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その血は人を狂わせる。  作者: ありま氷炎
第三章 クルスナラハ
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チャーリー王の真価

 アーロン、リアムが出発後、遅れて発ったセオたち四人が駅馬車の待合い所に着いた時、男の子が走ってきた。

 

「これ、リアムって人が渡しって」


 男の子はそう言うと、手を振っていなくなった。

 手紙を渡されたのは、女装したテイラーだった。


「今読んだ方がよさそうですね」


 周りを気にしながらも、テイラーは手紙を開けた。


『俺たちは別の用事ができたから、四人だけで、旅行楽しんで』


 中身を読まれることを配慮してか、書かれた文章はそれだけだった。


「……来ないってことだよな?」

「そういうことですね。『バート』」


 テイラーは偽名でセオを呼ぶ。

 それに気がついて、セオも気持ちを切り変える。


「四人だけで楽しもう。母さん」

「……そうですね」


 眉をぴくりと不快そうに動かしたが、テイラーは腐っても精鋭の一人。張り付けた笑みを浮かべた。

 レイアには演技はまだ早いので、黙ってセオの隣に立っているだけだ。


「馬車が来ましたよ」


 馬の嘶き、その足音、車輪の音がどんどん大きくなり、馬車が所定の場所に止まる。

 他の人に混じりエディが先に乗り、彼はテイラー、レイア、セオを荷台に引き上げる。

 幌が被った荷台は、人が座れるように長椅子設置されていて、十人乗りだった。

 セオたち四人以外に男女六人が乗り、馬車が出発した。

 

 ★


「さあて、テイラーたちは今頃港街に向かっているかな」


 リアムは料理人として城内で働いていたのだが、田舎の親が病気で退職願いを出している。

 彼が怪しまれる可能性は低いが、セオは突如消えた形になっているので、レイアと関連づける者も出てくるだろう。

 このことを考えても、今回の計画は杜撰すぎたとリアムは反省していた。

 けれども中に入る方法は色々あり、彼は野菜など食料品を運ぶ馬車の中に隠れた。

 そうして馬車が止まると荷台から飛び出して、陰に潜む。

 死角になる場所はセオ同様調べはついていて、目的地である監獄へ死角を使って近づいていく。

 監獄の門番は地味な仕事であり、ある意味囚人と共に地下に閉じ込められることになり、志願者の少ない仕事だった。なので、門番のやる気はなく、牢屋の隣で酒を飲んだりしている者が多かった。

 ここもそうで、リアムは交代要員を気絶させてなりすまし、地下に向かった。

 彼が当番を代わると伝えると、門番は喜んで彼に鍵を渡していなくなる。

 酒を飲み過ぎているため、判断力が鈍って、リアムの顔も確認していない有様だ。

 門番が完全に上の階へ上がってから、リアムは次々に牢屋のカギを開けていく。


「お前はだれだ?」

「なんで俺らを助ける?」


 尋ねる囚人たちにリアムは答えない。

 代わりに彼の血を塗った小剣で、彼らの足や腕を少し傷つける。


「おい、こら!」

「何をするんだね。君は」


 囚人の種類も色々だったが、リアムは全員に同じことを施した。

 襲いかかってこようとする囚人から逃げ、リアムは上に登る。その途中で、囚人たちのうめき声が背後から聞こえてきた。その後、それは唸り声に代わり、足音を響かせ彼を追いかけてきた。


「た、助けて!」


 被害者を装い、近くにきた騎士に助けを求める。

 リアムの背後を見た騎士の顔が引きつる。


「不死身の兵士?なぜ、ここに?」


 リアムは騎士たちの間をすり抜け、走った。


「お、おい!」


 騎士たちはリアムを呼び止めるがそれだけだ。

 不死身の兵士に襲われて、悲鳴を上げる。

 八人の不死身の兵士が誕生し、城内を恐怖に陥れた。

 リアムは高みの見物だと、構造物の屋根に登り見下ろす。


「頭を狙え、こうやって」


 混乱に陥った現場で、静かな声が響く。

 声の持ち主が放った矢は綺麗に飛び、不死身の兵士の一人の頭を撃ち抜く。

 それだけで不死身の兵士が死亡した。


(かっこいいな。だれ、王様?チャーリー?)


「陛下!」


 王の登場に盛り上げる騎士たち、臆した心にも勇気が戻ったらしく、不死身の兵士は一人、また一人と殺されていく。


「今が狙い時かな」


 マルクの姿は見えないが、チャーリーだけでもここで殺せないかと、リアムは弓矢を構える。


「バイバイ」


 リアムは軽くそう言うと矢を放った。

 真っすぐ飛んだ矢は彼の額に刺さるはずだった。

 しかし、それをチャーリーは素手と受け止めた。

 矢が放たれた方向も彼は把握しており、リアムを睨んでいた。


「くそっ。忘れていた。森の民の血が入っていた」


 イザベルの血を受けても狂わなかったチャーリー。だけど、何らかの変化は起きているはずだった。

 身体能力が他の人と飛躍的に異なることをすっかり彼は見落としていた。


「いやいや、本当色々失敗した」


 こうなれば捕まるだけだと、リアムはその場から離れた。

 騎士たちは不死身の兵士を倒しながら、リアムを追いかけてくる。

 矢も放たれ、逃げるのは至難の業に思えた。


(こうなれば、相打ち覚悟でチャーリーだけでも殺すかな?)


 逃げるのをやめ、走り出そうとしたリアムを止めた手があった。


「逃げるぞ。死んだら、あいつに利用される」


 それは森へ行ったはずのアーロンだった。

 アーロンはチャーリーの隣のマルクを睨んでいた。

 

「わかった。逃げよう」


 二人は協力しながらどうにか城を抜け出した。


 



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