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48話:気づき


ミミの言葉に、コウタははっとした。


(これって…まさかオルセンさんのことを言ってるのか?)


頭に浮かぶのは、あの不格好ながらも圧倒的な強さを見せる老爺の姿。確かにオルセンは、普通のハンターの枠には収まらない。Eランクでありながら、コウタの理解を超えた動きで魔物をなぎ倒す。


(そうか…オルセンさんこそが、ミミさんの言う“バケモン”なんだ)


しかしコウタはすぐに考え直す。


(いや、でもオルセンさんは…ただのじいさんだ。優しくて、不器用で…)


その時、ミミがコウタの考えを見透かすように言った。


「思い当たる節があるようだな。だが、それが誰かは重要じゃない。重要なのは、お前自身がどう生きるかだ」


ミミの目は、コウタの心の奥底まで見通すようだった。


「“バケモン”を羨むな。嫉むな。お前にはお前の道がある。一歩ずつ、確実に前へ進め」


コウタは深く息を吸った。オルセンが誰であろうと、自分は自分らしく成長していく。それだけは変わらない。


【新たな決意】

個性の尊重:他人と比較しない成長

自己信頼:自分のペースで進み続ける


この気づきは、コウタにとって大きな成長の一歩となった。



 ――――――




 バイトを終え、家路につく二人。夕焼けが街を赤く染める中、リアがふと足を止めた。肩を少し落として、足取りがいつもの元気さがない。今日のシフトが長引いて、ミミさんの魔法練習もハードだったせいか、目元にうっすら疲れの影が差してる。頭の中では

 「Eランク上がったのに、まだコウタくんに追いつけない…」

 ってプレッシャーがチクチク刺さってるみたいだ。

「コウタくん…私、ちょっと疲れちゃった」

その声は小さくて、唇が少し震えてる。涙をこらえてるのがわかるよ。練習の失敗続きでイライラ、最近家事も手が回らなくて罪悪感…そんなのが積もって、息が詰まる感じ。

「ゴメン、こんなこと言って…コウタくんも頑張ってるの、わかってるよ。でも…息苦しいの。先生の言う通り練習しなきゃなのに、失敗ばっかで…家事も任せちゃって、自分が情けなくて」

その瞬間、コウタの視界に、今までとは違うクエストが表示された。

【選択クエスト:彼女のSOS】

A. 励ます:「頑張れ」と前向きな言葉をかける

B. 共感する:「辛いよね」と寄り添う

C. 現実を突きつける:「でも、これが現実だ」と諭す

D. 話題を変える:別の楽しい話をして気分転換させる

報酬:リアの心の軽さ / 絆の深まり

失敗条件:彼女の気持ちを無視する


 コウタは即決。リアの顔見てたら、ただの言葉じゃなく、ちゃんと寄り添うのが大事だってわかった。彼女の疲れた目が、なんか胸を締め付けるんだ。キザなんかじゃなく、ただ素直に心配だ。

「…そっか。辛いよな、今日も練習きつかったもんな。お疲れさま。俺もEランク上がった時、似たような焦り感じたよ。家事だって、リアの分までやるから気にすんなよ」

彼はリアの手を優しく握って、そっとハグ。リアの肩がコウタの胸にコテンと寄りかかって、温かさが伝わってくる。夕焼けのオレンジが二人のシルエットを優しく包む中、コウタは耳元で、ちょっと照れくさそうに言う。

 

「無理しなくていいよ。今日はゆっくりしようぜ。家帰ったら俺がお茶入るよ。ご飯も簡単なやつ作るから、お前はソファでゴロゴロしてさ。…なんか、リアの顔見てたら心配になっちゃって。笑顔見えなくなったら、俺、困るよ」

リアの目から、ぽろっと涙がこぼれた。でも、悪い涙じゃなくて、ホッとしたやつ。ハグのぬくもりで、心のプレッシャーが少し緩む。罪悪感のループが止まって、息が深くなる感じ。

「…ありがとう、コウタくん。こんな弱音吐いてごめん。でも、優しくしてくれて…なんか、胸のモヤモヤが晴れてきたよ」

 

少し赤らめながら笑う。

 「弱音? お前はもう十分頑張ってるよ。Eランク上がったんだ、新しい魔法も覚えたし。

 俺だって、お前の笑顔のためにクエストクリアしてるんだからさ。お互い様だろ? …本当、リアが元気ないの、見てると俺まで元気出なくなっちゃうよ」

 

リアは顔を上げて、涙混じりにくすっと笑う。頰がピンクに染まって、目が少し輝き出す。


 「ねえ、コウタくん…どうしてそんなに優しいの? 私、弱いのに…」

「リアが弱いわけない!

 本当だ。リアとの笑顔が見たいから、もっと強くなりたいんだぜ。…だから、たまには休んでくれ。俺、待ってるから」

リアの表情がぱっと明るくなる。


 「私も…コウタくんの笑顔が見たい。だから、もうちょっと頑張ってみる。でも今日は、一緒に休もう?」

コウタはリアの手をしっかり握り返す。

 「おう、自分のペースでいいよ。俺らが一緒に歩けば、それで最強さ。…よし、帰ってアイスでも食おうぜ」

 

夕闇の街を、二人はのんびり歩き出す。リアの足取りが軽くなって、時々小さな笑い声が漏れる。家に着いたら、簡単ディナーでまったり。リアの疲れが溶けていくのを見て、コウタは思う――これが、俺らのクエストだよな。素直に心配してよかった。

【クエスト成功:優しい選択】

リアの心の負担が軽減されました。

絆が深まり、より強い信頼関係が築かれました。


「うん…ありがとう、コウタくん」


そして、彼女はコウタの胸に顔を埋め、囁くように言った。


「ありがとね、コウタくん。大好きだよ」


その言葉が、コウタの胸をじんわりと満たした。彼はそっとリアの涙を拭いながら、静かに答える。


「俺もだ、リア。大好きだ」


街灯の灯りが二人を優しく照らす。


「これからも、ゆっくりでいい。一緒に歩いていこう」


リアはうなずき、コウタの手をしっかりと握り返した。


「うん、一緒に」

 

 

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