表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/104

89

:リアの無意識下

闇の力がコアを破壊した後、リアはコウタの傍に力なく倒れ込み、深い眠りについていた。彼女は無傷であったが、その精神は肉体とは別の場所を彷徨っていた。

――無。深い、黒い水底。

幼い頃、誰も守ってくれなかった、あの冷たい闇の記憶。今度こそ、自分は完全に一人きりになってしまったのだと、リアの意識は絶望に沈もうとしていた。

その時、闇の中で一筋の光が差し込んだ。

光は文字の形をしていた。コウタが常に見ていた、クエストの文字。しかし、それは彼女の力(闇)によって拡張され、視覚的な映像となって彼女の心に流れ込んでくる。

彼女の無意識に、コウタの**「クエストの軌跡」**が再生された。

| クエスト名 | 目標 | 成功/失敗 |

|---|---|---|

| 【初クエスト】 | 迷子になりかけたリアをギルドまで送る | 成功 |

| 【日常】 | リアの夕食を作る | 成功 |

| 【隠蔽】 | 影に触れたリアの手の傷を隠す | 成功 |

| 【救助】 | 危機に瀕したリアに、真っ先に手を伸ばせ | 成功 |

| 【護衛】 | リアの笑顔を守る | 成功 |

| 【代償】 | リアの代わりに攻撃を受け、影から引き剥がせ | 成功 |

| 【究極の目標】 | リアを、何があっても無傷で帰還させる | 成功 |

無数の、無名の、ささやかなクエスト。そして命を懸けた、重大なクエスト。すべての映像に共通するのは、傷つきながらも、決して諦めず手を伸ばすコウタの姿だった。

リアの胸に、激しい感情の奔流が押し寄せる。それは、コウタの痛み、献身、そして彼女に対する絶対的な愛だった。

「――コウタ……」

眠りの中で、リアの目から一筋の涙が溢れ、枕に吸い込まれた。

彼女は知った。自分が守られていたこと。自分のために、彼が人生のすべてをクエストに変えていたこと。

闇の力は、その**「光の軌跡」**に触れた途端、静かに鎮静化していく。

光が消え、静寂が訪れる。リアの無意識は、温かく満たされた状態で、穏やかな眠りへと戻っていった





:その夜の決意

コウタは包帯だらけの身体を引きずり、リアのベッドの傍に座った。動くたびに痛みが走るが、彼女の傍にいたかった。

眠るリアの手を、そっと握る。掌に伝わる温もり。

「……ごめん」

声が震える。

「守るって、言ったのに」

失いかけた絶望が、どんな痛みよりも深く心に刻まれている。

「だから……もう二度と……離さない」


 

:リアの無意識下での共鳴

眠るリアの目元から、一筋の涙が静かに流れ落ちた。

闇の力がコアを破壊した後、リアの意識は深い眠りの中にあったが、その無意識は、コウタの**「クエスト視認」**の力と微かに共鳴していた。

彼女の精神に、コウタがこれまでクリアしてきた無数のクエストの記憶が、光の奔流となって流れ込んでくる。

コウタが隠してきた、痛みと努力のすべて。

彼が自分自身に課してきた、すべての**「目標:リアを守る」**という至上命題。

その膨大な、愛に満ちた軌跡を知った瞬間、リアの心は震えた。

「コウタ……」

眠りの中で、リアはただ彼の名前を呼んだ。コウタには聞こえない小さな声だった。

(コウタはリアの手を握ったまま、静かに眠っている)

コウタの献身を知ったリアの無意識は、力を鎮静化させ、満たされた安らぎの中で、穏やかな眠りへと戻っていった。

:翌朝、二人の誓い

翌朝。リアが目を覚ますと、自分の手を握ったまま眠るコウタの姿があった。

「おはよう、コウタ」

コウタがはっと目を覚ます。

「リア……無事で、よかった」

リアは小さく息をつき、包帯だらけのコウタの腕に視線を落とす。

「私を、守ろうとしてくれたんだよね。ありがとう。そして……ごめんね」

「謝るな。これは俺が選んだことだ」コウタがリアの手を握り返す。「だから、気にするな」

リアは涙を拭い、小さく笑った。

「……ずるいよ、そんなこと言われたら」

そう言って、リアはコウタの手を、ぎゅっと握り返した。

その時、コウタの視界にいつものようにクエストが表示される。

【日常クエスト:この手の温もりを忘れない】

目標:今日一日、彼女の手を離さない

報酬:共に過ごしたかけがえのない時間×1


コウタははっとしたが、リアには見えないことを知っているため、表情に出さない。

「どうしたの?」リアが不思議そうに見つめる。

コウタは首を振り、彼女の手を強く握り返した。

「何でもない。ただ……今日は、お前の手を離したくないなって」

リアの頬がほんのり赤く染まる。

「……もう、急に何言ってるの」

彼女は嬉しそうに笑ったが、その瞳の奥には、コウタのすべてのクエストを知った者だけが持つ、深く強い光が宿っていた。

リアは、コウタが知らないところで、彼のすべての献身を受け取ったのだ。

「じゃあ、今日一日、一緒にいよ?」

「ああ」

コウタが頷く。リアはその手を、ぎゅっと握り返した。

何が起きたのかは、コウタには分からない。

だが、リアは知っている。

これからも、どんな闇が来ても、この手は離れない。

二人はそう、心に誓った。

窓から差し込む朝日が、抱きしめ合った二人を優しく、深く照らしていた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ