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コージ、鉱山節を復活させる ――「俺……もしかして、ここで生きていける……?」

1.惨敗の初日

 コージの鉱山初日は、

 惨敗に次ぐ惨敗だった。


 石拾いは指を挟み、

 ロープは絡め、

 トロッコを押せば転び、

 覚えるべき道具名は全部忘れ、

 最後にはすすり泣きながら寝所の隅で丸まっていた。


 ハルト、ミツキ、ディランの三人は

「これは……本当に厳しいのでは……」

という空気になりながらも、

翌朝、コージを再び呼び出した。


「……今日も試すぞ、コージ」

「が、がんばりますぅ……」

 心が折れそうな声だった。


 

2. 二日目、最初の作業は“トロッコ押し”


 第三斜坑の入口。

 ハルトが新型ステアリングの点検をしながら言う。

「じゃあまずは、トロッコ押し。

 昨日は転んだから、今日は“後ろからゆっくり押すだけ”でいい」


「う、うん……!」


 しかし問題がひとつあった。


 他の坑夫たちのリズムがバラバラなのだ。


「うおお……っ!」

「ちょ、待て! ペース合わせろよ!」

「馬鹿、揺れるって!!」


 荷が大きく振れ、

 危うく転びそうになる者もいた。


 コージはそれを見て、目を丸くする。

(……リズム、メチャクチャじゃん……

 これじゃ誰だって転ぶよ……?)


 胸がざわついた。

 それは“推しのライブの最前で見たことのある光景”だった。

 テンポが崩れると事故が起きる――

 それはライブ会場でも、鉱山でも同じだ。


(……そうだ。 リズムが揃ってれば……押しやすいはずなんだ……!)

 


3. 反射的に声が出た

 次の瞬間、コージは叫んでいた。

「せーのッ!!

 はいっ! はいっ! はいはいはい!!」


 坑夫たちは目を丸くする。

「……は?」


 だがコージは止まらない。

「押して! 押して! ほら、合わせて!!

 いくよ!!

 はい! はい! はいはいはい!!」


 「なんだこいつ……」

 「いや……でも……押しやすい……?」


 いつの間にか、

 コージのリズムに合わせて

 坑夫たちの足並みが揃い始めた。


「よっ……ほっ……!?」

「え、軽くねぇか……?」

「揺れが……ない……?」


 ハルトが声を漏らした。

「……リズム……だ……

 これ……作業リズムが揃ってるから……?」


 ミツキも驚いていた。

「揃ってる……“音で”……!」


 ディランだけは黙って見ていたが、

 その目は確かに動いた。

 


3. コージ、ノる


 コージは完全に“スイッチ”が入っていた。

「押せ押せ押せ押せ!!

 そーら、押せーー!!

 右いくよ! せーのッ!

 ヨイショッ!

 ヨイショッ!!

 はいはいはい!!」


「ヨイショッ!!」

「ヨイショッ!!」

「はいはいはい!!」

「お、おい……なぜか身体が勝手に……!」


 ハルトは感心しきりだった。

「すごい……!

 これ、トロッコの揺れがほとんどない!!

 負荷が均等になってる……!」


 ミツキも図を描く動きで示した。

「荷の重心がぶれないから、

 トロッコが横に振れずに、まっすぐ進んでる……!」


 ディランは静かに呟いた。

「……“声”でここまで……?」


 

◆ コージ、歌い出す

 坑夫たちが完全に乗ってきたところで、 コージは息を吸い——

「♪ よいとこ〜鉱山〜今日も押せ〜

 ♪ 押せばステアリング〜右に切れ〜

 ♪ よっしゃいくぞ! ほい! ほい!

 ♪ みんなで押せば軽くなるぅ〜!」

 それにつれて坑夫たちも

「なんか……楽しくなってきた!」

「おい、次のサビはなんだ!?」

「歌詞変わってるだろこれ!!」

 作業の効率は目に見えて上がっていった。

 ルークスも、

 遠くから呆然とその光景を見ていた。

(……なんだ……あれ……

 昨日まで泣いてた青年が……

 今日、鉱山を動かしてる……?)

 

4, ディランの評価


 作業が一段落し、

 坑夫たちがコージの周りに集まっていた。

「よくやったぞ兄ちゃん!!」

「声あげるだけでこんなに変わるとは……」

「お前、面白ぇな!!」


 コージは息を切らしながら笑った。

「ぼ、僕……ここで……生きていけるのかな……」


 ディランが歩み寄る。

「コージ」


「は、はい!!」


「——お前の“声”は、力になる。」


 コージの目に涙がにじむ。

「本当……ですか……?」


「今日の作業を見た。

 事故が一つも起きなかった。

 荷も揺れなかった。

 それは……お前の声が“鉱山のリズム”になったからだ」


 ハルトもうなずく。

「科学的にも正しいよ。

 リズム作業は負荷が均等になるんだ。

 ……マジで役に立ったんだよ」


 ミツキも微笑む。

「コージさん……すごかったです……!」


 コージは泣きながら笑った。

「俺……初めて……役に立てた……!」


 

5. 鉱山、初の“活気”


 その日の午後、

 坑内のあちこちからコージの掛け声が聞こえていた。

「そーれ押せーッ!!」

「はいはいはい!!」

「ヨイショッ!!」


 坑夫たちの笑い声も混じる。

(……すごい……活気が……)


 ハルトとミツキは目を合わせ、

 自然と笑顔になった。


(俺たちの技術と図に……

 コージが“心”を入れてくれたんだ)


 ディランは少しだけ空を見上げた。

(……こんな場所だが。

 確かに“変わり始めた”)

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