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第十九話:恋は盲目
ある週末の朝、コウタはアパートのリビングで、なにやら真剣な表情で鏡の前で格好をつけていた。
「どうしたの、コウタくん?何をそんなに悩んでるの?」
リアが心配そうに近づいてくる。
「い、いや、その…今日のデートなんだけど、この服、どう思う?」
コウタは着古したジャケットとよれよれのジーンズを身に着けている。
内心:(ああ…コウタくん、とっても素敵だな。でも、この服は三年くらい前から着てるよね…)
「とってもかっこいいよ!コウタくんにぴったりだね!」
その時、コウタの《クエスト視認》が警告を表示する。
【ファッションクエスト】
『服装を改善せよ』
現在の評価:Fランク
アドバイス:その服装はデートに不適切です
「え?でもリアが素敵って言ってくれたぞ?」
【システム警告】
『恋は盲目』効果を検出
対象のリアは、あなたの服装を客観的に評価できません
「コウタくん、早く行こうよ!今日のデート、楽しみだな!」
リアの目はキラキラと輝いている。
内心:(コウタくんが何を着ていても、私には世界一素敵に見えるんだ)
街を歩いていると、通行人たちがコウタの服装に怪訝な表情を向ける。しかしリアはまったく気にしていない様子だ。
「ねえ、コウタくんあのカップル見て。彼氏の服、おしゃれだね」
「ああ、確かに…でも俺の方がリアから見たらかっこいいんだろ?」
「もちろん!コウタくんの方がずっと素敵だよ!」
内心:(これはまずいな…リアは完全に恋の盲目状態だ)
デートの最後、コウタは思い切ってリアに聞いてみた。
「なあ、リア…正直に言って、俺のこの服、どう思う?」
「え?もう言ったよ。とっても素敵だって」
「でも、ほら…少し古いし、サイズも合ってないだろ?」
リアは首を振り、コウタの腕にすり寄る。
「そんなの関係ないよ。だってこれはコウタくんの服だもの。コウタくんの匂いがするし、一緒に過ごした思い出が詰まってるんだから」
その純粋な言葉に、コウタは胸を打たれる。
【クエスト失敗】
『服装を改善せよ』は達成できませんでした
理由:恋愛感情が客観的判断を上回りました
代わりに『無条件の愛』を獲得
「わかった、ありがとう、リア」
コウタはリアの手を握りしめる。
「でも次に服を買う時は、一緒に選んでくれないか?」
「うん!もちろん!コウタくんをもっと素敵にするの、手伝うよ!」
内心:(今のコウタくんが一番好きだけど、おしゃれするのも楽しそう!)
夕日の中、手をつないで帰路につく二人。コウタは思う。
(客観的に見ればボロ服かもしれないが、リアの愛は本物だ)
(それに、この盲目な愛こそが、俺たちを強くしてきたんだ)
恋は盲目――しかし、その盲目さが時に、最も純粋な幸せをもたらすこともあるのだ。
(第十九話 了)




