92話 ホット&スパイシー。
「エレメアが辛いもの好きとは知らなかったな」
言葉と態度が辛口なのは身に染みているが。
「普段は皆に合わせてますもの。甘いものだって好きではありますのよ。ただ、たまには辛いものも食べたくなるんですわ。身近にお子ちゃま舌がいると仕方がありませんわね」
そういえば、いつもの酒場の料理は共通メニューだったっけか。食べる相手を選ぶ料理なんかは出せないだろうな。
「普段っていうか、エルフの国とかじゃ、どんな食べ物があるんだ?」
「そうですわね。唐辛子を効かせて、香草で味を整える感じかしらね」
エスニック風か。タイ料理みたいな感じかな。
「ヨシツグの故郷なら、辛い料理もいろいろあるんじゃないかしら?」
こいつ、どさくさに紛れて、それが目的か。
「うーん」
まぁね。あるけどね。
「作れるかどうかは別の話なんだよなぁ」
辛い料理といえばカレーだろう。
実は以前ニーナが持ってきた引っ越し祝いの中には聞き覚えのあるものもあった。
コリアンダーとか、クミンとか、カルダモンにナツメグ。
唐辛子で辛味をつければ、それっぽくなりそうではある。
ただ、ターメリックが無かった。カレーの三大要素じゃなかったっけ? どんな実が原料かまでは知らないんだよ。
入手さえすれば石化ディテクトで確認は出来るけど、能動的に探すのは難しい。
聞いた覚えはあるんだよな。カレーの歌。
挿入歌だったから、歌詞を正確には覚えてない。
スパイスの名前がいろいろあった気がする。
ハラペーニョってなんだろうな?
「というわけで、残念ながらカレーは無理なんだ」
「カレーが何かは判らないですけれど、泣くほど悲しいのは伝わりましたわ」
食べたいのは俺も同じなんだよ。
神様、何とかなりませんか?
といっても、石長比売とカレーは何の関係もないか。
子供の頃はインドのカーリーがカレーの神様だと思ってたけど、違うみたいだし。
「まあ、出来るようになったら、食べさせて下さいましね」
む、急に態度がしおらしくなりおって。
うーん、辛いもの、か。
激辛といえば、ラーメンやカップ焼きそばだけれど、まずは麺から作らないとだしなぁ。
そもそも、唐辛子と胡椒をたくさん入れただけじゃ、目新しさもないだろう。
あ、そういえば、カラシの実があったな。ニーナ収集物に。
カラシを使った料理というと、カラシレンコン?
レンコンがないや。
軽く潰して、水で溶いて、マスタードっぽくするか。
でもって、茹でた後に潰したトマトでトマトペーストも作る。
切り込みを入れたパンに、レタスを敷いて、焼いたソーセージを乗せ、たっぷりのトマトペーストとマスタード。
「ホットドッグ~」
たくさん作ったので、晩御飯はこれで。
いまは、これが精一杯。
「あら、気に入りましたわ。辛くて美味しいですわ」
喜んでもらえたようだ。
帰りはケバブにするか。




