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:澪ちゃんの時間割は0.1秒も狂わない
ギルドの朝は、木漏れ日とパンの焼けるいい匂いでいっぱい。
「おーい、澪!待たせたな!」
剛志が、鎧をガチャガチャ鳴らしながら駆け込んでくる。大きな体がドアに引っかかり、彼は「うおっ!?」とばたばたする。
澪は壁の猫時計を見て、ぽつり。
「……5分、遅い」彼女は猫の肉球スタンプが押された手帳を見つめ、「図書室の窓際の席……」と小さく呟いた。
「ええっ!?でもさ、道中で迷子の子猫助けてたら……」
「……子猫は」澪は真顔で言い放った。「図書室の予約を、しない」
──これが、如月澪の日常だった。
彼女なりの、“丁寧な暮らし”の形。
無口で、自分の時間を大切にする、Eランクの弓使い。
みんなからは「澪ちゃんらしいね」と笑われる、愛すべきこだわり。
「あらあら、剛志さん、また澪さんの読書タイムを削って」
美鈴が、紅茶を優雅にすすりながら微笑む。
「澪さん、今日の依頼お願い。区域Cの魔獣駆除です」
コウタが依頼書を差し出す。
「おーい、もっとゆっくりでいいだろー!」
剛志が追いかける。
コウタとリアと美鈴は、それを見て顔を見合わせ、くすくす笑った。
「澪ちゃん、ほんとに几帳面だね」
「ああ。ああいうきちんとしたところが、いいんだよ」
ギルドを出る時、澪はさりげなくスマホで図書館のアプリを開き、貸出期限を確認した。
「……よし」
「……時間通りに、いこう」
今日も、如月澪は、猫スタンプの手帳に書かれた予定を、ひとつずつこなしていく。
澪はちらりと依頼書を見て、こくり。
「……了解。区域Cまで13分。魔獣処理に7分。ギルド帰還が16時02分。次の『読書』に影響なし」
「……行く。着いたら即、始める」
彼女はそう言うと、誰の指示も待たずに小走りで歩き出した。
区域Cに着くやいなや、他のメンバーが陣形を組む間もなく、澪は動いた。
弓を引き、矢を番える——その動作に一切の無駄がない。
「……邪魔するな」
彼女はそうだけ呟くと、矢を放った。
ビュン!
一矢が、魔獣の群れの真ん中にいた指揮官的な個体の目を正確に射抜く。
「おいおい、全部一人でやる気かよ!」
剛志が慌てて叫ぶ。
澪は無言で、次々と矢を放つ。
剛志が盾になる前に、リアの影が足を絡める前に、美鈴の炎が炸裂する前に——彼女の矢が魔獣を仕留めていく。
全ては計算通り。自分一人で倒すのが、時間的にも、動き的にも、最も効率的だからだ。
戦闘開始から、ちょうど6分30秒。
最後の一体が倒れる。
「……目標、排除完了」
澪は淡々と告げる。少しだけ予定より早い。
剛志が呆れたように言う。
「ちっ、もっと俺たちにもやらせろよ……」
澪は剛志の言葉には答えず、魔獣の死骸の元へと歩いていく。
そして、倒した魔獣の体に刺さった矢を、一本一本、丁寧に引き抜き、布で拭いていく。
「……もったいない。矢は高い」
彼女はそう呟き、矢筒に慎重に収納した。
コウタがその様子を見て、少し驚いたように言う。
「澪、そんなにきちんと回収するんだ」
澪は一瞬手を止め、ごく短く答える。
「……当然だ。無駄は、許されない」
——生活費も、学費も、決して潤沢ではない。道具は、最後まで大切に使う。
効率こそが最善。無駄を排することが、生きる術。
それが、如月澪の、誰にも頼れない孤独な流儀だった。
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:澪ちゃんと、みんなのわいわいクッキー作り
「ふわぁ〜!やけどやけど!」
リアが嬉しい悲鳴を上げた。ギルドの小さなキッチンが、甘いバターの香りに包まれている。
「澪ちゃん、そこの型抜き手伝って!」
「……了解」
澪は真剣な表情で、リアから渡された生地を、猫型の抜き型で慎重に抜いていく。
「おい、俺のも見てくれよ!熊の形らしいんだが!」
剛志が少し歪な形のクッキー生地を差し出す。
澪はそれを一瞥し、
「……剛志の熊、少しやせている」
と、淡々と言う。周りから笑いが起こる。
──ごく普通の、賑やかで甘い時間。
コウタはオーブンの前で、「もうすぐ焼き上がりだよ!」と声を上げる。
澪はその声に、ついオーブンの小窓をのぞき込んでしまう。金色に焼けていくクッキーを、少し興味津々で見つめていた。
焼き上がったクッキーを前に、みんながトレイに群がる。
「わあ!みんなで作ったんだね!」リアがはしゃぐ。
コウタは、一番きれいに焼けた猫型のクッキーを取って、澪に手渡した。
「ほら、澪のが一番かわいいぞ」
澪は「……ありがとう」と受け取り、ぱりっと軽い音を立てて一口かじった。
その瞬間、彼女の目がぱちっと見開かれた。
「……!」
口の中に広がる、サクサクした食感と、バターの豊かな香り。
そして、ほんのり優しい甘さ。
「……おいしい」
彼女の口元が、ほんのり、しかし確かに緩んだ。
これは、効率でも栄養でもない、纯粹な「楽しさ」から生まれた味だった。
「だろ?みんなで作ると、もっとおいしいよ!」
コウタが笑いかける。
澪はこっくりと頷き、こっそりとトレイからもう一つクッキーを手に取った。
「……もう一つ、検証する」
その言い訳に、みんながまた笑った。
今日という日と、この賑やかな時間を、彼女は心に刻んだ。
理由はわからない。ただ、この「おいしい」という感覚が、とても温かくて。
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:澪ちゃん、はじめてのお花見
春の陽気に誘われて、ギルドの掲示板にちょっと変わった依頼が張り出された。
【お花見警備クエスト】
内容:街外れの桜の名所で、お花見客の見守りと魔獣よけ
報酬:各季節の花の苗木+お団子引換券
「おお!これいいじゃねえか!桜見ながらのんびりできるぞ!」
剛志が一番に声を上げる。
「わあ!お花見!私、お弁当作ってくる!」
リアはもう大はしゃぎ。
美鈴が優雅に頷く。
「春の訪れを愛でるのは、風流ですね」
コウタは澪の方を見て、
「澪もどうだ?外でやるのも気分転換にならないか?」
澪は一瞬、手帳のスケジュールを確認する。
「……お花見」彼女はその言葉を、少し不思議そうに繰り返した。
「……具体的に、何をすれば?」
一瞬、空気が止まった。
「え?」「は?」「あら?」
みんなが一斉に澪を見つめる。
「……つまり」澪は淡々と、しかし確かに言葉を続けた。
「お花見という行為の、具体的な手順が、わからない」
衝撃の事実が明らかになった。
如月澪、17歳、お花見未経験者。
「ま、まじか!?」剛志が目を丸くする。
するとコウタが、にっこりと笑った。
「じゃあ、今日はみんなで澪に、お花見の楽しみ方を教えてあげよう」
そうして、Eランクパーティーの「澪ちゃんにはじめてのお花見を教える会」 が始まった。
· リア:「まずはシートを広げて……はい、みんなで座ろう!これが陣取りだよ!」
· 剛志:「そして、こうやって弁当を広げて、みんなで食べる!これが最重要だ!」
· 美鈴:「桜を眺めながら、のんびりとおしゃべりするのも、また良しですね」
· コウタ:「たまには、何も考えずにぼーっとするのもいいんだよ」
澪は、みんなの説明を真剣な表情でメモしている。
「……陣取り……共有食……のんびり会話……了解した」
桜の木の下で、彼女は教わった通りにしてみる。
シートに座り、みんなからわけてもらったおにぎりを食べ、桜を見上げる。
……なんだか、わからないけど、気持ちいい。
風が吹いて、桜の花びらがひらひらと舞い落ちてくる。
一枚が、彼女の手のひらに乗った。
「……きれい」
その言葉が、自然と口から零れた。
コウタがお団子を差し出してくれた。
「ほら、これもお花見には欠かせないんだ」
澪は一口かじり、目をぱちぱちさせた。
「……甘い」
そして、もう一口。無言で、しかし確実に、頬を緩ませながら。
剛志が大きな声で笑う。
「よし!これで澪も、立派な花見通だな!」
彼らはみんな、思っている。
きっと、澪はとっても忙しい家の生まれなんだろう。
でも、今日という日、この瞬間は、この子のものだ。
澪は手帳を開き、今日の予定の隅に、小さく書き加えた。
『お花見──効率は悪いが、再現可能性あり』
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クール系のかわいさが全くわかんねえんだ
だれが教えてくれ
俺はエヴァではアスカ派だ
あと今ブックマークしてくれてる2人!誰かはこっちからわからないけどありがとう。
正直昨日くらいで社会メッセージ的なやりたいことやったし投稿消して消えようかなって思ったけど、もうちょっとだけやろうかなって思ったわ
俺も仕事忙しいし、これ生成AIでつくってて、本気で小説書いてる人には悪いなってかんじでふ笑




