表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/104

26

26

第26話:Eランクゲート、初挑戦


「おめでとう、リアちゃん!ついにEランクへの昇格が決まったよ!」


ハンターギルド・夕凪支部の受付で、職員がそう告げた。リアの手元には、新しいEランクの身分証が渡される。


「やった!コウタくん見て!Eランクだよ!」

リアは嬉しそうに身分証をコウタに見せた。


内心コウタ:(本当に良かった…彼女の努力が実って。でも、なんだか複雑だ)


「おめでとう、リア」

コウタは心からの笑顔で祝福した。


次の瞬間、コウタの《クエスト視認》が反応した。


【新クエスト】

『新たな一歩』

内容:リアのEランク昇格を祝福し、支えよ

報酬:絆の深化


リアの最初のEランク任務は、「緑苔の洞窟」での薬草採集だった。洞窟の入口で、コウタは足を止めた。


「ごめん、リア…Fランクの俺は、このゲートには入れないんだ」


リアの表情が一瞬で曇った。

「そ、そうだったね…コウタくんがいないなんて、久しぶりだよ」


内心リア:(一人で大丈夫かな…でも、もうEランクなんだから)


「大丈夫だよ」

コウタはリアの肩をポンと叩いた。

「お前は強い。できるさ。何かあったら、すぐに駆けつけるから」


その言葉に、リアは勇気づけられ、ゲートへと足を踏み入れた。


洞窟内は、青く光る苔に覆われ、幻想的な美しさに満ちていた。リアは他のEランクハンターたちと共に、指定された薬草を採集し始める。


「結構簡単だね」

とリアが呟いたその時──


「警戒!グリーンスライムの群れだ!」


チームリーダーの叫びと共に、ゼリー状の魔獣たちが四方から現れた。数は予想以上に多い。


「まずい、包囲された!」


リアは咄嗟に闇魔法を唱えた。

「《シャドウバインダー》!」


影の束縛がスライムたちの動きを封じるが、数の多さに圧倒される。魔力も急速に消耗していく。


一方、ゲート外で待つコウタは、不気味な轟音にハッと顔を上げた。


(警告!緊急クエスト発生!)


【緊急クエスト】

『ゲート内の危機』

内容:リアを救出せよ

制限:Fランクのゲート内進入は禁止

失敗ペナルティ:取り返しのつかない事態


「くそ…!」


コウタは一瞬躊躇った。規則を破るリスク、そして何よりリアを見殺しにするリスク。しかし、彼の決断は早かった。


「リアを守ると誓ったんだ!」


コウタはゲート警備員の制止を振り切り、中へと駆け込んだ。


「コウタくん!?」


窮地に立つリアの元へ、コウタが現れる。


「Fランクが来ても邪魔になるだけだ!」

とチームリーダーが叫ぶ。


「構わない!俺の役目は彼女を守ることだ!」


コウタは「守護者の誓い」を発動し、リアの前に立つ。リアの闇魔法とコウタの防御が絶妙に連携し、スライムの群れを次々と撃退していく。


「すごい…二人の連携、完璧だ」

と他のハンターたちも驚愕する。


戦いが終わり、洞窟内が静寂に戻った。


「コウタくん、ありがとう」

リアは涙ながらにコウタに抱きついた。

「コウタくんが来てくれて、本当に良かった」


ゲート外に戻ると、警備員から厳重注意を受けた。


「FランクがEランクゲートに無断進入とは、言語道断だ!」


コウタは深々と頭を下げた。

「すみませんでした。でも、もう一度同じ状況になっても、私は同じことをします」


その夜、アパートで二人は談笑していた。


「コウタくん、私Eランクになっても、やっぱりコウタくんが一番の相棒だよ」


「ああ、もちろんさ」


コウタの《クエスト視認》に表示された。


【クエスト成功】

『新たな一歩』完了

報酬:絆の深化を確認

次の目標:コウタのEランク昇格


リアはEランクとして新たな一歩を踏み出した。しかし、二人の絆はこれまで以上に強固なものとなったのだった。


第26話:Eランクゲート、初挑戦(続き・夜)


アパートの電気が消え、二人はベッドの中で今日の出来事を振り返っていた。


「コウタくん、寝る?」

「ああ、もう少しで」


しばしの沈黙の後、リアがふと疑問を口にした。

「ねえ、コウタくん…今日、私が危ないって、どうしてわかったの?」


コウタの心臓が一拍だけ早くなった。


(警告!警告!機密情報漏洩の危険!)


【緊急クエスト】

『秘密保持』

内容:クエスト視認の存在を絶対に明かすな

ペナルティ:システム強制終了


「それは…その…」

コウタは頭をフル回転させた。

「勘、だよ。なんとなく…リアが危ない気がして」


「勘?」

リアはきょとんとした声で繰り返す。


「あ、ああ…だって、お前のことはずっと見てきたからな。お前のピンチが、何となくわかるんだ」


内心コウタ:(ごめん、リア…嘘ついて)


「そっか…」

リアは納得したように呟いた。

「コウタくんの勘、当たってくれて本当に良かった。コウタくんが来てくれたから、助かったんだよ」


彼女はコウタの方に体を寄せ、温もりを求めるようにした。


「ありがとう、コウタくん。私のことを、そんなに気にかけてくれてて」


(クエスト『秘密保持』成功)


コウタは胸を撫で下ろすと同時に、罪悪感が胸をよぎった。


「もちろんだ。お前は…俺の大切な相棒だからな」


月明かりが窓から差し込み、二人を優しく照らす。コウタは誓った。


(たとえ嘘をつくことになっても、お前を守り抜く。これが、俺に与えられた使命なんだ)


そしてもう一つ、心に決めたことがあった。


(いつか、本当のことを話せる日が来ると信じて。それまで…)


「おやすみ、リア」

「おやすみ、コウタくん」


秘密を抱えながらも、変わらない絆で結ばれた二人の夜は更けていった。


第26話:Eランクゲート、初挑戦(続き・真夜中)


コウタの規則正しい寝息が寝室に響き渡る。彼は疲れていたのだろう、深く眠っていた。


…ふぅ…


その寝息を合図にするように、リアは静かに目を開けた。彼女はゆっくりと体をひねり、月明かりに照らされるコウタの横顔を見つめた。


(コウタくん…今日は本当にありがとう)


彼女の目は、闇夜の中で静かに輝いている。


(「勘」だって言ってたけど…どうして私がピンチなのがわかったんだろう)


リアの指が、そっとコウタの頬に触れる。熱はなさそうだ。


(もしかして…コウタくん、私に隠し事してる?)


この疑問が頭をよぎると、彼女の胸に少しだけ痛みが走った。しかし、すぐに彼女は首を振る。


(でも、それでもいいや)


彼女の口元に、柔らかな笑みが浮かぶ。


(コウタくんが何か隠してたとしても、きっと私を想ってのことだから)


コウタが寝言で「大丈夫…俺が…」と呟く。リアは思わず息を飲んだ。


(見て、やっぱり…寝ても私のことを守ろうとしてくれる)


彼女はこっそりとコウタに近づき、額に軽くキスをした。


(私ももっと強くならなきゃ。コウタくんを守れるように)


この想いが胸の中で強くなる。Eランクになったばかりだが、それだけでは足りない。コウタがあんなに危険を冒してまで自分を守りに来てくれるなら、彼女も同じことをしたい。


(次は私がコウタくんを守る番)


彼女はそっとコウタの手を握り、しっかりと目を閉じた。明日からは、もっと修行を頑張ろう。コウタくんと並んで戦えるように――


(コウタくん、おやすみ。愛してる)


月明かりが、変わらぬ愛に包まれて眠る二人を、静かに見守っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ