97話 翔ぶが如く。
「んー、要するに、帝国がちょっかいだして来てるから気を付けろ、でオーケー?」
要するにそういうことだよな。
「気を付けて、目立たないようにして欲しいものですわね」
「どうせ、明日には帰るんだから、いいだろ?」
夜の間この宿が安全なのなら、な。
「街にいる間は、儂の方でも注意はできるが、向こうもそれは判っておるじゃろう。おそらくじゃが、帰り道での待ち伏せという線がありそうじゃの」
ふむ、つまり、街を出てから十分に離れた場所での襲撃とか、夜営中の夜襲なんかをされるかもしれない、ということか。
「まあ、大丈夫、大丈夫」
どうとでもなるさ。
翌日早朝、港の桟橋からマイ・ジェットで帰りました。
直接マイ・ジェットで家に帰るのは初めてか。何だかんだでマイ・カーの方ばかり使ってたからなぁ。
以前はただの平原だったが、今は立派な家もあり、塔まで建っている。上から見ると、感慨深いものがあるなぁ。
「やっぱり、家が一番だ」
早速、ひとっ風呂でも、と思いきや。
「お帰り、だんな」
「留守中に、ニーナがまた食材を持ってきましたよ。また来るそうです。分類は済ませておきました」
机の上に、植物の根っ子のようなものや芋のようなものが並んでいる。
いつも済まないね、アイリスや。
そんな風に、家に入った俺を4人娘が出迎えたのだった。
エレメア? 後ろにいるよ?
うん、一人多いよね。
年の頃はアイリスくらい。少し癖のある青い髪を長く伸ばしていて、ちゃぶ台に座った姿で既にその几帳面な性格が伺える。
しかして、その実態は。
「どなた?」
判らないことは聞こう。
「問われて名乗るも烏滸がましいが、拙者、名をカエデ、姓をアラキと申す」
一度立ち上がると、腰を落として手を前に差し出す独特の姿勢でそう名乗る。
これ、あれだ。おひけえなすっておくんなせぇ、の姿勢だ。
和風なんだね。
「あ、俺は姓が松田で、名前が義嗣、です」
「あら、ヨシツグは家名があったのね」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「マッターホルンが家名の扱いになってるねぇ。今度、直すように言っとくよ」
まあ、普段は名乗ることも無さそうだしな。
「それで、家に来たのは何か用で?」
とりあえず、邪魔になるので机の上のものは台所に移動させる。
ついでに石化ディテクトをして、少量づつ収納。
「は。拙者、是非とも此方で勉強させていただきたいと、まかりこした次第」
「ああ、なるほどな。オーケーオーケー。いつかは来ると思ってたんだ。歓迎するよ」
「おお、誠にござるか」
お、固い雰囲気が取れて、少し子供っぽくなったかな?
「それで、書いたものはあるの? 見せてくれないか?」
「はい、父からの親書がございまする」
カエデはそう言うと、懐から折り畳まれた紙を取り出す。
随分と、挨拶のしっかりした親御さんだな。
「それは、後で見させて貰うよ。それより、君自身が書いたものを見せてほしいのだけれど」
「む、拙者がでござるか?」
首を傾げるカエデ。あれ?
「もしかして、まだ書いたことがないとか?」
「申し訳ござらん。拙者の書いたものは用意が無く……」
うーん。
むっ。
これはっ。
「うおぉぉぉぉぉっ!」
思わず雄叫びが出てしまう。
「な、な、何でござるか? 拙者、何か粗相を……?」
やってくれたぜ、ニーナっ。
「喜べ、エレメアっ。ウコンだ、ウコンがあるっ」
ウコン、つまりターメリックである。
ターメリックって、実じゃなくて根っ子だったのか。
「これでカレーが出来るぞぉぉぉっ」
「……エレメア、カレーって何だい?」
「美味しいお料理、とは聞いてますわ。私もそれ以上はちょっと……」
「まあ、いつも通りね。気にしなくていいわよ、カエデ」
「はあ、そんなものでござるか……」




