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第25話:街角の再会、そして…
すがすがしい秋晴れの日。コウタとリアは、ようやく貯まった小銭で日用品の買い出しに街へ出ていた。
「よし、これで洗剤もあと一ヶ月は持つな」
「うん!それに、コウタくんのお弁当箱も買い替えられてよかったね」
二人が嬉しそうに戦利品を見つめ合うその時…
「おっ!?コウタ!?リアちゃん!?」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこには爽やかな学生服を着たケントの姿があった。
内心:(ケント…懐かしいな)
「まさか街で会うなんて!元気?」
ケントは笑顔で近づいてくる。
「ケント君、久しぶり。実はね、私、最近Eランクに昇格したんだよ!」
リアは無邪気に報告する。
「Eランク!?すごいじゃないか!」
ケントの目が一瞬コウタを一瞥した。
「でも…コウタは相変わらずFランクなのか?」
(…警告。劣等感刺激を検知)
【注意】
『劣等感』が覚醒しました
対象:自身の成長不足
「あ、ああ…まだな」
コウタはうつむきぎみに答える。
「なんでコウタみたいなFランクと一緒に、そんな危険な仕事を続けてるんだ?」
その瞬間──
(警告!警告!依存度異常値検出!)
コウタの視界に、信じられない数値が表示された。
【状態確認】
リアへの依存度:412%
(基準値100%)
…再計算中…
…再計算中…
異常値のため、表示を停止します
内心:(…は?412%?そんな数値ありえるのか?)
あまりの異常な数値に、コウタは逆に冷静になった。これはもう普通の「依存」ではない。何か別のものだ。
「ケント君」
コウタが突然、落ち着いた声で口を開いた。
「俺がFランクなのは事実だ。でもな…」
コウタはリアの手を握る。その手は温かく、確かなものだった。
「この子と一緒にいられるなら、Fランクのままでも構わない」
内心:(これが依存なのか、愛なのか…わからないけど、これが俺たちの現実だ)
ケントは驚いた表情で二人を見つめ、やがて苦笑いした。
「…わかった。お前たちらしいな。じゃあ、頑張れよ」
帰り道、コウタは《クエスト視認》を見つめる。
【新状態:『不可解な絆』】
説明:通常では計測不能なレベルの強い結びつき
効果:不明
「コウタくん、さっきはかっこよかったよ」
リアが嬉しそうに言う。
「そうか…」
コウタは微笑んだ。
内心:(この絆が何であれ、俺はお前を守り続ける)
数値は異常でも、気持ちは確かだった。それで十分だと、コウタは思った。
アパートのドアを閉め、ほっと一息ついた時、コウタはふとリアを見つめた。先ほどの異常な数値——依存度412%——が頭から離れない。
(俺は…こんなにも彼女に依存していたのか)
この事実に、コウタは自分自身に少し驚いていた。でも、不思議と恥ずかしさや嫌悪感はなく、ただ「ああ、そうなんだ」という冷静な認識だけがあった。
「コウタくん、どうしたの?さっきからじーっと見てるよ」
リアはきょとんとした顔で首をかしげる。
「…リア」
コウタは慎重に言葉を選びながら問いかけた。
「俺のこと…重くないか?」
リアの目がぱちぱちと瞬く。
「え?どういうこと?」
「だって…」
コウタは自分の胸を指さす。
「俺、君にべったりすぎるだろ?いつも一緒にいて、君のことを…」
依存している——その言葉はさすがに言い出せなかった。
すると、リアの顔にふわりと笑みが広がった。それは、朝日のように明るく、純粋な笑顔だった。
「ぜんぜん重くないよ!」
彼女は楽しそうにコウタの腕にすっと寄り添う。
「むしろ、コウタくんが私を必要としてくれるのが、すごく嬉しいんだから」
内心:(コウタくんが私に甘えてくれると、とっても幸せな気持ちになるの)
「でもさ…」
「でもなんてないよ」
リアの声は優しく、しかし確信に満ちていた。
「コウタくんがいなかったら、私…きっと何もできない」
彼女はコウタの手を両手で包み、しっかりと握る。
「私たち、お互い様だよね。支え合って、助け合って…それが当たり前で、それが幸せなんだよ」
その言葉に、コウタの胸のわだかまりがふっと消えた。
「…そうか、ありがとう」
内心:(依存度が412%だろうが、何だろうが…この関係が、俺たちにとっての『普通』なんだ)
「それよりね、コウタくん」
リアはいたずらっぽい笑みを浮かべて言った。
「これからも、いっぱい私に甘えていいからね?約束だよ」
「…約束する」
コウタは、また一つ大切なことを学んだ。数字ではなく、目の前の彼女の笑顔こそが、全ての答えなのだと。
そして…(夜)
夜、アパートの小さなベッドで、コウタとリアは背中合わせに寝ていた。コウタの規則正しい呼吸が、静かな部屋に響いている。
…ふぅ…
コウタが深く眠りに落ちたのを確認すると、リアの長いまつ毛がふわりと開いた。彼女はそっと体をひっくり返し、月明かりに照らされるコウタの横顔をじっと見つめた。
(コウタくん…寝顔、かわいいな)
彼女の口元が自然と緩み、ほんのりと赤くなる。今日、コウタが「重くないか?」と聞いてきた時のことを思い出す。
(ぜんぜん重くなんてないんだよ)
内心でそうつぶやきながら、リアはこっそりとコウタに近づく。
(むしろ、コウタくんが私を必要としてくれるのが、すごく嬉しい。だって…)
彼女の指が、そっとコウタの寝乱れた前髪に触れる。
(私の方が、もっとずっとコウタくんに依存してるんだから)
コウタが眠りの中で少し動き、無意識にリアの方に体を向ける。リアは思わず息を飲んだ。
(私がいないとダメなのは、コウタくんじゃなくて、私の方なのに…)
彼女は目を細め、幸せそうな笑みを浮かべる。
(コウタくんがFランクでも、Eランクでも、何でもいいよ。ただそばにいてくれるだけで…)
(この温もりを感じられるだけで、私はそれで十分幸せなんだ)
コウタが寝言で「リア…」とつぶやく。リアははっとし、また寝たふりをした。
しばらくして、こっそりとまた目を開ける。
(守られるだけじゃ物足りない。私もコウタくんを守りたい。もっと強くならなきゃ)
彼女はそっとコウタの手を握り、しっかりと目を閉じた。
(明日からも、ずっと一緒だよ、コウタくん)
月明かりが、幸せそうに眠る二人を優しく見守っていた。




