90話 専門分野。
ってことで、消音マフラーもつけて完成。
坂道も平気で今よりずっとスピードも出せるようになった。
……のは良いのだけれど、欠陥が判明した。外に持って行こうとしたときに収納できなかったのだ。
燃料が入ってるから、石化収納でないといけないんだね。判ってたことじゃないか。なぜ気づかなかった、過去の俺。
街から離れた時点で乗り換えるとかかなぁ。マッターホルン内でなら楽しめるな。よし、いっそのことバイクにしちゃおう。
こいつは娯楽用品行きだ。
マイ・カーとして使うには、通常収納が可能であることが必須条件なわけだ。人前で使うならってことだが。
人前で石化は不味いだろう。人外判定を受けかねない。
ついでにいうと、燃料で動くようにした場合、盗難の怖れもあるね、よく考えたら。
燃料が無くなるまでは使えるし、燃料の代替品が無いとも限らない。機構上、灯油でも重油でも動いちゃうからな。
と、いうことで、大地変容で動く回転機を作りたい。
モーターを作ることができれば手っ取り早いのだが、あいにく電気の魔道具は使えない。
手回し式発電機で電気を起こしたら? 自転車の方が早いよ。
大地変容で行えるのは石の形状変化である。これを回転力にできれば良いわけだ。
電気で動くモーターにもいろいろ種類がある。今回着目するのは超音波モーター。
超音波といいつつ、音で動くわけではない。電圧をかけた際に発生する金属の変形を利用して動く。
つまり、変形を電気ではなく、大地変容で行えば良いわけだ。
動き方はカタツムリに近い。
カタツムリよろしく、早く動かそうと思ったら高速での変形が必要になる。超音波と言われるのはそのあたりだな。
まあ、そこは回転力であることを活用しよう。ギアを噛ませれば元の速度はそれなりでも、パワーさえあれば高速回転にもって行ける。
俺って、内燃機関よりモーターの方が専門なんだよね、じつは。
ベアリングで保持されて中心軸で回転が可能になっている向い合わせの円柱を作る。
ベース状態では隙間なく噛み合っているため、摩擦が効いていて動くことはない。
この接触面を大地変容で変形させることで、回転させる。
操作感覚としては、電気モーターの極性切り替えをスイッチ操作でやってる感じだな。頭で考えるだけで出来はするのだけれど。
動かし続けるのには慣れとコツが要りそうだ。
とりあえず、マイ・カーに組み込んで、パワーが足りないときだけの補助動力にするのが良さそうだな。慣れればもっと上手く使えるだろう。
タイヤごとに個別に動かして、インホイール4WDとかできるかもしれない。
「ヨシツグ、これ、くださいな!」
ユキがねだってくるのは珍しいな。まあ、他の連中もどちらかというとゆすってくるわけだが。
漢字にすると同じ不思議。
どうも、オートバイが気に入ったようだ。
マッターホルンの南側にはマイ・ジェットが離着陸できるように滑走路を作っているのだが、これを利用して周回できるコースにしてみたところ、飽きもせずにグルグル回っている。
自分の足の方が速いだろうに。
この世界初のサーキットコースが生まれたようだ。
ヘアピンカーブでも作るかな、今度。
「外では乗るなよ、敷地内だけなら好きなだけ乗っていいから」
白猫の狼さんには釘を刺しておく。
ま、洞窟を通らないから、持ち出される心配はない。盗難の心配も。
「くうっ。アイリス、王科研で作りなさいよ」
「うーん、似たようなものは研究していたと思いますよ。王女から一筆渡せば、開発が加速するかもですけど」
ふむ、流通での利用を考えて開発していたのが、走る楽しみのための開発もするわけか。
案外、その方が実用化は早いのかも知れないな。
サーキットは走る実験室らしいし。




