14
14
第十四話:謎の生還
コウタは胸のひりひりする痛みで目を覚ました。
「うっ…!」
咄嗟に胸を押さえるが、そこにはデスストーカーの鋭い爪が貫いたはずの傷はなく、ただ打撲のような痛みが残っているだけだった。ユニフォームだけが大きく破れていた。
「目が覚めたか?奇跡的な生還だな」
見上げると、ギルドの治療師が立っていた。どうやらギルドの治療院に運ばれていたらしい。
「リアは…!?」
「相方の女の子なら、あちらで眠っている。少し疲労しているようだが、無事だ」
コウタはほっと息をつく。そして疑問が湧いた。
「デスストーカーは…どうなったんです?」
治療師が首をかしげる。
「それがね…君が倒したんじゃないのか?デスストーカーの死体が君たちのそばにあった。通行人が気づいて救助を呼んだそうだ」
「僕が…?」
コウタの記憶はあいまいだった。確かにデスストーカーの致命的一撃を受けた感覚はある。死を覚悟したあの瞬間――その後の記憶はない。
数日後、退院した二人はデスストーカーの死体を売却し、臨時収入を得た。
「コウタくん、すごいね!デスストーカーを倒したんだよ!」
リアは目を輝かせてコウタを見つめる。
「きっとコウタくんの真の力が覚醒したんだよ!」
しかし、コウタの視界にはっきりと表示された。
【クエスト失敗】
『絶対に守り抜け』は達成できませんでした
リアを守り切ることはできませんでした
「…うん、多分ね」
コウタは無理に笑顔を作った。
内心では混乱が渦巻いていた。クエストは失敗したと表示されている。ということは、自分はリアを守れなかったはずだ。では、いったい誰がデスストーカーを倒したのか?
「私、気が付いたらコウタくんのそばで倒れてたんだ」
リアは恥ずかしそうに言った。
「コウタくんが私を守ってくれて、それで…きっとコウタくんの中に眠ってた本当の力が目覚めたんだね」
その言葉に、コウタははっとした。確かに《クエスト視認》という不思議な能力を持っている。もしかしたら、本当に自分の中に未知の力が眠っているのかもしれない。
「…そうかもな。でも、リアが無事でよかった」
コウタはリアの手を握りしめた。
「これからも、ずっとお前を守り続けるからな」
「うん!」
しかし、コウタの心の中には消えない疑問が残った。あの瞬間、いったい何が起きたのか――その真実は、まだ霧の中に隠されたままだった。
(第十四話 了)




