過去:浩二召喚と王女の贖罪 ――「せめて……今回で終わりますように……」
謎の美女の正体が明らかに
1.橘浩二
橘浩二、二十歳。
大学の商学部に所属し、広告ゼミで日々デザインとマーケティングを学ぶ、
ごく普通の学生だ。
ただ一点――
推しのアイドル・ヒビキへの熱は、異常なほど強かった。
「将来は広告代理店に入るんだ。
それで……ヒビキの広告、俺が作る!」
友人には笑われたが、浩二は本気だった。
ゼミで制作したポスターも、映像課題も、
どこか推しへの愛がにじみ出る。
自室の壁には、ヒビキのライブ写真。
ペンライトは色別に五本。
ライブ遠征費のため、バイト三昧。
(ああ……ヒビキの新曲の広告……絶対俺が……)
そんな平凡で幸せなオタクの日常。
――あの日までは。
2.王国側の視点・召喚の準備
王国の戦況は、決して良くなかった。
王子であるベルトランの失策と、隣国の攻勢。
兵は疲弊し、物資は尽きかけている。
そこでベルトランが提案した。
「今回は敵国の捕虜を使え。
魔力の供給元にし、召喚を成功させるのだ!」
「な……!?」
王女アリアは即座に立ち上がった。
「捕虜は丁重に扱うのが国の慣例。
戦後交渉の要でもあります!
そんな卑劣な――!」
「卑劣? 笑わせるな」
ベルトランが冷笑する。
「国が滅びれば、交渉も伝統もないのだ。
今こそ力を得るべき時だ」
国王は重い口を開いた。
「……ベルトランの言う通りだ。
今は非常時。
今までの対価は軽すぎた。力のあるものを生贄に 英雄を呼ぶしかない」
「父上まで……!?」
アリアの声は震えていた。
(そんなことをすれば……
わたしたちの誇りが……
国の品位が……すべて崩れる……!)
しかし二人に押し切られ、
反対意見は黙殺された。
そして多数の捕虜が、陣の中に連れてこられる。
(もう……どうすることも……)
アリアは泣きそうな表情で、ただ祈った。
(せめて……今回で終わりますように……)
3. 召喚陣が光り、現れたのは
「――ッ!?
な、何だ……この反応は……!」
召喚陣が暴れ、魔術師たちが悲鳴を上げる。
光が爆ぜ、空気が震え、石畳が砕ける。
そして――
「うわぁぁぁぁぁ!?
推しの広告まだ作ってないんですけどーー!?」
――見知らぬ青年が転がり出てきた。
ボロボロの格好、ペンライトを握りしめ、
意味不明な言動。
「ヒビキィィィ……!?
ここ、どこ!?
俺の……推しの……ライブは!?」
「……意味不明だな」
ベルトランが吐き捨てる。
「また失敗か……!?」
魔術師が蒼白になる。
「国の命運がかかっていたというのに……!
何度も何度もこんな……こんな役立たずを呼び寄せるとは……!」
アリアは震える声で言った。
「……だから……言ったのです……
こんなやり方をしても……
良い結果は得られないと……!」
「黙れ!」
ベルトランがアリアを睨みつけた。
「こいつも今までと同じで十分だ。
鉱山送りにせよ」
「わ、わ――
ちょっと待って!?
俺、ただの大学生で……!」
「黙れぇ!」
兵士に引きずられ、
浩二は呆然としたまま連れて行かれた。
(なんだよ……これ……
俺、なんで……)
そして彼は――
罪人馬車に押し込まれ、
鉄鉱山送りとなった。
4.アリアの決意
召喚が失敗し、ベルトランは激怒した。
国王も焦りの色を隠せない。
だがその裏で――
アリアの胸には別の想いが燃え始めていた。
(……三人……
あの青年と……
そして以前の召喚者たちも……
みんな……わたしたちの罪のせいで……
あんな過酷な場所へ……)
しばらくしてアリアのもとへ密かに情報が舞い込む。
「鉄鉱山に……異変が起きています」
アリアが各地に放っている密偵からの報告だった。
(産出量が増え、
事故に死者が減っているとか……)
(……そんなことが……?)
アリアは胸がざわついた。
(……ならば……
あの三人の犠牲を……ただの処分で終わらせてはいけない)
そして――
彼女は静かに決意した。
(わたしが行こう。
贖罪のために……
そして、この目で確かめるために。
人は……苦しみの場に送られたとしても、生きられるのかを。
この手で何かできるのかを。)
アリアは侍女の反対を押し切り、
自ら下働き名簿に仮名で登録した。
ギルドを通して手続きを整え、
下働き志願者として鉱山へ向かう馬車へ――
自ら乗り込んだ。
(……わたし自身の意思で。
誰に強いられたのでもなく……)
そうして彼女は、
鉄鉱山へと辿り着いた。
その数週間後――
鉱山の夜に響き渡った歌声で、
ごく一部のものではあるがその者たちが
彼女の本物の価値を知ることになるとは、
まだ誰も知らない。
これで召喚魔法が何度も繰り返される理由、
アリアが鉱山に来た理由が明らかにされました
この後、鉱山とアリアがどう絡んでいくのか、
それはまた別のお話。
謎の歴女「レストラン?どこにあるの?」
ハルト「だから本編に出てないのに食べ物ネタだけ絡むな」




