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第四話:君と僕の未来図 ―Fランクだけど、絶対幸せにする―
中学三年生の春。卒業式が間近に迫ったある夕暮れ時、コウタは公園の桜の木の下で、リアの袖をぎゅっと掴んでいた。手のひらは汗でびっしょりで、鼓動が喉まで鳴り響いている。
「リ、リア…!ちょっと、話がある!」
「ど、どうしたの、コウタくん?急に真っ青になって…」
内心:(コウタくん、すごく緊張してる…?もしかして、大事な用事?)
コウタは深く息を吸い込み、リアの目をまっすぐ見つめた。この瞬間のために、何日も何日も言葉を練ってきた。
「俺はな…リアのことが…」言葉が詰まる。頭が真っ白になる寸前、彼は思い切って叫んだ。「…だいだいだいだいだーいすきなんだ!」
桜の花びらが一枚、ひらりと二人の間を舞い落ちた。
「え…?」リアはただぼんやりとしていた。
「だから…!」コウタは勢いのままに言葉を続ける。「卒業したら…俺と一緒にハンターになってくれないか!?」
「は…ハンター?」
「そうだ!Fランクからスタートだし、きっともっとすごい連中からはバカにされるかもしれない!食っていくのだって大変だ!でも…でもな…!」
コウタの声が震えた。彼は必死に思いを紡ぐ。
「どんなに貧乏でも、どんなに辛くても、お前を絶対に幸せにする!それは…俺が守ると誓った者として、約束する!」
彼の叫びが公園に響き渡り、再び静寂が訪れた。
コウタは覚悟を決めてリアの反応を見た。断られるかもしれない。無茶な話だと思われるかもしれない――。
「……ふふ」
小さな笑い声が聞こえた。見上げると、リアの目に大粒の涙が光っていた。
「コウタくん、ばか…」
彼女は涙を拭いながら、最高の笑顔を見せた。
「私も…コウタくんのこと、好きだよ。ずっと前から。ハンターだって…コウタくんと一緒なら、どこだって行くよ」
「マジで…か…!?」
「うん!」
その瞬間――
――ドン!
コウタの視界が一瞬、金色に輝いた。まるで世界がリセットされるかのような感覚。そして、彼の眼前に、これまでに見たこともない青白い光の文字が浮かび上がった。
【運命のパートナーを確認】
《クエスト視認》システム、起動します
【メインクエスト】
『最愛の人と築く未来』
達成条件:南雲リアを幸せにする
報酬:真の強さ
【最初の任務】
『ハンターへの第一歩』
内容:ハンターギルドに登録する
報酬:職業「Fランクハンター」の取得
「な…なんだこれは…!?」
コウタは思わず声をあげてしまう。目の前の光景は現実味を帯びており、決して幻覚などではない。
「コウタくん?どうかした?」
リアは心配そうに彼の顔を覗き込む。彼女には何も見えていない。
(彼女には見えない…?これは…俺だけに見えるものなのか?)
「い、いや…なんでもない!」
コウタは慌てて首を振る。この不可思議な現象をどう説明すればいいかわからない。しかし、この“何か”が、彼の胸の中に確かな手応えを与えていた。
(これは…俺を導くものだ。リアを幸せにするために、強くなるための…道しるべだ!)
「よ、よし!それじゃあ…明日、さっそくギルドに登録しに行こうぜ!」
「うん!」
リアは嬉しそうにコウタの腕に抱きついた。彼女はこの不可思議な能力のことは何も知らない。ただ、愛する人と未来を歩み始めることだけが、彼女の全てだった。
内心:(コウタくんと一緒の未来…すごく楽しみ。何が起こっても、二人なら大丈夫だよね)
こうして、Fランクハンターとなる二人の未来図が描かれ、そして一人の少年に、未来を変える力が宿った。
桜の花びらが舞い散る中、彼らは新たな一歩を踏み出した。すべては、この日から始まった――。
(第四話 了)




