめる。
「え、英雄?
あ、いや……私、歴史ならどの国でも……
特に戦国とかめっちゃ詳しいんですけど――」
「異世界の歴史が何の役に立つ!!」
ベルトランが怒鳴りつける。
文乃はびくっと肩を揺らし、眼鏡を押さえた。
「で、でも……歴史は繰り返すし……
戦略理論は普遍だから……えっと……」
「黙れ。
また役立たずか」
ベルトランが冷たい声で告げる。
「無価値。
――鉄鉱山送りだ」
「ちょ、ちょっと!?
異世界に来て即鉱山っておかしくないですか!?」
文乃は必死に抗議するが、
ベルトランの目には怒りと焦りしかなかった。
兵士が文乃を連れ去る。
アリアはその姿を、ただ静かに見つめていた。
(……この子もまた……
あの三人のように……)
3. アリアの決意――夜中の出立
召喚の場が片付けられ、
王宮は再び沈黙を取り戻したあと、アリアは軟禁状態にあった。
アリアは一人、自室で灯りを落とし、
両手を胸の前で固く握った。
(……わたしは、鉱山で生きる人々を見た。
粗末な寝床、粗末な食事……
それでも互いを励まし、支え合っていた)
(あの三人――
ハルトさん、ミツキさん、コージさん。
彼らの明るさと知恵が……
人を生かしていた)
(文乃という娘も、あの場所なら……
きっと救われる)
王宮での沈黙と腐敗のなかでは、
誰も救えない。
しかし――
鉱山には動きがある。
人を変え、場所を変え、未来を変えていく力があった。
(ただ、わたしには何もできない……彼らがなんとかしてくれれば)
ただ、事態は急変する。
何日かのち、アリアに一枚の紙が差し入れられる。
(異世界からの召喚者は高い能力でいけにえに最適?
アルヴァンが生贄には異世界からの召喚者を使うことを検討中?!
彼らが危ない!!!)
事ここに及んで彼女は決意した。
(王家との縁は……もう捨てる覚悟)
そして静かに窓から身を乗り出し、
王宮の影へと消えた。
夜の冷気が、決意を包んだ。
(……帰ろう。
あの鉱山へ)
(わたしが、わたしの意思で
歩いていける場所へ)
こうしてアリアは、
単身で王宮を抜け、
先月と同じ鉱山へ向かった。
革命の輪は、確実に回り始めていた。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
基本は書き終わっていますが、今、あとがきで遊んでいます。
もし時間があればブックマークや評価があれば私は喜びます。
たとえしていただけなくても、今後もお楽しみいただければ幸いです。




