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第六話:お前がいるから、俺は強くなれる


雑用クエストをこなす日々が続いていた。街路樹の剪定、ゴミ拾い、迷子の子猫探し…。Fランクに与えられる任務は、すべて地味で報酬も少ないものばかりだった。


「よし、これで最後の区域も完了だ!」


コウタは剪定ばさみを手に、額の汗を拭った。三日がかりの街路樹剪定クエストがようやく終わろうとしている。


「コウタくん、お疲れ様。水分補給どうぞ」


リアが笑顔で水筒を差し出した。彼女の手は剪定の作業で小さな傷だらけになっていた。


「あ、ありがとう…お前もずいぶん働いたな。手、大丈夫か?」


「うん!全然平気だよ。コウタくんと一緒に仕事できるのが、すごく楽しいから」


内心リア:(ちょっと疲れたけど、コウタくんが頑張ってるから、私も頑張れるんだ)


彼女の笑顔は本当に楽しそうで、Fランクの雑用任務を恥じる様子も、不満を漏らす様子も微塵もなかった。


ギルドに戻り、任務完了の報告をすると、受付の女性は淡々と報酬の500Gを渡した。


「はい、Fランク任務『街路樹の剪定』完了です。報酬は500G」


「ありがとうございます!」


リアは嬉しそうにお金を受け取ると、すぐにコウタの方に向き直った。


「コウタくん、これで少しは生活費の足しになるね。今夜はちょっとだけ贅沢して、お肉を買おうよ!」


「お、おう…」


コウタの胸が締め付けられた。たった500Gで――それも二人で三日間働いて得た報酬で、彼女はこんなにも嬉しそうにしている。


その時、近くにいた別のハンターたちの会話が聞こえてきた。


「おい、見たか?あのFランクコンビ」

「たった500Gで大喜びかよ、哀れだな」

「まあ、あの程度の能力じゃ仕方ないわな。一生雑用やってろってこった」


コウタの拳が自然と握りしめられた。しかし彼よりも先に、リアが動いた。


「私たち、これからも頑張りますから!」


彼女は嘲笑うハンターたちに向かって、悪意をまったく感じさせない、清らかな笑顔を見せた。


「Fランクでも、コツコツ頑張れば、いつかきっと認めてもらえると信じてます!」


その健気すぎる態度に、嘲笑っていたハンターたちも言葉を失った。


「…バカな女だ」

そう呟くのが精いっぱいだった。


ギルドを出て、夕焼けの道を歩きながら、コウタは黙り込んでいた。胸の中に渦巻く感情――悔しさ、無力感、そしてリアへの感謝と愛おしさが入り混じっていた。


「コウタくん?どうかしたの?さっきから静かだね」


リアが心配そうに顔を覗き込む。彼女の瞳には、夕日が優しく映っていた。


「…リア」


コウタは歩みを止め、彼女の両手をぎゅっと握りしめた。


「え?コ、コウタくん…?」


「お前は…本当にすごい子だな。あんな奴らにバカにされても、いつだって前向きで…俺のこと支えてくれて…」


コウタの声が震えた。


「約束する。絶対にお前を幸せにする。いつか…この街で一番のハンターになって、お前に不自由ない生活をさせてやる。誰にもバカにされないようにしてやる」


「コウタくん…」


リアの目に涙が光った。


「ううん、私はもう幸せだよ。コウタくんがいてくれて、一緒に未来を築いていけること…それが何よりも幸せなんだから」


彼女のその言葉が、コウタの決意をさらに固くした。


【クエスト更新】

『約束の果て』

内容:南雲リアを誰にも笑われない幸せで満たす

報酬:真の守護者の証


「…ありがとう、リア」


コウタは彼女を優しく抱きしめた。


「お前がいるから、俺は強くなれる。これからも、ずっと一緒にいてくれ」


「うん!ずーっと一緒だよ!」


夕焼けに染まる街で、二人は固く抱き合った。Fランクの貧しいハンターでありながら、彼らだけが共有する豊かな幸せが、そこには確かにあった。


(第六話 了)

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