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第三話:守られる誓い


ハンターになって数ヶ月。コウタとリアの日々は、Fランクらしい地味な雑用任務の繰り返しだった。それでも二人にとっては、幼なじみから恋人へと変わった関係を、そっと確かめ合うような、どこか甘い時間が流れていた。


ある晴れた午後、二人は公園のベンチで休憩していた。次の任務は「街のゴミ拾い」――いつも通りの、平和でのんびりとした任務だ。


「ふう…今日も暑いね」

コウタが飲み物のペットボトルを手に、ひと息つく。


「うん。でも、コウタくんと一緒なら、なんでも楽しいよ」

リアは嬉しそうにコウタの隣にぴったりと座り、彼の腕にそっと寄りかかる。


内心リア:(コウタくんの隣が一番落ち着く…。恋人になってから、もっと甘えてもいいんだよね、えへへ)


彼女は無邪気にコウタの存在を満喫していた。コウタがまだ「だいすき」と叫んでいた頃と、彼女の気持ちはほとんど変わっていない。ただ、公認の彼氏として、堂々と甘えられるのが嬉しいだけだった。


「なあ、リア」

コウタが遠い目をして言った。

「なんで俺たち、ハンターになろうって思ったんだろうな」


「え? そういえば、なんでだろう?」

リアはきょとんとした顔でコウタを見上げる。


内心リア:(そういえば、深く考えたことなかったな。コウタくんがなるって言うから、私もなっただけだし…)


「俺さ…」

コウタは言葉を探すように、ゆっくりと話し始めた。

「昔のことを、時々思い出すんだ」


---


――それは、小学校四年生の頃の話だった。


放課後の校庭。コウタはいつものように、数人の同級生に囲まれ、からかわれていた。


「おい、『無能』、今日の掃除も全部やれよ」


コウタは俯き、拳を握りしめるだけだった。反論する言葉も、抵抗する力も、何もなかった。


「やめて!」


その時、凛とした、しかし少し震える声が響いた。


人群を分けて一人の少女――南雲リアが前に出る。彼女はコウタの前に立ちはだかり、囲む男子たちを睨みつけた。


「そんなこと、ひどいよ!コウタくんは何も悪くない!」


「なんだよ、優等生ちゃん、カッコつけてんじゃねーよ」

一人の男子が苛立って、リアを乱暴に押し飛ばした。


「あっ!」


彼女はバランスを崩し、転がっていた石につまずき、そのまま鉄製の遊具の角に額を強打した。


鮮血がリアの額からあふれ出した。


「マ、マジでやべー!」

「逃げろ!」


彼らは慌ててその場から消え去った。コウタの眼前には、倒れ伏し、血を流すリアの姿だけが残された。


「な…なんで…」


コウタは震える足で這い寄り、彼女の肩を揺さぶった。


「なんで…お前まで…!」


血の温もりが、彼の小さな手のひらにじんと伝わる。


リアは苦しそうな表情を浮かべながらも、かすかに目を開けた。そして、コウタの泣きじゃくる顔を見て、かすかに笑った。


「だって…コウタくん、泣いてたもん…」


その言葉が、コウタの心を貫いた。


この子を、絶対に守ってやる。


涙も悔しさも吹き飛ぶような、激しい感情が彼を満たした。


「…大丈夫」


彼は自分のシャツの袖を引き裂き、泣きじゃくりながらも必死に彼女の額の傷を押さえた。


「もう…二度と…お前を傷つけさせない…!」


---


公園のベンチで、コウタは話を終えた。


「…それでさ。あの時の気持ちが、今でもずっとあるんだ。リアを守りたいって思う気持ちが、俺をハンターにしたんだと思う」


リアは少し驚いた顔をしていた。


「私、そんなこと、ほとんど忘れてたよ」

彼女は照れくさそうにうつむいた。

「でも…コウタくん、そんな風に思ってくれてたんだ」


内心リア:(コウタくん、私のことをそんなに大切に思ってくれてたんだ…すごく嬉しい)


「今はまだFランクで、大したこともできねえけど…」コウタは拳を握りしめて言った。「いつか必ず、リアをちゃんと守れるようになるよ」


「うん」

リアは満面の笑みを浮かべて、コウタの腕をしっかりと抱きしめた。

「私も、コウタくんのこと、信じてるよ。だって、コウタくんは私のヒーローだもん」


内心リア:(コウタくんがいてくれるから、私も頑張れる。このまま、ずっと二人でいられたらいいな)


彼女の胸には、コウタへの信頼と愛おしさだけが満ちていた。まだ「強くならなければ」という焦りも「置いていかれる」という不安も、その穏やかな心を曇らせるものは何一つなかった。


夕日が二人を優しく包み、これからも続くであろう平穏な日々を約束しているかのようだった。


(第三話 了)

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