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第十二話:嘲笑される無能力
とある晴れた日、コウタとリアはBランクハンターのパーティーに荷物運びとして同行する依頼を受けた。報酬はこれまでで最高額で、危険も少ないと聞いて、二人は期待に胸を膨らませていた。
集合場所で待っていると、Bランクハンターのパーティー「シルバーファング」が到着した。リーダーの剣士ガルドは、がっしりとした体格の男で、二人を一瞥するとすぐに冷淡な目を向けた。
「お前たちがFランクの荷物持ちか。名前は?」
「コ、コウタです。こちらが相方のリアです」
「ふん…まあいい。だが、荷物運びだけに徹しろ。戦闘には一切関わるな。お前たちが相手にする魔獣とは格が違う。邪魔だ」
魔術師のリナは、優雅な杖を手にしながら二人を嘲笑った。
「Fランクってことは、多分無能力者なんでしょ?このクエスト、本当に大丈夫かしら。荷物さえ持てればいいの?」
コウタは悔しさをこらえ、前に出る。
「荷物運びは任せてください。僕は…」
その時、ガルドが遮る。
「お前たちの特性は何だ?Fランクでも、何か一つくらい特技があるんだろう?まさか、本当に何もないんじゃないだろうな?」
コウタはうつむき、声を絞り出すように答える。
「僕は…無能力です」
すると、リアも小さく答える。
「私も…特性はありません」
一陣の嘲笑が起こる。
「はっ!まさかの無能力者二人組か!」
「これじゃあ本当に荷物持ちしかできねえな」
「Bランクの俺たちが、なぜ無能力者の世話までしなきゃいけないんだ」
ガルドは大きくため息をついた。
「とにかく、俺たちの邪魔をするな。お前たちができるのは荷物運びだけだ。わかったな?余計なことは一切するな」
「「はい…」**
一行は森の奥へと進んでいく。道中、Bランクハンターたちは華麗に魔獣を倒し、その実力の差を見せつける。
リナがわざとらしくため息をつく。
「無能力者って、やっぱり惨めね。私たちみたいに魔法が使えたら、もっと楽に生きられるのに」
別の隊員、弓使いのケインが続ける。
「Fランクってことは、たぶん一生このままなんだろうなあ。荷物持ちか、街の雑用くらいしかできないんだろ?」
リアはコウタの袖をそっと引っ張り、無理に微笑む。
「大丈夫、私たちは私たちの役目を果たしましょう。コウタくん、深呼吸して」
コウタは深く息を吸い、拳を握りしめた。内心では、この屈辱をバネに強くなろうと誓う。
(次こそは…絶対に…!)
一行が森のさらに奥深く、鬱蒼と茂るエリアに差し掛かった時、不気味な気配が漂い始める。
「なんか…静かすぎないか?」
「気のせいだろ。さっさと進むぞ」
しかし、コウタの《クエスト視認》が突然、警告を発した。
【警告】
高濃度の魔獣の気配を検知
危険度:極高
「な、なんか…変な気配がしませんか?」
コウタが恐る恐る言うと、ガルドは鼻で笑った。
「Fランクの勘違いだろう。黙ってついて来い」
その瞬間、地面が揺れ、遠くから不気味な咆哮が聞こえてきた。
リナの顔色が一瞬で青ざめる。
「まさか…このエリアに、あの魔獣がいるなんて…」
ガルドもようやく事態の重大さに気づき、叫ぶ。
「全員、警戒しろ!これは…!」
森の奥から、漆黒の巨体がゆっくりと現れる。その目は不気味な赤色に輝き、鋭い牙をむいていた。
エリアボス級魔獣・デスストーカーだった。
(第十二話 了)




