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【35話:特別報酬クエスト - 答えよ】
夜、アパートでコウタは一人窓辺に立っていた。リアは疲れて先に寝静まり、静かな月明かりが部屋を照らしている。
突然、視界が歪む。今までの《クエスト視認》とは全く異なる、重苦しい暗紅色の文字が、一つ一つ、脳裏に焼き付くように浮かび上がる。
【特別報酬クエスト】
以下の問いに答えよ
問い1
いつかあなたの感情も次第に慣れていきます
好きな気持ちも次第に薄れていきます。
それは相手も同様です。
今が良ければいいのですか?
あなたは彼女を幸せに出来ますか?
問い2
結婚して子供が生まれたらあなたは一番ではなくなります。
あなたの優先順位は下がります。
子供を守るためにあなたへの優しさはすべて子供へ向かいます。
相手はどんどん変わります。
あなたは彼女を幸せに出来ますか?
問い3
子供が大きくなれば、お金が必要です。
格差の波にのまれこのままではあなたは負けます。
気づいたら現実はもう取り返しがつかなくなっておりもう身動きがとれなくなります。
あなたは彼女を幸せに出来ますか?
問い4
好きなだけではないですか?
貧乏でいいんですか?
彼女の笑顔は無理してないですか?
あなたは彼女を幸せに出来ますか?
最終問い
あなたは彼女を幸せに出来ますか?
報酬:???
コウタは息を呑んだ。これまでのクエストとは次元が違う。それは未来への不安、現実の厳しさ、自分自身への疑問を、容赦なく突き付けてくる。
(これは……俺の心の奥底にある……恐れ……なのか?)
彼は震える手を握りしめ、窓の外の月を見つめる。そして、静かに、しかし確かな声で答えた。
「……感情が薄れる? ならば、毎日、新たに恋をすればいい。彼女の新しい笑顔を見つけて、また好きになればいい」
「子供が生まれても、俺は父親として守る。家族が増えれば、愛だって増やしていける。それが『家族』じゃないか」
「金がなくても、二人で働けばいい。どんなに苦しくても、リアと一緒なら……這い上がってみせる」
コウタは深く息を吸い、最後の問いに答える。
「俺は……彼女を幸せにしてみせる。たとえ世界が敵に回ろうとも、たとえ未来にどんな困難が待っていようとも……この手で、この身を挺して、彼女を幸せにしてみせる。それが……俺の、誇りだ」
その瞬間、暗紅色の文字がふわりと消え、優しい金色の光に包まれる。
【クエストクリア】
この特別報酬は前払い形式です
この問いかけ自体が報酬です
おめでとうございます
おめでとうございます
おめでとうございます
視界から文字が消え、部屋には再び静寂が訪れた。コウタは窓に手をつき、深く息をつく。あの問いかけは、単なるクエストではなく、彼自身が未来に向き合うための「気づき」だった。
ベッドで眠るリアの寝顔を見つめ、コウタは静かに微笑んだ。
「ありがとう……この問いをくれた誰かに。俺は……迷わない」
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-------答え-----
コウタがベッドに入り、ゆっくりと眠りについた頃――
視界が再び微かに揺らぐ。今度はこれまでとは全く異なる、静かで深淵を思わせる青い文字が浮かび上がった。
【シークレットアンサー】
“皆がそう言いながら、隣人を幸せにできていません”
“あなたの覚悟は、まだ彼女を幸せに出来るほど強くはありません”
“しかし――その意志は、確かに未来を変える一歩です”
“引き続きクエストをクリアし、経験を積み、強くなれ”
“そして、本当の『幸せ』の形を、この手でつかみ取ってください”
メッセージはそれ以上を語らず、静かに消えていった。
コウタは深い眠りの中で、わずかに眉を動かした。それは夢なのか、現実なのか――ただ一つ確かなのは、彼の旅がまだ終わっていないということだった。
(第35話 了)
作者のつぶやき
作者だったらメンタルがブレイクする\(^o^)書いててメンタルブレイクして風邪引いた




