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第九話:雨の日のひみつ
ある土曜日の朝、コウタは窓の外の雨音で目を覚ました。予定していたクエストは雨で中止だ。
「あーあ、今日はDランク昇格のための実技試験だったのに…」
ため息をつきながらリビングに出ると、リアが窓辺に立っていた。
「コウタくん、おはよう。雨で試験、延期になっちゃったね」
「ああ、せっかく準備してたのに…」
すると《クエスト視認》が反応した。
【特別クエスト】
『雨の日を楽しもう』
内容:リアと最高の雨の日を過ごす
報酬:絆ポイント+80 / 思い出+1
コウタは考えた。確かに、最近はクエストや試験のことで頭がいっぱいで、リアとゆっくり過ごす時間が少なかった。
「ねえ、リア。今日は何も予定入れないで、二人でのんびりしないか?」
「本当?いいね!」
内心:(久しぶりにコウタくんとゆっくりできる…すごく嬉しい!)
午前中は一緒に将棋をしたり、本を読んだり。するとコウタはあることに気づく。
「そういえば、リアのことは子供の頃から知ってるのに、意外と知らないこと多いな」
「私もだよ。コウタくんの好きなものとか、嫌いなものとか、もっと知りたいな」
コウタは思わず《クエスト視認》を確認する。
【サブクエスト】
『お互いをもっと知ろう』
内容:お互いのことを10個以上教え合う
報酬:理解度+50%
「よし、それじゃあ…クイズ大会をしようか」
「わあ、楽しそう!」
二人はこたつに入り、お互いの好きな色、好きな食べ物、苦手なものなどを教え合った。
「えっ?コウタくん、にんじん嫌いだったの?でもカレーでは食べてるよね」
「あ、ばれたか…リアの作る料理は頑張って食べようと思ってるんだ」
「コウタくん…」
内心:(そういうところ、優しいんだよね…)
午後、雨が小降りになった頃、コウタは提案した。
「ちょっと散歩しないか?雨上がりの空気は気持ちいいぞ」
「うん!」
二人は傘をさして近所を散歩。水たまりを避けながら歩いていると、リアが突然立ち止まった。
「コウタくん、見て!虹だよ!」
空にはかすかな虹がかかっていた。
「本当だ…きれいだな」
コウタは思わずリアの手を握った。雨の日だからこそ見られる美しさがあるのだと、彼は感じていた。
夕方、アパートに戻ると《クエスト視認》が点滅した。
【クエスト成功】
雨の日を楽しみました
絆ポイント+80獲得
新たな思い出が増えました
「今日は本当に楽しかった」
リアがコウタに寄りかかる。
「クエストばかりじゃなくて、たまにはこんな日もいいね」
「ああ…そうだな」
コウタはリアを優しく抱きしめた。雨の音をBGMに、二人の時間がゆっくりと流れていく。
外は相変わらずの雨だったが、二人のアパートの中には温かい幸せがあふれていた。
(第九話 了)




