75話 だみゃー。
機嫌取りのために朝食を用意する。
もう、食べてきてるかもしれないけど、甘いものは別腹だろう。
パンを薄く切って焼き色をつける。
上に餡子を乗せる。
バターがないけど、小倉トーストだ。
牛乳と一緒に召し上がれ。
「うん、まあ、美味しいんじゃないかな」
俺の朝食も兼ねている。
もともと、あんパンみたいなもんだ。
ちらっと4人娘の反応を見るが、……静かだな。
餡子が苦手な人もいるんだっけ、そう言えば。
こし餡なら大丈夫とか、白餡なら大丈夫とか、色々あるらしいけど、今回はつぶ餡だ。
ま、杞憂か。全員完食してるしな。
「これは、名物とは違うみたいだね。でも、まあ、朝飯にはいいんじゃないか」
「ミルクとの相性がすごいです」
「そうですわね。朝食にミルクは健康的ですわ」
「明日も食べに来るわね。用意しておきなさい」
……大丈夫そうだな。
さて、それではもう一つの方を済ませるか。
片栗粉液に更に餡子を混ぜる。
でもって、煮込む。
焦げ付かないように混ぜると糊状に変化してゆく。
このあたり、科学実験みたいで楽しいんだよな。
サラサラだった白い液にどんどん粘りが出てきて半透明に変わってゆく。
全体にしっかり熱が通ったら加熱終了。
半円形の型を作って一塊づつ入れてゆく。
温度が下がって固まったら完成だ。
小豆入りわらび餅、になるのか。
冷蔵庫にでも入れれば早く固まるけど、そんなものはないし……仕方がないので、型の温度自体をアースクリエイトで下げる。
飢えた獣は長時間放置すると危険だ。
固まったら型から外して皿の上に。
半透明の菓子は半球のが綺麗だね。
平べったい菓子楊子を作って添える。
「ほい、デザート。一人一個だぞ」
そう言えば、形は鳥にするんだっけ。
ひよこ形だと、型から出すのは簡単そうだけど、半透明だと鳥に見えなさそう。
とはいえ、仮デザインだしな。
なんとなれば、いくつもデザインがある感じにしても良いし。
シークレットとか作ったりしてな。
まあ、領主様に試作を持っていかないといけないわけで、羽根を広げた鳥っぽい型を再度作って残りを固める。
一家分持っていかないとまずいか。奥さんと子供二人で4人分。
「だから、お前たちの食べる分はもう無いぞ。後ろに並んでもな」
後ろから4人揃って覗き込んでいた。
「私が思うに、形が変わることで味わいも変わるのではないかと予想するのよ」
「甘味は先程のよりも薄いですけど、上品で良いですわね」
「冷やして食べると、もっと美味しいと思います」
「一個じゃ足りねえよ」
それはお前が一口で食べてしまったからだ。
玄関の扉が開いたのはそんな時。
「妾が来たぞよ。菓子はできたかや」
……さらに一人増えた。




