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ウマ娘のブエナビスタがかわいすぎておれが死んだ

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「気付きの朝」


土曜日、明け方。

コウタとリアのアパート、6畳の部屋で三人は川の字になって眠っていた。


澪は、はっきりとした理由もなく目を覚ました。

窓の外はまだ薄暗い。時計は5時を指している――いつもなら、母の苦悶する声で起こされる時間だ。


しかし、ここにはそれがない。

代わりに聞こえるのは、隣で眠るリアの規則的な寝息と、遠くで通る新聞配達のバイクの音だけ。


(……静かだ)


この静けさが、逆に澪の胸をざわつかせる。

母は大丈夫なのか。薬は飲めたのか。39件のメッセージが、頭裏でちらつく。


その時、ふと動きが視界の端に入った。

ソファの上に置かれたミミゾウが、ゆっくりと起き上がる――ような気がした。

澪は目を凝らす。だが、ミミゾウは相変わらず無表情に座っている。気のせいか。


彼女が再び目を閉じようとした時、小さな「ぷぅー」という音が聞こえた。

次の瞬間、澪の掛け布団の端が、誰にも触れられずに、ほんのりと温かく持ち上げられるのを感じた。乱れていた裾が整えられ、首元までそっと寄せられた。


澪は息をのんだ。

(……なんだ?)


魔法か、幻覚か。理解できない。

しかし、その確かな温もりは、澪がこれまで感じたことのない種類の「気遣い」だった。

それは「約束」でも「条件」でもない。見返りを求めない、静かな行い。


窓辺を見ると、昨夜、澪が脱ぎ捨てた靴下がきちんと揃えて置いてあり、リュックの肩紐も丁寧に巻かれているのに気づく。彼女自身がやった覚えはない。


(全部……ミミゾウが?)


あり得ない。しかし、他に説明がつかない。


「……ぷぅー」


もう一度、かすかに聞こえた鳴き声。

澪はミミゾウを見つめた。相変わらず、ただのぬいぐるみだ。

だが、確かに何かがここにある。


コウタが寝返りを打ち、無意識に布団を蹴り飛ばした。

すると――ミミゾウの方向から、またしても微かな「ぷぅー」が聞こえ、コウタの布団がふわりと浮き、再び彼の体を優しく包んだ。


(この家は……違う)


澪は悟った。

ここでは、すべてが言葉や取引で成り立っているわけではない。

「風呂最後」「洗い物済」という「実績」を積まなくても、ただそこにいるだけで、見えない何かが――ミミゾウが、あるいはこの家そのものが――彼女を受け入れ、気遣ってくれる。


母からのメッセージに縛られ、常に「何かをしなければ」と追い立てられる日常。

それとは対極にある、この「無条件の静けさ」。


涙がにじみ出そうになるのを必死でこらえ、澪は布団にもぐり込んだ。

彼女は初めて、朝が来るのが待ち遠しいと思った。

この温かさを、もう少し感じていたいから。


そして、彼女は知らず知らずのうちに、ミミゾウの方へ少しだけ体を寄せていた。

「ぷぅー」という声が、また優しく響いた。


帰る場所は、まだない。

でも、この温もりは、確かにここにある。

ウマ娘のブエナビスタがかわいすぎだけど引けなかった(泣)

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