70話 鳥獣捕獲作戦
「よし、行け! ユキ」
「は?」
また、人をごみ虫を見るような目で。
……なんか、最近慣れてきた。
「いつかの、ヘイズジェルのときみたいに、パーっと走っていって、スパッと行けるだろ、お前なら」
この中で一番可能性があると思うんだ。
「やってみろと言うならやっても良いけれど、たぶん無駄ね。姿を確認する前に逃げられるわよ」
えー、そんなに?
「じゃあ、エレメア。魔法でスパッと」
「ここからでは、魔法が届くわけがないですわよ」
えー、そうかなあ?
望遠鏡を覗きながら、ホロウ鳥の留まっている木の根本付近でストーンニードル。
ああ、確かになんか難しい。動かないことはないけど、顕微鏡見ながらピンセットで摘まむような感じ。
せめて、地面にでも降りてくれればなんとかなるかもだけど、みんな木の上だな。まあ、当たり前か。
「うーん、そもそもさあ、あれだけ居るんなら寿命で死んだ死体とかあったりしないの?」
「それが、見つからないことで有名なんですよね」
アイリスぺディアさんによるとそうらしい。
まあ、そうなると、とりあえず観察するしかないか。
しばらくはバードウォッチングだな。
ホロウ鳥はあまり活動しないようだ。決まった木に留まり、生っている実を食べる。
そのくせ、ある瞬間に消えるように居なくなる。
探すとすぐに見つかるが、群れ全体がまとめて別の場所に移動している。
多分、近くに危険な動物が近づいたって事なんだろう。
毎日観察するだけに飽きたのか、4人娘は村作りのほうに行ってしまった。
なんか、俺だけサボってるみたい。
遠くの獲物を捕る方法、といったら、やっぱりライフル銃か。
あんまりやりたくないんだよなあ。武器関係は。
まあ、試しにちょっとやるくらいならいいか。
とはいえ、火薬は流石に気が引けるので、エアライフルにする。そもそも、火薬は材料無いし。
木炭は作れるけど、硫黄と硝石はまだ作れない。
なので、以前に作った爆裂槍と同じように、アースクリエイトで密封したあとに圧縮変形させることで圧縮空気を作る。
銃弾は、あまり大きくても仕方がないので、直径5mmでいいか。形は砲弾型。
これを長さ1mのライフリングを掘った銃身で打ち出す。
空気の圧縮を1000倍くらいで考えると、えーと、20リットルの容器を圧縮すればいいのか。
大きめのポリタンクサイズだな。
あとは、望遠鏡をスコープにして、中心に弾丸が当たるようにゼロイン調整を行う。
「案外、いけるか」
500mくらいは離れていると思ったけど、集弾性能は鶏サイズの木の幹にきちんと当たる程度には高いようだ。
……では、本番といこう。
綺麗だ綺麗だと言われていても、連日眺め続けて既に見飽きた感のあるホロウ鳥。
その一羽にスコープの狙いを定める。
ウサギやイノシシのように、食べるための猟ではない。襲ってきたわけでもない。ただ観賞用に殺すだけ。
これも、とある父親が、娘にいい格好をしたいがため。……恨んでくれるなよ。
俺が撃たれる立場だったら、絶対に許さないが。
恨んで呪って祟るね、絶対。
自分の命が危険に晒されていることも知らないホロウ鳥は、普段通りに木に留まって動かない。
銃の引き金を引いた。




